General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

市中肺炎の治療を、副腎皮質ステロイド投与を含めたbundleを作成・実施しても、予後は改善せず、消化管出血が増加した

入院を必要とした市中肺炎患者(N=816)に対して、PSL 50mg/日を7日間投与(禁忌がない場合は全例に使用)、標準的な基準を使用した内服抗菌薬へのde-escalation、早期離床、低栄養スクリーニングと必要時の栄養療法を行った介入群は、非介入群(通常治療群)と比較して、primary outcomeである入院期間(3日 vs 3日)は同等であった。

この試験は、オーストラリアで行われた無作為比較試験である。Secondary outcomeである死亡率(院内、30日、90日)、再入院も同等。介入群で、消化管出血(入院から30日以内)が多かった(2.2% vs 0.7%)。

 

上記の4つの介入(CAP service intervention)は、「推奨」として報告され、治療チームの裁量によって実際に施行された。

介入群で禁忌がない場合にステロイドが投与された割合は、75.8%(治療チームの判断で投与されなかった患者は4分の1程度)。非介入群でステロイド投与を受けたのは25.3%、適切な時期に内服抗菌薬にde-escalationされたのは69.2%。救急部からICUに入院した患者は両群とも約2.5%であった(一般病棟からICUに移動となった患者は、1.2-1.7%であった)。全体の30日死亡率は10.7%(通常の一般床に入院となる市中肺炎)。介入群では、DMの既往があるとインスリン新規処方が倍増、消化管出血がわずかに増加した。

 

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【解釈】

主に中等症の市中肺炎が対象となっているため、それに対する4つの介入を同時に行うことのメリットを示すことはできなかった。各介入の市中肺炎に対する効果は、一定の条件を満たした患者に対して報告されているが、実際の臨床に落とし込んだ場合に、それらの効果は示されなかった。

ただし、4つの介入の効果をまとめて評価したものであるため、ある介入がよい影響を与えて、別の介入がそのよい影響を打ち消した、という可能性は残る。そのため、各介入が不要、という結論にはならない。

消化管出血については、ステロイド投与以外にリスクとなりそうな介入はないため、おそらくステロイドによる副作用の増加を考える。

ICU管理が必要な重症患者はほとんど含まれていないため、それらの患者に対するステロイドの効果は、この報告からは判断できない。

 

 

Effectiveness of a Bundled Intervention Including Adjunctive Corticosteroids on Outcomes of Hospitalized Patients With Community-Acquired Pneumonia
JAMA Intern Med. 2019 Jul 8
doi: 10.1001/jamainternmed.2019.143
PMID: 31282921

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2737749