General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

HIV感染者の結核治療の総説

Management of active tuberculosis in adults with HIV
Lancet HIV. 2019;6(7):e463-e474
doi: 10.1016/S2352-3018(19)30154-7.
PMID: 31272663

 

重要な点

・毎年約100万人のHIV患者が結核を発症している(全結核の9%を占める)

結核は、HIV患者の主要な死因のひとつである(40%)

HIV感染者の結核の治療は、HIV非感染者と同じである

・薬剤感受性のよい結核の初回治療

 RFP・INH・EB・PZAを2か月→その後REFとINHを4か月

 治療期間は、6か月が基本(ARTなしの場合は、9-12か月の治療で再燃が少ない)

・副作用、薬物相互作用、ARTの開始時期、免疫再構築症候群の予防と治療が問題となる

・CD4が100 /µL未満の場合、RFPを15mg/kgまで増量したほうがよいかもしれない

HIV感染者は、抗結核薬による肝障害と皮膚障害が多い

HIV感染者は、INHによる末梢神経障害が多いため、ビタミンB6内服が必要

結核の治療とARTの併用によって、重度の副作用は増加しない

・治療中の肝障害の鑑別:結核関連のIRIS、HBVまたはHCV感染の悪化、ARTによる薬剤性肝障害、抗結核薬による薬剤性肝障害(RFP、INH、PZA)、予防的抗微生物薬(ST合剤など)

・薬物相互作用では、リファンピシンが問題となる(table 2)

 エファビレンツOK、ドルテグラビルは倍量へ増量必要、TAFは54%も濃度低下、PI×

結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)は、ART開始から1-2週間から3か月以内に出現

・IRISの症状は、咳や発熱などの結核の症状、CXR所見の悪化、リンパ節腫大の悪化、膿瘍形成、胸水や心嚢水の出現、髄膜炎の発症、肝臓の有痛性腫大、など

・IRISの発症のリスク

 CD4低値(特に50 /µL未満)、肺外結核、播種性結核結核治療とART開始の間隔が短い

・IRISの治療は、PSL 1.5 mg/kg/日を2週間、その後漸減(全4週間)

・IRIS中のART中断は、基本的に推奨されない

・IRIS予防のため、CD4 50以上の場合、ART開始を結核治療から8週間後に遅らせる

・IRIS予防のため、CD4 100未満の場合、予防的PSLの投与を検討する

 40mg/日 2週間、20mg/日 2週間で、IRISの発症が30%減少する

・ART開始のタイミングは、以下が推奨されている

 CD4 50 /µL未満の場合は結核治療開始から2週間以内

  死亡率が低下するため、ただしIRISは増加する

 CD4 50 /µL以上の場合は結核治療開始から8週間以内

ステロイドの併用は、HIV感染者の結核心外膜炎において検討される

・ARTを行っていない場合、ステロイドの投与で、カポジ肉腫などの腫瘍が増加する

結核髄膜炎では、ステロイドの併用によって、死亡率が低下する

 

 

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2352301819301547?via%3Dihub