マラリア予防にイベルメクチン!?
【3週間おきにイベルメクチンによる集団治療を行うとマラリアの罹患率が低下する】
イベルメクチンは多くの寄生虫感染で使用されている抗寄生虫薬であるが、イベルメクチンを内服したヒトの血液が、蚊に対して毒性を持つことを利用して、マラリア感染の予防効果があるか検討した報告。
雨季のブルキナファソ(7月から11月)で実施された。無作為比較試験。身長が90cm以上のある(ほぼ全)住民に対してイベルメクチンが投与された。介入群とcontrol群ともにまずイベルメクチン150-200 µg/kgとアルベンダゾール400mgを内服し、介入群は、その後3週間に1回の頻度で、追加5回イベルメクチンを内服する。
Primary outcomeは、その地域のほぼすべての5歳以下の小児におけるマラリア発症率(研究期間:18週間)。マラリアの診断は、発熱+迅速検査陽性。
介入群で1名あたり2.00回、control群で1名あたり2.49回のマラリアに罹患した。つまり、イベルメクチンによって、約20%のマラリアが減少した。5歳以下の小児のうち、投薬対象となったのは(90cm以上の身長が必要)、約20%だった。1回目のマラリア発症までの期間の中央値は、介入群で有意に長かった。サブグループ解析で、4-5歳の小児でイベルメクチンを内服した群は、特にマラリア罹患率が低下する傾向がみられた(44%減少した)。副作用は両群でほぼ同等であった(介入群3% vs control群2%)。
【解釈】
マラリアが蔓延している地域において、3週間おきにイベルメクチンを全人口に投与すると、5歳以下の小児のマラリア罹患率が約20%低下する。主に、イベルメクチンを内服したヒトの血液が蚊に対して毒性を持つことによる影響が考えられるが、イベルメクチンを内服した小児において、マラリア罹患率の低下が大きいため、マラリア原虫に対するイベルメクチンの直接的な効果があるかもしれない。
Limitation:control群において、placeboを使用していないため、盲検化できていない。そのため、マラリアの診断率や副作用の頻度の評価に影響する可能性がある。
Efficacy and risk of harms of repeat ivermectin mass drug administrations for control of malaria (RIMDAMAL): a cluster-randomised trial
Lancet 2019;393(10180):1517-1526
doi:10.1016/S0140-6736(18)32321-3
PMID:30878222
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)32321-3/fulltext