General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用で治療成績が改善する可能性がある】

 

米国の2つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究。培養採取からダプトマイシンが5日以内に開始、かつ、72時間以上投与されたMRSA菌血症の成人を対象とした。ダプトマイシン(DAP)群と、併用(ダプトマイシンとβラクタム薬)(DAP+BL)群を比較。MRSAは、VCMのMIC≧1で、48-96時間の持続菌血症が条件。肺炎、複数菌による菌血症は除外された。DAP+BL群は、DAP開始の24時間以内にBLを開始、かつ、BLを24時間以上併用した患者が該当。Primary outcomeは、複合エンドポイント(治療失敗=60日全死亡+60日以内の再発)。

 

DAP群157例、DAP+BL群72例。感染focusは、血管内38%(IEは全体の約35%)、骨・関節27.5%、IVカテーテル24.9%。併用群でVCM MIC≧2 mg/dL(50% vs 75.8%)が少なかった。ダプトマイシンの非感性株は少数かつ、両群差なし。ダプトマイシンは多くの場合、2つ目の抗MRSA薬(多くの場合最初にバンコマイシンが選択されていた)として使用され、血液培養採取から71時間後に投与開始された。併用群では、最初からDaptomycinが使用される頻度が高かった(27.8% vs 15.9%)。使用されたβラクタムは、セフェピム43%、セファゾリン25%、その他6種類が使用された。ダプトマイシンの投与量は、8.3mg/kg/日。

DAP+BL群で、治療失敗が有意に少なかった(12.5% vs 27.4%)。血液培養陰性化までのタイミングは有意差なかった。併用群でAKIが有意に多く(10.8% v 2.9%)、CD腸炎は多い傾向にあった(5.6% vs 1.3%)。

 

Limitation:後ろ向き観察研究である。70-80%程度の症例が最初からダプトマイシンが使用されていない。VCM MIC≧2がほとんどを占めている(日本では稀)。

 

MRSA菌血症の治療(バンコマイシンの治療成績が落ちるとされるVCM MIC≧2の状況)において、ダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用は、ダプトマイシン単剤よりも死亡+再燃を減らす可能性がある。一方で、AKIとCDIは増加するかもしれない。

 

 

 

 

Daptomycin plus beta-lactam combination therapy for methicillin-resistant Staphylococcus aureus bloodstream infections: a retrospective, comparative cohort study
Clin Infect Dis. 2019 Aug 12. pii: ciz746.
doi: 10.1093/cid/ciz746
PMID: 31404468

https://academic.oup.com/cid/advance-article-abstract/doi/10.1093/cid/ciz746/5548921?redirectedFrom=fulltext