General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

基礎疾患のない成人のインフルエンザ患者がオセルタミビル内服すると、day 3時点でウイルス排泄率が低下する

【基礎疾患のない成人のインフルエンザ患者がオセルタミビル内服すると、day 3時点のウイルス排泄率が低下する】

 

方法:二重盲検無作為比較試験、多施設共同研究(タイ、米国、アルゼンチン)。18-64歳のインフルエンザ患者で、発症から48時間以内、かつ、重症化リスクがない人を対象とした。インフルエンザの確定診断は、迅速抗原検査またはPCRで行った。オセルタミビル群(1回75mg 1日2回、5日間)とplacebo群を比較。Primary outcomeは、day 3時点での鼻咽頭スワブのインフルエンザウイルスPCR陽性率。Secondary outcomeは、症状改善までの時間など。

 

結果:オセルタミビル群とplacebo群で、baselineの差はなかった。ワクチン接種率はわずか10%。primary endpointの解析の対象者は、pilot studyの対象となった46名や、central laboratoryでPCR陰性であった患者が除外されており、randomization時点の558名から449名まで減っている。Day 3でのウイルス排泄率は、オセルタミビル群45%、placebo群57.2%で、有意にオセルタミビル群で低かった。この差は、発症から24時間以内の場合に大きかった(43.1% vs 62.9%)。またインフルエンザA型の場合に有意な差がみられ、B型の場合は差がみられなかった。症状改善までの時間は、オセルタミビル群79時間、placebo群84時間で、有意差なし。

 

【解釈・結論】

基礎疾患のない18-64歳のインフルエンザ患者(A型)に対して発症から48時間以内にオセルタミビルを投与したほうが、day 3(診断時がday 0)のウイルス排泄率が低下する。ただし、投与した場合でも45%が排泄しているため、飛沫予防策はいずれにしても必要である。生来健常な成人に対するオセルタミビルの臨床的有用性は限定的である。

 

 

Effect of oral oseltamivir on virological outcomes in low-risk adults with influenza: a randomized clinical trial
Clinical Infectious Diseases, ciz634
https://doi.org/10.1093/cid/ciz634

https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciz634/5539729#.XTwSbFe2I-8.twitter