General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

ASP(抗菌薬適正使用支援)

shorter is better

「shorter is better」 抗菌薬の投与期間は、1週間が7日(ローマ帝国のConstantineが決めた)のため、7日または14日と歴史的に設定されてきた。過去25年に行われてきた抗菌薬投与期間のRCTでは、7の倍数は採用されず、より短い期間で、同等の効果が得られる…

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症は初期治療が外れていても予後は悪化しない

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症(30日mortality rateは10%程度)の治療において、初期治療が不適切であったとしても、治癒までの期間や死亡の増加はみられなかった、という後ろ向き観察研究。適切な経験的治療群と不適切な経験的治療群を比較。 複雑…

重症sepsisまたはseptic shock患者の感染症科コンサルテーションの効果

severe sepsisまたはseptic shockを呈する救急外来(ED)の患者における、早期感染症科コンサルテーション(early ID)の効果を評価した後ろ向き観察研究。 対象は、3-hour bundleを達成後の248名のsevere sepsisまたはseptic shockの成人ED患者。early ID群…

ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討

【ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討】 ESBL産生腸内細菌科細菌による尿路由来の菌血症へのdefinitive therapyとしての、アミノグリコシド(ゲンタマイシンまたはアミカシンの1日1回投与)の効果を検討した後ろ向き研究…

入院を必要とする蜂窩織炎の治療期間

【入院を必要とする蜂窩織炎の治療 6日間 vs 12日間:前者で再燃が多い】 蜂窩織炎の抗菌薬投与期間を、6日 vs 12日で比較。オランダで行われた、多施設、非劣勢、無作為比較試験。対象は、入院を必要とした成人の蜂窩織炎患者(血液培養陰性、85%程度が下肢…

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果を検討した観察研究。MIC 2を超えると治療成績が悪化。「感性」の基準はMIC≦4。MIC 2以下かつ高用量(3g 8時間おき:通常投与量の倍量)だと成績がよかった。 「S」 と判定…

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬 ・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる (2)スペクトラム ・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1) ・class Aと…

セフタジジム-アビバクタムのまとめ

【ceftazidime-avibactam(セフタジジム-アビバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎に適応がある (2)スペクトラム ・avibactam…

ザバクサ(セフトロザン-タゾバクタム)のまとめ

【ceftolozane-tazobactam(セフトロザン-タゾバクタム)】 (1)基本事項 ・多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・ceftolozaneは、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬 ・ESBL産生菌、AmpC産生菌にも通常効果はあるが、耐性のこともある ・カルバペネマーゼ産生菌に…

歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は不適切使用が多い(米国)

米国で行われた歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は、80.9%が不適切であった。2007年のAHAのガイドライン(Circulation. 2007;116:1736–1754)をstandardとした。 ASP(抗菌薬適正使用支援)のよい対象である可能性があります。 Assessment of the Appro…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性咽頭炎・扁桃炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第2弾】 (1)急性咽頭炎・扁桃炎 疫学、診断は、「手引き」を踏襲しています。しかし、治療の項目において、根拠のない記載が目立ちます。「初回治療失敗例,重症例(とりわけ成人重症例)などいわゆ…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性鼻副鼻腔炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」(日本感染症学会 2019.8)に対する感想】 3回に分けて感想(意見)を述べます。1回目は、主に急性鼻副鼻腔炎についてです。2回目は、急性咽頭炎・扁桃炎、3回目は、急性気管支炎の項目についてです。 注意:こ…

ASTと感染症コンサルテーションを組み合わせるとS. aureus菌血症の予後が改善する

【S. aureus菌血症は、感染症科医とASTの関与によって死亡率が低下する】 【内容】S. aureus菌血症の患者に対して、感染症科コンサルテーションまたは(and/or)AST(antimicrobial stewardship team)が関わると、30日死亡率が低下(11% vs 24%)したことを…

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖 ピボキシル基含有抗菌薬 ・セフカペン・ピボキシル(フロモックス) ・セフジトレン・ピボキシル(メイアクト) ・セフテラム・ピボキシル(トミロン) ・テビペネム・ピボキシル(オラペネ…

便移植で多剤耐性菌が減る?

便移植は、腸管内の耐性菌のcolonizationを減らす可能性がある。 ただし、これまでの報告は、すべて小規模な研究である。 先日、便移植によって多剤耐性菌が伝播し、重症感染症を発症した報告があったことから、FDAが注意喚起していましたが、それとは逆の内…

新しいバンコマイシンのTDMガイドラインの概要(public comment募集前のdraft)

先日先輩に教えていただいたバンコマイシンの新しいTDMガイドラインのドラフトの推奨部分を、意訳して、まとめてみました。 まず重要な点です ・目標とする指標は、成人・小児ともにAUC/MIC 400-600(基本的にMIC=1) ・この目標値は、年齢、腎機能、肥満の…

血液培養陽性例における原因菌同定と薬剤感受性試験結果が早く出ることによってどのような効果が得られるか?

【前提条件として、MALDI TOF MSの導入と充実したASPが存在する場合、血液培養陽性例でADXより早期に同定・薬剤感受性結果が出ても予後は改善しない】 血液培養陽性例におけるAccelerate Pheno system(ADX)の導入の効果を検討した観察研究。ADXによって、9…

黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間 その2

【複雑性SABの治療期間は2週間以上必要、非複雑性SABは2週間以内でよい】 目的:S. aureus bacteremia(SAB)の死亡率と再燃率への治療期間の影響を評価する。 方法:単施設の後ろ向きコホート研究。18歳以上のSAB患者で、治療期間(14日間以内と14日間以上…

黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間 その1

【複雑性SABの治療期間は、4週間以上がよい】 方法:「長期治療が必要な因子の存在」と「実際の治療期間」によってS. aureus bacteremia(SAB)の治療成績がどのように影響を受けるか前向きに検討した韓国の研究。長期間治療に関連する要素である持続菌血症…

腸内細菌科細菌による血流感染症で早期にde-escalationするとCDIが減少する

【腸内細菌科細菌による血流感染症の治療において、抗緑膿菌活性のある抗菌薬を早期de-escalationすることによってCDIのリスクが減少する】 要旨:腸内細菌科細菌菌血症に対して48時間以上抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬を投与された入院患者は、48時…

体格によってバンコマイシンの投与量を調整する必要がある

【日本人の肥満患者に対するバンコマイシンの1回投与量は、15mg/kgでは多い可能性がある】 方法:バンコマイシンの至適投与量と体格の関連を検討した観察研究。やせ型(BMI<18.5)、標準型、肥満型(BMI≧25)に分類して、バンコマイシンの至適投与量を後ろ…

透析クリニックにおける外来静注抗菌薬は、抗菌薬適正使用支援のよい対象である

【透析クリニックにおける外来静注抗菌薬は、抗菌薬適正使用支援のよい対象である】 米国フィラデルフィアの透析クリニックにおける外来点滴抗菌薬が適切であったかどうかを調査したところ、抗菌薬投与開始の57.5%が不適切であった(血液培養陰性、または、…

各国の小児への経口抗菌薬処方についての実態調査

(1)米国 急性中耳炎に対する処方が多い、ペニシリン系の処方が多い Pediatrics. 2014 Mar;133(3):375-85 doi: 10.1542/peds.2013-2903 PMID: 24488744 (2)ギリシャ マクロライド、第3世代セファロスポリンの処方が多い J Antimicrob Chemother. 2015 Aug…

熊本県における経口抗菌薬処方の実態 2012-2013

熊本県の国民健康保険または後期高齢者医療制度の受給者の2012-2013年のデータベースを使用して、経口抗菌薬の処方パターンを調査し、抗菌薬処方に関連した因子を同定するための後ろ向きコホート研究。 処方された経口抗菌薬は、第3世代セファロスポリン35%…

日本の小児に対する抗菌薬処方量の推移 2013-2016

【小児に対する抗菌薬は、多くがウイルスによる急性気道感染症に処方されている。また処方されている薬剤の大半を第3世代セファロスポリンとマクロライドが占めている】 【方法】 national health claims databaseを使用して、後ろ向きに15歳以下の小児に対…

感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する

【感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する】 感染性心内膜炎サポートチーム(endocarditis team:ET)の効果を評価したフランスで実施された単施設の後ろ向き観察研究。ETは、毎週集合し、その施設のすべてのIE症…

フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない

【フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない】 FDAが2016年にすべてのフルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」に不可逆的な副作用について追記した。米国の家庭医への影響を調査した観察研究。 「…

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切!?

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切であったという観察研究。特に尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)、気管支炎・副鼻腔炎・肺炎で多かった。 Inappropriate Fluoroquinolone Use in Academic and Non-academic Primary Care Clinics.J Gen I…

MALDI-TOF MSの使用によって、入院している肺炎患者において、原因微生物判明と適切な治療がより早期に可能となったが、臨床効果の改善はなかった

【MALDI-TOF MSの使用によって、入院している肺炎患者において、原因微生物判明と適切な治療がより早期に可能となったが、臨床効果の改善はなかった】 米国の単施設で行われた後ろ向き観察研究。もともと抗菌薬適正使用支援プログラム(AS program)のある病…

抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する

【抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する】 市中肺炎の診療に対するmultifaceted CAP-focused stewardship施行前後の市中肺炎の治療期間を比較した多施設観察研究。米国からの報告。 対象は18歳…