General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果を検討した観察研究。MIC 2を超えると治療成績が悪化。「感性」の基準はMIC≦4。MIC 2以下かつ高用量(3g 8時間おき:通常投与量の倍量)だと成績がよかった。 「S」 と判定…

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬 ・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる (2)スペクトラム ・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1) ・class Aと…

セフタジジム-アビバクタムのまとめ

【ceftazidime-avibactam(セフタジジム-アビバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎に適応がある (2)スペクトラム ・avibactam…

ザバクサ(セフトロザン-タゾバクタム)のまとめ

【ceftolozane-tazobactam(セフトロザン-タゾバクタム)】 (1)基本事項 ・多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・ceftolozaneは、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬 ・ESBL産生菌、AmpC産生菌にも通常効果はあるが、耐性のこともある ・カルバペネマーゼ産生菌に…

妊婦の梅毒と先天梅毒

【妊婦の梅毒と先天梅毒】 (1)妊婦の梅毒における垂直感染(UpToDate) T. pallidumは、胎盤に感染する。胎盤経由の胎児への感染は、妊娠第9-10週から起こりうる(それ以降であれば、どのタイミングでも感染は起こる)。先天的な感染は、妊娠週数、母体の…

ロタウイルスワクチンの定期接種化

ロタウイルスワクチンの定期接種化 ・2020年10月から開始予定 ・標準的には、生後2か月から接種開始 ・ロタテック3回、ロタリックス2回(どちらも4週間以上の間隔) ・原則同じ製剤を使用する(ただし互換性はあると考えられている) ・腸重積が増加する可能…

テビペネムの総説

テビペネム(Tebipenem pivoxil HBr)について 要点 ・テビペネム・ピボキシルに臭化水素酸塩を付加したもの(安定性などが改善) ※日本で販売されているものは、臭化水素酸塩なし ・カルバペネム系抗菌薬の内服薬 ・スペクトラムは、エルタペネムとほぼ同等…

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用

【MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用で治療成績が改善する可能性がある】 米国の2つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究。培養採取からダプトマイシンが5日以内に開始、かつ、72時間以上投与されたMRSA菌血症の成人を対象と…

インフルエンザワクチン株 2019-2020

インフルエンザワクチン株 2019-2020 (1)WHOの推奨 21 February 2019 (updated on 21 March 2019) It is recommended that egg based quadrivalent vaccines for use in the 2019-2020 northern hemisphere influenza season contain the following: A/Bri…

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について -

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について - ★要点 ・VRCZの副作用: 肝障害、視野障害、光毒性、皮膚悪性腫瘍のリスク上昇、不整脈(QT延長) 骨膜炎、幻覚、脳症、末梢神経障害、脱毛、爪の変形、低Na血症 ・トラフ濃度が5-6 µg/mLを超えると増える…

嫌気性菌とモキシフロキサシン

嫌気性菌とモキシフロキサシン ★まとめ ・モキシフロキサシンのきちんとした臨床dataは、腹腔内感染症のみ ・Bacteroides属の耐性率は10-30%以上である ・そのため、嫌気性菌の関与する感染症での使用には不安がある ・腹腔内感染症では、ABPC/SBTやCPFX+Met…

テビペネム・ピボキシル(オラペネム)

テビペネム・ピボキシル(商品名:オラペネム) PMID:26751436 - 緑膿菌とAcinetobacterには効果がない PMID:30014729 - 最初の経口カルバペネム系抗菌薬 - 緑膿菌に効果なし Jpn J Chemother 2009;57 (S-1): 1-14 - 緑膿菌のMICは高く効果なし - ブドウ糖…

ピペラシリン/タゾバクタムとバンコマイシン併用による急性腎障害について

【PIPC/TAZとVCMを併用するとAKIが増加する】 ・ほぼすべての研究が、後ろ向き観察研究である ・RCTはない、前向き観察研究もほとんどない ・PIPC-TAZ+VCM vs VCM+その他の薬剤でmeta解析(CID2018) AKI発症率22% vs 13%→Number needed to harm:11 critica…

artemether-lumefantrine(リアメット)の吸収

【artemether-lumefantrineのbioavailabilityと食事の関係】 吸収 ・lumefantrineのbioavailabilityが問題となる ・脂質とともに摂取するとbioavailabilityが上昇する ・UpToDateには、食事摂取によって、血中濃度は、artemetherは2-3倍、 lumefantrineは16…

artemether-lumefantrine(リアメット)と非重症熱帯熱マラリア

【artemether-lumefantrineは、非流行地域からの旅行者の非重症熱帯熱マラリアでは治療失敗が多い可能性がある】 (1)効果 ・流行地域での非重症熱帯熱マラリアに対する効果:98%以上(1, 2) ・再燃は1.9%だった (2)非流行地域出身の旅行者におけるリア…

自家造血幹細胞移植後のrecombinant zoster vaccineの効果(シングリックス)

【自家造血幹細胞移植後の帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)の効果は68%】 【背景】 自家造血幹細胞移植後のVZV再活性化は多く、6-12か月程度抗ウイルス薬の予防内服が行われている(多くの国では、アシクロビル1回800mg 1日2回、日本では1回200mg 1日1回…

ソフトドリンクは危険!?

【ソフトドリンクと死亡率の関連を示した大規模な観察研究】 欧州で行われた観察研究。砂糖含有、または、人工甘味料含有のソフトドリンクを1日500ml以上飲んでいる群は、ソフトドリンクをほぼ飲まない群比較して、全死亡率が高かった。平均follow-up期間は1…

電子タバコによる肺疾患

【電子タバコに関連した肺疾患】 米国のイリノイ州とウィスコンシン州で発生した53例の報告です。32%が人工呼吸器管理を要したようです。死亡は1例のみ。原因(どの成分が原因か?)ははっきりしないようですが、電子タバコ関連肺疾患の動向は、注意深くフォ…

肝膿瘍の治療:経口抗菌薬へのスイッチは1週間では早すぎる

【肝膿瘍の静注抗菌薬治療は、1週間では短すぎる】 概要:肝膿瘍(ドレナージあり)の治療を退院時点から、内服に変更した群と、点滴治療を続けた群での、再入院率(治療失敗率などの複合outcome)を比較した後ろ向き観察研究。結論は、内服治療群で再入院が…

MSSA菌血症とセファゾリンのinoculum effect

MSSAによる菌血症でCefazolin Inoculum Effectがある場合は、ない場合と比較して予後が悪いことを示した研究。その他の薬剤と比較したわけではない。観察研究。多変量解析で、Cefazolin Inoculum Effectのみが30日死亡率と関連していた。両群統計学的な有意…

歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は不適切使用が多い(米国)

米国で行われた歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は、80.9%が不適切であった。2007年のAHAのガイドライン(Circulation. 2007;116:1736–1754)をstandardとした。 ASP(抗菌薬適正使用支援)のよい対象である可能性があります。 Assessment of the Appro…

ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる

【ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる】 概要:ESBL産生またはAmpCβラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(E. coliまたはK. pneumoniae)による菌血症の標的治療におけるカルバペネム以外の経口(または筋注)抗菌…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性気管支炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第3弾】 原因微生物は、基礎疾患や合併症の有無で分けて考える必要がある、というところはよいと思います。 基礎疾患がない場合または軽微である場合、基本的に急性気管支炎に対する抗菌薬は不要であり…

セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能

【セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能】 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌または緑膿菌による感染症に対する、セフタジジム/アビバクタム単剤、または、他剤との併用治療、の効果を比較した研究のメタ解析。11つの…

母親のキノロン使用と子供のキノロン耐性グラム陰性桿菌による細菌尿

【母親がキノロン内服が、子供のキノロン耐性GNRによる細菌尿と関連した】 inclusion criteriaをみたしたグラム陰性桿菌による細菌尿のあるすべての小児(0.5-17歳)を対象とした。除外されたのは、過去(尿培養採取前)30日以内に入院歴がある場合、過去6か…

HIV:ドルテグラビル耐性ウイルスの恐怖

【HIV:ドルテグラビル耐性ウイルスの恐怖】 初発HIV/AIDSの患者(viral load高く、CD4リンパ球数は22)を、ツルバダとドルテグラビルで治療開始。同時に播種性結核をリファブチンを含めたレジメンで治療。最初の3週間の治療でviral loadは良好に低下したが…

感染症専門医試験

【感染症専門医試験(2019年9月)で問われた内容】 問題の形式は、学会HPの通りです http://www.kansensho.or.jp/modules/senmoni/index.php?content_id=11 記憶力のある同僚が再現していました ここでは、大まかな内容について記載します だいたい、以下の…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性咽頭炎・扁桃炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第2弾】 (1)急性咽頭炎・扁桃炎 疫学、診断は、「手引き」を踏襲しています。しかし、治療の項目において、根拠のない記載が目立ちます。「初回治療失敗例,重症例(とりわけ成人重症例)などいわゆ…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性鼻副鼻腔炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」(日本感染症学会 2019.8)に対する感想】 3回に分けて感想(意見)を述べます。1回目は、主に急性鼻副鼻腔炎についてです。2回目は、急性咽頭炎・扁桃炎、3回目は、急性気管支炎の項目についてです。 注意:こ…

Oligella urethralis

稀な細菌に出会ったので、調べてみました。 (1)基本情報 ・Oligella uretralisは、ヒトの泌尿生殖器の常在菌である ・上気道の常在菌の可能性が指摘されている ・好気性グラム陰性球桿菌 ・もともとMoraxella属であったが、1987年にOligella属に分類された…