General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討

【ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討】

 

ESBL産生腸内細菌科細菌による尿路由来の菌血症へのdefinitive therapyとしての、アミノグリコシド(ゲンタマイシンまたはアミカシンの1日1回投与)の効果を検討した後ろ向き研究。アミノグリコシド vs カルバペネム(ほとんどエルタペネム)またはPIPC/TAZ。193名を対象とした。アミノグリコシド群は、baseline GFRが高く、Charlson comorbidity scoreが低く、E. coliの占める割合が大きかった。治療期間の中央値は8日間。Primary outcomeは、30-day mortality。Primary safety outcomeは、14日時点でのAKI。16.6%が死亡。30日死亡は、アミノグリコシド群13.0%、対照群21.2%。多変量解析で、抗菌薬のタイプは死亡のリスク因子ではなかった。AKIは、アミノグリコシド群12%、対照群10.6%で有意差なし。

 

f:id:General-ID:20191110214435p:plain

 

解釈:アミノグリコシド群で、腎機能がよく重症度が低かったため、この研究のみでアミノグリコシドが、カルバペネムと(特に重症例で)同等とは言えない。また、対照群が、カルバペネムだけでなく、ピペラシリン/タゾバクタム(MERINO trialでカルバペネムより治療成績が悪いことが証明された)も含まれているため、対照群を「標準治療」とみなすこともできない。しかし、研究デザインの限界はあるが、非重症群で腎機能が正常な状況であれば、ESBL産生腸内細菌科細菌(主にE. coli)による尿路由来の菌血症の治療で、アミノグリコシドによる標的治療は、成績・副作用ともに、十分期待できるものと思われる。

 

 

 

Aminoglycoside versus carbapenem or piperacillin/tazobactam treatment for bloodstream infections of urinary source caused by Gram-negative ESBL-producing Enterobacteriaceae.
J Antimicrob Chemother. 2019 Nov 6. pii: dkz457
doi: 10.1093/jac/dkz457
https://academic.oup.com/jac/advance-article-abstract/doi/10.1093/jac/dkz457/5613763?redirectedFrom=fulltext