General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

COVID-19に対するRemdesivirの効果

COVID-19に対するRemdesivirの効果

 

まとめ

・重症COVID-19(酸素投与レベル)に対して、発症10日目以降のRemidesivirの効果は期待できない可能性が高い。早期投与の場合、症状改善を早める可能性がある。

・人工呼吸器管理が必要な最重症例に対する効果は不明である。

・早期投与(例えば発症から7-10日以内)による重症化予防効果も不明である。

 

1. Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial. Lancet 2020;395(10236):1569-1578.

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31022-9/fulltext

重症COVID-19(発症から12日以内)におけるRemdesivirの効果を検討した報告。多施設プラセボ対照無作為比較試験。二重盲検。対象者は、重症COVID-19:肺炎像あり、かつ、SpO2 94%未満(室内気)またはP/F 300以下(酸素投与 80%以上、NIV or HFNC 12-18%、人工呼吸器/ECMOは両群合わせて1名のみ)。レムデシビルは初日200mg、day 2-10 100mg/日。Primary endpointは、無作為化から臨床的改善または退院までの期間。症状出現からremdesivir投与前の期間の中央値は10日間。Primary endpointは両群で差なし(介入群21日 vs プラセボ群23日)。発症から10日以内にremdesivirが投与された場合、介入群で臨床的改善が早い傾向があった(18日 vs 23日)。28日死亡は、介入群14% vs プラセボ群13%で同等だった。ウイルス量の低下スピードは両群で同等。有害事象の頻度も同等。当初453名の登録が計画されたが、武漢でのoutbreakの制御状況とtermination criteriaによって、237名の登録で試験が終了となったため、統計学的パワーが低下していること、remdesivirの投与タイミングが発症から10日程度であること(早期投与ではない)、などのlimitationがある。

 

2. ACTT試験. NIH Clinical Trial Shows Remdesivir Accelerates Recovery from Advanced COVID-19.

https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-clinical-trial-shows-remdesivir-accelerates-recovery-advanced-covid-19

COVID-19(対象:入院が必要な中等症以上のCOIVD-19)におけるremidesivir(day 1 200mg/日、day 2-10 100mg/日)の効果を検討した報告。多施設・二重盲検・プラセボ対照無作為比較試験。2020.5.18時点で文献化はされていないが、2020.4.29の中間報告で、介入群で回復までの時間が31%早まり(11日 vs 15日、有意差あり)、致命率も介入群で低い傾向がみられた(8.0% vs 11.6%、p=0.059)。

 

3. Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19. N Engl J Med. 2020 Apr 10. doi: 10.1056/NEJMoa2007016.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2007016

53例の入院が必要な重症COVID-19患者に対するremdesivir(day 1 200mg/日、day 2-10 100mg/日)の効果を検討した観察研究。57%に人工呼吸器、8%にECMOが施行された。フォローアップ期間は中央値18日。臨床的改善は68%で見られた。追跡期間中の死亡は13%。観察研究であること、小規模な研究であること、ウイルス学的検討がないこと、単一アーム試験であることから、remdesivirの効果の有無はこの研究から判定することはできない。