General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

抗菌薬

腸内細菌科細菌菌血症における早期経口抗菌薬スイッチ

【腸内細菌科細菌菌血症の治療は、経過良好であれば5日目までに内服スイッチ可能かもしれない】 腸内細菌科細菌菌血症早期経口スイッチ。多施設共同研究。後ろ向き観察研究。腸内細菌科細菌菌血症(Source control良好、day 1から効果ある抗菌薬、day 5まで…

Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療はST合剤単剤でよい

【Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療は単剤が基本】 後ろ向き観察研究。 対象者:S. maltophilia pneumonia who received at least 48 h of effective therapy(血液培養陽性例はわずかのみ)。 効果のある抗菌薬投与開始後7日時点での臨床的反応率を…

shorter is better

「shorter is better」 抗菌薬の投与期間は、1週間が7日(ローマ帝国のConstantineが決めた)のため、7日または14日と歴史的に設定されてきた。過去25年に行われてきた抗菌薬投与期間のRCTでは、7の倍数は採用されず、より短い期間で、同等の効果が得られる…

女性の直腸クラミジア感染症の治療はドキシサイクリンがアジスロマイシンより優れる

直腸のクラミジア感染症の治療は、アジスロマイシン1g単回投与より、ドキシサイクリン1回100mg 1日2回 7日間のほうが効果が高い(95.5% vs 78.5%)ことを示した前向きコホート研究。 試験デザインはややわかりにくいがFigure 1とFigure 2を参照。性器クラミ…

肝硬変患者の重症血流感染症に対するβラクタム系抗菌薬の長時間/持続投与は予後を改善する

肝硬変患者の血流感染症に対するβラクタム系抗菌薬(PIPC/TAZとカルバペネム)の長時間/持続投与の検討。多施設前向き観察研究。経験的治療を対象としている。 PIPC/TAZは持続投与、カルバペネムは1回3-4時間投与された。通常投与群は1回30分で投与。長時間/…

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症は初期治療が外れていても予後は悪化しない

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症(30日mortality rateは10%程度)の治療において、初期治療が不適切であったとしても、治癒までの期間や死亡の増加はみられなかった、という後ろ向き観察研究。適切な経験的治療群と不適切な経験的治療群を比較。 複雑…

重症sepsisまたはseptic shock患者の感染症科コンサルテーションの効果

severe sepsisまたはseptic shockを呈する救急外来(ED)の患者における、早期感染症科コンサルテーション(early ID)の効果を評価した後ろ向き観察研究。 対象は、3-hour bundleを達成後の248名のsevere sepsisまたはseptic shockの成人ED患者。early ID群…

ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討

【ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討】 ESBL産生腸内細菌科細菌による尿路由来の菌血症へのdefinitive therapyとしての、アミノグリコシド(ゲンタマイシンまたはアミカシンの1日1回投与)の効果を検討した後ろ向き研究…

入院を必要とする蜂窩織炎の治療期間

【入院を必要とする蜂窩織炎の治療 6日間 vs 12日間:前者で再燃が多い】 蜂窩織炎の抗菌薬投与期間を、6日 vs 12日で比較。オランダで行われた、多施設、非劣勢、無作為比較試験。対象は、入院を必要とした成人の蜂窩織炎患者(血液培養陰性、85%程度が下肢…

ATS/IDSAの成人の市中肺炎(CAP)の診断と治療ガイドライン 2019

【ATS/IDSAの成人の市中肺炎(CAP)の診断と治療ガイドライン 2019】 16の臨床的疑問に回答する形式です。以下、その回答(recommendation)を意訳したものを記載しています。 重症市中肺炎の定義は、2007年のガイドラインと同様で、major criteria(血管収…

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果を検討した観察研究。MIC 2を超えると治療成績が悪化。「感性」の基準はMIC≦4。MIC 2以下かつ高用量(3g 8時間おき:通常投与量の倍量)だと成績がよかった。 「S」 と判定…

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬 ・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる (2)スペクトラム ・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1) ・class Aと…

セフタジジム-アビバクタムのまとめ

【ceftazidime-avibactam(セフタジジム-アビバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎に適応がある (2)スペクトラム ・avibactam…

ザバクサ(セフトロザン-タゾバクタム)のまとめ

【ceftolozane-tazobactam(セフトロザン-タゾバクタム)】 (1)基本事項 ・多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・ceftolozaneは、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬 ・ESBL産生菌、AmpC産生菌にも通常効果はあるが、耐性のこともある ・カルバペネマーゼ産生菌に…

テビペネムの総説

テビペネム(Tebipenem pivoxil HBr)について 要点 ・テビペネム・ピボキシルに臭化水素酸塩を付加したもの(安定性などが改善) ※日本で販売されているものは、臭化水素酸塩なし ・カルバペネム系抗菌薬の内服薬 ・スペクトラムは、エルタペネムとほぼ同等…

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用

【MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用で治療成績が改善する可能性がある】 米国の2つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究。培養採取からダプトマイシンが5日以内に開始、かつ、72時間以上投与されたMRSA菌血症の成人を対象と…

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について -

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について - ★要点 ・VRCZの副作用: 肝障害、視野障害、光毒性、皮膚悪性腫瘍のリスク上昇、不整脈(QT延長) 骨膜炎、幻覚、脳症、末梢神経障害、脱毛、爪の変形、低Na血症 ・トラフ濃度が5-6 µg/mLを超えると増える…

嫌気性菌とモキシフロキサシン

嫌気性菌とモキシフロキサシン ★まとめ ・モキシフロキサシンのきちんとした臨床dataは、腹腔内感染症のみ ・Bacteroides属の耐性率は10-30%以上である ・そのため、嫌気性菌の関与する感染症での使用には不安がある ・腹腔内感染症では、ABPC/SBTやCPFX+Met…

テビペネム・ピボキシル(オラペネム)

テビペネム・ピボキシル(商品名:オラペネム) PMID:26751436 - 緑膿菌とAcinetobacterには効果がない PMID:30014729 - 最初の経口カルバペネム系抗菌薬 - 緑膿菌に効果なし Jpn J Chemother 2009;57 (S-1): 1-14 - 緑膿菌のMICは高く効果なし - ブドウ糖…

ピペラシリン/タゾバクタムとバンコマイシン併用による急性腎障害について

【PIPC/TAZとVCMを併用するとAKIが増加する】 ・ほぼすべての研究が、後ろ向き観察研究である ・RCTはない、前向き観察研究もほとんどない ・PIPC-TAZ+VCM vs VCM+その他の薬剤でmeta解析(CID2018) AKI発症率22% vs 13%→Number needed to harm:11 critica…

肝膿瘍の治療:経口抗菌薬へのスイッチは1週間では早すぎる

【肝膿瘍の静注抗菌薬治療は、1週間では短すぎる】 概要:肝膿瘍(ドレナージあり)の治療を退院時点から、内服に変更した群と、点滴治療を続けた群での、再入院率(治療失敗率などの複合outcome)を比較した後ろ向き観察研究。結論は、内服治療群で再入院が…

MSSA菌血症とセファゾリンのinoculum effect

MSSAによる菌血症でCefazolin Inoculum Effectがある場合は、ない場合と比較して予後が悪いことを示した研究。その他の薬剤と比較したわけではない。観察研究。多変量解析で、Cefazolin Inoculum Effectのみが30日死亡率と関連していた。両群統計学的な有意…

歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は不適切使用が多い(米国)

米国で行われた歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は、80.9%が不適切であった。2007年のAHAのガイドライン(Circulation. 2007;116:1736–1754)をstandardとした。 ASP(抗菌薬適正使用支援)のよい対象である可能性があります。 Assessment of the Appro…

ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる

【ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる】 概要:ESBL産生またはAmpCβラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(E. coliまたはK. pneumoniae)による菌血症の標的治療におけるカルバペネム以外の経口(または筋注)抗菌…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性気管支炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第3弾】 原因微生物は、基礎疾患や合併症の有無で分けて考える必要がある、というところはよいと思います。 基礎疾患がない場合または軽微である場合、基本的に急性気管支炎に対する抗菌薬は不要であり…

セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能

【セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能】 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌または緑膿菌による感染症に対する、セフタジジム/アビバクタム単剤、または、他剤との併用治療、の効果を比較した研究のメタ解析。11つの…

母親のキノロン使用と子供のキノロン耐性グラム陰性桿菌による細菌尿

【母親がキノロン内服が、子供のキノロン耐性GNRによる細菌尿と関連した】 inclusion criteriaをみたしたグラム陰性桿菌による細菌尿のあるすべての小児(0.5-17歳)を対象とした。除外されたのは、過去(尿培養採取前)30日以内に入院歴がある場合、過去6か…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性咽頭炎・扁桃炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第2弾】 (1)急性咽頭炎・扁桃炎 疫学、診断は、「手引き」を踏襲しています。しかし、治療の項目において、根拠のない記載が目立ちます。「初回治療失敗例,重症例(とりわけ成人重症例)などいわゆ…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性鼻副鼻腔炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」(日本感染症学会 2019.8)に対する感想】 3回に分けて感想(意見)を述べます。1回目は、主に急性鼻副鼻腔炎についてです。2回目は、急性咽頭炎・扁桃炎、3回目は、急性気管支炎の項目についてです。 注意:こ…

βラクタムアレルギーの総説

【βラクタムアレルギーの総説の重要な図】 交差反応の有無を下図で判断します Cross-reactivity in β-Lactam Allergy.J Allergy Clin Immunol Pract. 2018 Jan-Feb;6(1):72-81.e1. doi: 10.1016/j.jaip.2017.08.027PMID: 29017833 https://www.sciencedirect…