HIV患者が妊娠時にドルテグラビルを使用していると、新生児の神経管欠損症のリスクが増大する
【妊娠時のドルテグラビルの使用によって新生児の神経管欠損症のリスクが増大する】
導入:神経管欠損は妊娠第6週(受精して4週)間以内に発生する。当初エファビレンツによるリスク増大の可能性が指摘されていたが、その後の研究で関連はないことが示された。ドルテグラビルは、神経管欠損症との関連が示唆され、各種ガイドラインでは、妊娠を予定している女性への使用を控えるように推奨していた。今回、ARTと神経管欠損症の関連を調査した大規模な調査を行った。
ボツワナで行われたnationwide birth surveillance。2014年8月から2018年6月までは8つの公立病院、それ以降はさらに10の病院を追加した。これらの病院でのすべての出産を対象として、先天奇形(視診のみ)がないか調査した。
119,477分娩中119,033分娩で、新生児の奇形の評価が行われた。神経管欠損症(神経管閉鎖障害)は全体の0.08%でみられた。妊娠時にドルテグラビル内服中であった母親から出生した新生児の0.30%(5/1683)で神経管欠損症がみられた。ドルテグラビル以外を使用したARTを行っていた母親から出生した新生児では、神経管欠損は0.10%(15/14,792)、エファビレンツを使用している母親では、0.04%(3/7,959)、HIVに感染していない母親では0.08%(70/89,372)だった。各群の妊娠時の葉酸処方率、妊娠中の葉酸処方開始率、妊娠時の鉄剤処方率、妊娠時のST合剤内服率、妊娠前のてんかん・糖尿病・肥満の既往の頻度は、差がなかった。妊娠中にドルテグラビルを開始した母親では0.03%(1/3840:この1例は妊娠8週でドルテグラビル内服開始していた)。妊娠時のドルテグラビル内服が、神経管欠損症の発症と関連していた。ドルテグラビル内服群と非ドルテグラビルART群の差は有意であったが、1000分娩に対して約2例の増加であり、差は小さかった。Major external structural defectは、妊娠時のドルテグラビル内服群とその他の薬剤によるART群で差はなかった。
Limitation:観察研究であり、検討していない交絡因子があるかもしれない。ARTのアドヒアランスが不明(母子感染は0.4%で低く、一般的にアドヒアランスは良好と考えられる)。ドルテグラビルと神経管欠損の関連が最初に報告されてから、ドルテグラビル内服中の女性の中絶が増加した可能性がある(それらしいdataはない)。先天奇形の検索は体表の観察のみであり、心奇形などは検討されていない。24週以内の死産は検討していない。
【結論】
妊娠時のドルテグラビル内服(妊娠後の内服開始、ではない)は、新生児の神経管欠損症のリスクであり、妊娠を計画しているHIV患者に対するドルテグラビルの使用は控えるべきである。
Neural-Tube Defects and Antiretroviral Treatment Regimens in Botswana
N Engl J Med. 2019 Jul 22.
doi: 10.1056/NEJMoa1905230
PMID: 31329379