General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

血液悪性腫瘍患者(主に造血幹細胞移植後)におけるCMV感染症の診療ガイドライン

【血液悪性腫瘍患者におけるCMV感染症診療ガイドライン2019】 (1)重要な点 ・HSCT後のCMV diseaseは臨床研究では2-3%だが、real-worldでは5-10% ・臍帯血移植の場合、CMV再活性化のriskは高く、腫瘍の再発以外での死亡率が上昇 ・HSCT後100日以内のCMV dis…

便移植で多剤耐性菌が減る?

便移植は、腸管内の耐性菌のcolonizationを減らす可能性がある。 ただし、これまでの報告は、すべて小規模な研究である。 先日、便移植によって多剤耐性菌が伝播し、重症感染症を発症した報告があったことから、FDAが注意喚起していましたが、それとは逆の内…

メトロニダゾールmetronidazoleによる末梢神経障害のリスク因子

メトロニダゾールによる末梢神経障害を調査した研究。 42g以上の使用と4週間以上の使用が、末梢神経障害発症に関連した。多くの場合、治療終了後に(2週間以上から数年の経過で)改善するが、不可逆的なケースもある。 Clinical relevance of metronidazole …

人工関節のある患者におけるグラム陽性球菌菌血症の約20%で人工関節感染が起こる

【人工関節のある患者におけるS. aureus/β溶血性レンサ球菌/VGS菌血症の約20%で、人工関節感染が起こる】 股関節または膝関節の人工関節置換術後の患者に、菌血症が起こった場合に、どの程度人工関節感染が起こるか調査したフィンランドの観察研究。 菌血症…

MRSA肺炎の治療:バンコマイシンとリネゾリド以外の選択肢は?

【MRSA肺炎の治療で、VCM/LZDが使用できない場合は、ST合剤→CLDM→Mino】 MRSA肺炎におけるST合剤、CLDM、Doxy、Minoの治療効果についての総説。 ST合剤は比較的研究されているが、2つのRCTでは、標準治療(VCM、LZD)より劣っている可能性が示されている。観…

新しいバンコマイシンのTDMガイドラインの概要(public comment募集前のdraft)

先日先輩に教えていただいたバンコマイシンの新しいTDMガイドラインのドラフトの推奨部分を、意訳して、まとめてみました。 まず重要な点です ・目標とする指標は、成人・小児ともにAUC/MIC 400-600(基本的にMIC=1) ・この目標値は、年齢、腎機能、肥満の…

耳鏡よりも「耳かきカメラ」!?

前の職場の先輩がSNSで、「耳かきカメラ」について投稿していたので、自分でも買ってみました。 明らかに、通常の耳鏡より鼓膜の観察が容易です。wifi接続可能で、画像はiPhoneでみることができて、写真もとれるので、非常に便利です。 利点 ・鼓膜をはっき…

血液培養陽性例における原因菌同定と薬剤感受性試験結果が早く出ることによってどのような効果が得られるか?

【前提条件として、MALDI TOF MSの導入と充実したASPが存在する場合、血液培養陽性例でADXより早期に同定・薬剤感受性結果が出ても予後は改善しない】 血液培養陽性例におけるAccelerate Pheno system(ADX)の導入の効果を検討した観察研究。ADXによって、9…

E. coli、Klebsiella spp.、P. mirabilisにおけるCTRX非感性株は、ESBL産生株とは限らない

【E. coliなどのCTRX非感性は、必ずしもESBL産生を意味しない】 内容:E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca, P. mirabilisでCTRX MIC≧2 µg/mLの臨床株(カルバペネム非感株は除外)のβ-lactamase遺伝子を解析した。米国の1つの病院(Johns Hopkins Hospital…

S. aureus菌血症の治療における経口リネゾリドの役割

【非複雑性S. aureus菌血症の治療において、1週間の静注抗菌薬治療後に、経口リネゾリドに変更して治療すると、治療効果は低下せず、入院期間が短縮する可能性がある】 概要:合併症low riskのS. aureus菌血症の治療において、治療開始3-9日から治療終了まで…

MSSA菌血症におけるセファゾリンvs黄色ブドウ球菌用ペニシリンのmeta 解析

【MSSA菌血症の治療で、セファゾリンは黄色ブドウ球菌用ペニシリンより優れている可能性がある】 方法:MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)感染症(主にMSSA菌血症)におけるセファゾリンと黄色ブドウ球菌用ペニシリンの効果を比較したmeta解析。primar…

βラクタム系抗菌薬で治療中の腸内細菌科細菌の形態<補足>

E. coliにセファレキシンを曝露させた状況で、形態の変化をin vitroで解析した報告。elongation→bulge formation→bulge stagnation→lysisとなることを示した。 Distinct single-cell morphological dynamics under beta-lactam antibioticsMol Cell. 2012 De…

βラクタム系抗菌薬で治療中の腸内細菌科細菌の形態

K. pneumoniaeによる持続菌血症(骨髄炎)をertapenemで治療中に採取した血液培養のグラム染色像。K. pneumoniaeだが、中央部が膨らんだグラム陽性桿菌に見える。 Morphological changes induced by β-lactam antibiotics observed on Gram stainingClin Mic…

Candidaによる膿胸 その5 - まとめ -

【Candidaによる膿胸のまとめ】 (1)診断方法 - 滲出性胸水の培養でCandida spp.検出 - 発熱・WBC増多などの感染所見 を満たすもの (2)colonizationとinfectionの鑑別は難しい - 診断基準を、胸水培養2回陽性、または、胸水培養と血液培養が陽性、のいず…

Candidaによる膿胸 その4

【悪性腫瘍患者における真菌性膿胸のcase series】 ・後ろ向き研究、2005-2013年 ・対象:18歳以上で基礎疾患に悪性腫瘍、滲出性胸水から真菌が検出 ・患者の特徴 - 97名の患者の胸水から106株の真菌が検出された - 年齢中央値63歳、固形癌69% - 症状:呼吸…

Candidaによる膿胸 その3

【Candida膿胸63例(2002-2011年)のcase series、台湾からの報告】 ・対象:以下の3つを満たす - 滲出性胸水からCandida検出 - 培養2回以上陽性 or 胸水培養と血液培養陽性 - 感染所見あり ・胸水培養陽性例は102名、漏出性(8名)・症状なし(5名)・以前…

Candidaによる膿胸 その2

【真菌性膿胸のcase series、台湾からの報告、UpToDateの引用文献】 ・真菌性膿胸の診断基準は、次の3つを満たす状態 - 胸水から真菌(yeast、moldどちらも含まれる)を検出 - 発熱やWBC上昇などの感染所見 - 2回以上胸水から同じ糸状菌が検出 or 胸水と、血…

Candidaによる膿胸 その1

UpToDate(Candida infections of the abdomen and thorax) にはあまり記載されていませんでした。 そこに記載されていた内容をまとめました。 ・Candida albicans, Candida glabrataの頻度が高い ・基礎疾患には、悪性腫瘍が多い ・医療関連感染であること…

黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間 その2

【複雑性SABの治療期間は2週間以上必要、非複雑性SABは2週間以内でよい】 目的:S. aureus bacteremia(SAB)の死亡率と再燃率への治療期間の影響を評価する。 方法:単施設の後ろ向きコホート研究。18歳以上のSAB患者で、治療期間(14日間以内と14日間以上…

黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間 その1

【複雑性SABの治療期間は、4週間以上がよい】 方法:「長期治療が必要な因子の存在」と「実際の治療期間」によってS. aureus bacteremia(SAB)の治療成績がどのように影響を受けるか前向きに検討した韓国の研究。長期間治療に関連する要素である持続菌血症…

腸内細菌科細菌による血流感染症で早期にde-escalationするとCDIが減少する

【腸内細菌科細菌による血流感染症の治療において、抗緑膿菌活性のある抗菌薬を早期de-escalationすることによってCDIのリスクが減少する】 要旨:腸内細菌科細菌菌血症に対して48時間以上抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬を投与された入院患者は、48時…

PIPC/TAZとVCMの併用によるAKIは、肥満患者でリスクが高い可能性がある

【体重91kg以上の場合、PIPC/TAZ+VCMによるAKI発症リスクが高い可能性がある】 後ろ向きコホート研究。単施設。PIPC/TAZ+VCMを48時間以上投与された患者を対象とした。baselineのCCr<30は除外した。肥満(91kg以上)と非肥満(91kg未満)で比較した場合、肥…

バンコマイシンによる血小板減少の既往がある場合、再投与時は高度の血小板減少に注意する

【バンコマイシンによる血小板減少の既往がある場合、再投与時は高度の血小板減少に注意する】 内容:バンコマイシンの投与によって血小板減少の既往のある患者に対するバンコマイシンの再投与で、1日で血小板が3000 /µLまで低下、輸血を必要とする消化管出…

DRCでの黄熱病outbreak時の黄熱ワクチン(20% dose)の効果

【黄熱ワクチンの20% dose接種は効果が98%:コンゴ民主共和国でのoutbreak】 背景:2016年のDRCとアンゴラでの黄熱病のoutbreakによって、世界的な黄熱ワクチン不足が起こった。そのため、標準投与量の1/5(0.1ml)に減量した黄熱ワクチンを、DPCのキンシャ…

体格によってバンコマイシンの投与量を調整する必要がある

【日本人の肥満患者に対するバンコマイシンの1回投与量は、15mg/kgでは多い可能性がある】 方法:バンコマイシンの至適投与量と体格の関連を検討した観察研究。やせ型(BMI<18.5)、標準型、肥満型(BMI≧25)に分類して、バンコマイシンの至適投与量を後ろ…

透析クリニックにおける外来静注抗菌薬は、抗菌薬適正使用支援のよい対象である

【透析クリニックにおける外来静注抗菌薬は、抗菌薬適正使用支援のよい対象である】 米国フィラデルフィアの透析クリニックにおける外来点滴抗菌薬が適切であったかどうかを調査したところ、抗菌薬投与開始の57.5%が不適切であった(血液培養陰性、または、…

肥満患者におけるダプトマイシン投与量

【肥満患者におけるダプトマイシン投与量は、実体重が基本だが、「調整体重」を使用してもよいかもしれない】 背景:FDAの推奨しているダプトマイシンの投与量は、実体重を使用したものであるが、肥満患者におけるdataは限られている。調整体重(adjusted bo…

TAF/FTC+DTGの効果は、これまでの標準治療と同等だが、体重増加に注意が必要

【TAF/FTC+DTGの効果は、これまでの標準治療と同等だが、体重増加に注意が必要】 方法:南アフリカで行われた第3相open-labelの非劣勢RCT(ADVANCE trial)。初回治療としてのTAF/FTC+DTG vs TDF/FTC+DTG vs TDF/FTC+EFV(標準治療)。Primary endpointは、4…