General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

がん患者におけるCOVID-19

Cancer patients in SARS-CoV-2 infection: a nationwide analysis in China

Lancet Oncol. 2020 Feb 14. pii: S1470-2045(20)30096-6. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30096-6

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204520300966?via%3Dihub

 

悪性腫瘍の既往のある患者のCOVID-19の臨床的特徴を検討した観察研究。2020.1.31までに575病院で診断された2007例のCOVID-19を対象とした。417例はdataが不十分であったため、除外された。1590例のうち、18例(1%)が悪性腫瘍の既往があった。中国全体の悪性腫瘍罹患率(incidenceと記載、prevalence?)は0.29%であり、それより高い値であった。18名のうち、2名は治療状況不明、4名は過去1か月に化学療法または手術を受けていた。14名は、術後f/u中の患者であった。悪性腫瘍の既往のある患者は、悪性腫瘍の既往のない患者と比較して、高齢、頻呼吸、進行した肺陰影(CT画像)がみられた。

重症event(ICU入室、人工呼吸器使用、死亡)が、39% vs 8%で、悪性腫瘍あり群で有意に高かった。Activeな治療を受けていた患者は50%(2/4)、それ以外の悪性腫瘍の既往のある患者は、5/14=35.7%。臨床的に重症と判断された割合は、active治療群75%(3/4)、それ以外の悪性腫瘍患者群6/14=43%。また、発症から重症化するまでの期間は、悪性腫瘍患者で有意に短かった。

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著者の結論:悪性腫瘍の既往のある患者は、COVID-19が重症化のリスクが高く、重症化のスピードも速い可能性が高い。流行地域では、安定している悪性腫瘍であれば、待機的手術や術後化学療法の延期を検討したほうがよい。感染予防策を徹底する。より徹底したサーベイランスを行うべき。