General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

zone edge testについてのメモ

S. aureusのペニシリン感受性を調べるための検査であるzone edge testについてのメモ(なぐり書き)です。興味ある人は、原著にあたってください。blaZ、PSSA、CLSI、EUCASTなど感染症領域の人以外には見慣れない用語が多くなっていますが、ご了承ください。…

基礎疾患のない成人のインフルエンザ患者がオセルタミビル内服すると、day 3時点でウイルス排泄率が低下する

【基礎疾患のない成人のインフルエンザ患者がオセルタミビル内服すると、day 3時点のウイルス排泄率が低下する】 方法:二重盲検無作為比較試験、多施設共同研究(タイ、米国、アルゼンチン)。18-64歳のインフルエンザ患者で、発症から48時間以内、かつ、重…

感染症科の不人気と、感染症/集中治療のダブルボードの提案

2015年のClinical Infectious Diseases誌に掲載されていました。感染症科を専攻する内科レジデントの卒業生が少ない状況で(定員割れ多数)、どうするか。集中治療専門医とのダブルボートはどうか、という内容。conbined programなども提案しています。予想…

HIV患者が妊娠時にドルテグラビルを使用していると、新生児の神経管欠損症のリスクが増大する

【妊娠時のドルテグラビルの使用によって新生児の神経管欠損症のリスクが増大する】 導入:神経管欠損は妊娠第6週(受精して4週)間以内に発生する。当初エファビレンツによるリスク増大の可能性が指摘されていたが、その後の研究で関連はないことが示された…

クリプトコッカス髄膜炎患者の髄液のグラム染色像

【クリプトコッカス髄膜炎患者の髄液のグラム染色像】 幾何学的構造は、Cryptococcus属のムコ多糖莢膜由来の粘液性成分であり、酵母を相互に連結している。 Puzzling mosaics in cerebrospinal fluidClin Microbiol Infect. 2018 Nov;24(11):1156-1157doi: 1…

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018

「急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018」は無料で読めるのですね。日本のすべての学会が、ガイドラインくらいは無料で読めるようにしてほしいと思います。日本循環器学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本緩和医療学会なども多くのガイドラインを…

各国の小児への経口抗菌薬処方についての実態調査

(1)米国 急性中耳炎に対する処方が多い、ペニシリン系の処方が多い Pediatrics. 2014 Mar;133(3):375-85 doi: 10.1542/peds.2013-2903 PMID: 24488744 (2)ギリシャ マクロライド、第3世代セファロスポリンの処方が多い J Antimicrob Chemother. 2015 Aug…

熊本県における経口抗菌薬処方の実態 2012-2013

熊本県の国民健康保険または後期高齢者医療制度の受給者の2012-2013年のデータベースを使用して、経口抗菌薬の処方パターンを調査し、抗菌薬処方に関連した因子を同定するための後ろ向きコホート研究。 処方された経口抗菌薬は、第3世代セファロスポリン35%…

日本の小児に対する抗菌薬処方量の推移 2013-2016

【小児に対する抗菌薬は、多くがウイルスによる急性気道感染症に処方されている。また処方されている薬剤の大半を第3世代セファロスポリンとマクロライドが占めている】 【方法】 national health claims databaseを使用して、後ろ向きに15歳以下の小児に対…

Enterobacter肺炎に対するPIPC/TAZは、標的治療の選択肢のひとつとなるかもしれない

【導入】 Enterobacter spp.は院内肺炎の主要な原因菌のひとつである。カルバペネム系抗菌薬が第1選択薬であるが、薬剤耐性菌の増加に伴いカルバペネム温存が求められている。セフェピムは、カルバペネムと同等の効果が示されてきた。ピペラシリン/タゾバク…

市中発症の緑膿菌菌血症は死亡率30%程度で、来院時の重症度と不適切な経験的治療が死亡率の上昇と関連する

【市中発症の緑膿菌菌血症は死亡率30%程度で、来院時の重症度と不適切な経験的治療が、死亡率の上昇と関連する】 内容:市中発症の緑膿菌による血流感染症のpredisposing factorと不適切な経験的抗菌薬治療の死亡率への影響を検討したsystematic reviewとメ…

感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する

【感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する】 感染性心内膜炎サポートチーム(endocarditis team:ET)の効果を評価したフランスで実施された単施設の後ろ向き観察研究。ETは、毎週集合し、その施設のすべてのIE症…

緑膿菌菌血症の標的治療は、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムで治療成績に差はない

【緑膿菌菌血症の標的治療において、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムの治療成績は同等であった】 767名のβラクタム系抗菌薬単剤で治療された緑膿菌菌血症の患者を対象として、使用抗菌薬別の30日死亡率を検討した後ろ向きコホート研…

フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない

【フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない】 FDAが2016年にすべてのフルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」に不可逆的な副作用について追記した。米国の家庭医への影響を調査した観察研究。 「…

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切!?

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切であったという観察研究。特に尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)、気管支炎・副鼻腔炎・肺炎で多かった。 Inappropriate Fluoroquinolone Use in Academic and Non-academic Primary Care Clinics.J Gen I…

マラリア予防にイベルメクチン!?

【3週間おきにイベルメクチンによる集団治療を行うとマラリアの罹患率が低下する】 イベルメクチンは多くの寄生虫感染で使用されている抗寄生虫薬であるが、イベルメクチンを内服したヒトの血液が、蚊に対して毒性を持つことを利用して、マラリア感染の予防…

ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療(CMIのNarrative review)

【ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療についての総説】 Current options for the treatment of infections due to extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in different groups of patients(Clin Microbiol Infect. 2019;25…

MALDI-TOF MSの使用によって、入院している肺炎患者において、原因微生物判明と適切な治療がより早期に可能となったが、臨床効果の改善はなかった

【MALDI-TOF MSの使用によって、入院している肺炎患者において、原因微生物判明と適切な治療がより早期に可能となったが、臨床効果の改善はなかった】 米国の単施設で行われた後ろ向き観察研究。もともと抗菌薬適正使用支援プログラム(AS program)のある病…

市中発症の肺炎に対する緑膿菌/MRSAのカバーは、予後悪化と関連する可能性がある

【市中発症の肺炎に対する緑膿菌/MRSAのカバーは、予後悪化と関連する可能性がある】 米国の4つ救急外来から入院となった市中肺炎(厳密には「市中発症の肺炎」で、healthcare-associated pneumoniaを含む)の1995名の18歳以上の患者を対象とした後ろ向き観…

抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する

【抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する】 市中肺炎の診療に対するmultifaceted CAP-focused stewardship施行前後の市中肺炎の治療期間を比較した多施設観察研究。米国からの報告。 対象は18歳…

市中肺炎に対する副腎皮質ステロイドの使用への注意喚起

【市中肺炎に対する副腎皮質ステロイドの使用への注意喚起:集中治療を要しない非重症肺炎で使用すべきではない】 以下、重要な点を列挙。 ・市中肺炎に対するステロイドの効果を検討したメタ解析は複数報告されている ・重症市中肺炎で死亡率を低下させるが…

市中肺炎の治療を、副腎皮質ステロイド投与を含めたbundleを作成・実施しても、予後は改善せず、消化管出血が増加した

入院を必要とした市中肺炎患者(N=816)に対して、PSL 50mg/日を7日間投与(禁忌がない場合は全例に使用)、標準的な基準を使用した内服抗菌薬へのde-escalation、早期離床、低栄養スクリーニングと必要時の栄養療法を行った介入群は、非介入群(通常治療群…

経口バンコマイシンの予防投与は、CDIの発症率を低下させなかった

【150日以内のCDI既往のある患者が入院して全身抗菌薬を投与された場合、経口バンコマイシンを同時に投与しても、90日以内のCDI発症は減少しなかった】 CDIと診断された後、150日内に入院して1回以上の抗菌薬投与が行われた患者を対象として、予防的経口バン…

“Double Tongue” Appearance in Ludwig’s Angina

NEJMのImages in Clinical Medicine Ludwig’s anginaのPicture。日本語では「口底蜂窩織炎」。 N Engl J Med. 2019;381(2):163 doi: 10.1056/NEJMicm1814117 PMID: 31291518 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1814117?url_ver=Z39.88-2003&rfr_…

HIV感染者の結核治療の総説

Management of active tuberculosis in adults with HIVLancet HIV. 2019;6(7):e463-e474doi: 10.1016/S2352-3018(19)30154-7.PMID: 31272663 重要な点 ・毎年約100万人のHIV患者が結核を発症している(全結核の9%を占める) ・結核は、HIV患者の主要な死因…

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある。AUDやDOTが低いと耐性率は低くなる。適切な投与量で、必要なときだけ使用することが重要。日本からのdata。 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1341321X18302502?via%3D…

ICUでのカルバペネム系抗菌薬の処方が減ると、多剤耐性Acinetobacter感染症が減少する

ICUでカルバペネム系抗菌薬を制限して使用量を減らしたところ、多剤耐性アシネトバクターによる感染症が減少したことを示した後ろ向き研究。トルコから。 https://ann-clinmicrob.biomedcentral.com/articles/10.1186/1476-0711-13-7?fbclid=IwAR3zE9M9Vu8Xk…

formulary restrictionとpreauthorizationによって、ICUでのカルバペネム系抗菌薬の使用量が減少した

formulary restrictionと事前許可制(一定の条件を満たした場合のみカルバペネム系抗菌薬<メロペネム>が処方可能)によって、ICUにおけるカルバペネム系抗菌薬の使用量が減少したことを示した米国の観察研究。 この研究自体は、治療成績の変動や耐性菌の割…

ESCMIDによる新生児と小児における侵襲性アスペルギルス症診療ガイドライン

ガイドラインの紹介です。内容は、読んでからのお楽しみ。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1198743X19302824?fbclid=IwAR3mio51eDHNH5UalqX9QuAu6GaU7p6dDF4a1HfcqvgJJWdwZ6ztooaxDQU

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビュー

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビューです。 5つの最重要ポイント ・グラム陰性桿菌用の抗菌薬であるが、大腸菌などの耐性化が進んでいる。・唯一の抗緑膿菌活性のある経口抗菌薬であり、大切に使用する必要がある。・覚えるのは、シプロフロキサシン、レ…