General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

腸内細菌科細菌による血流感染症で早期にde-escalationするとCDIが減少する

【腸内細菌科細菌による血流感染症の治療において、抗緑膿菌活性のある抗菌薬を早期de-escalationすることによってCDIのリスクが減少する】

 

要旨:腸内細菌科細菌菌血症に対して48時間以上抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬を投与された入院患者は、48時間以内の場合と比較して、90日以内のCDI発症リスクが3倍であった。

 

方法:単施設で行われた後ろ向きコホート研究。腸内細菌科細菌による血流感染症の治療を48時間以上施行された成人入院患者を対象とした。18歳以上、単一菌感染に限定。1年以内のCDIの既往、血流感染発症と同時期のCDIの症例は除外した。抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬を48時間以上使用した群と48時間以内の群を比較した。

 

結果:808名の腸内細菌科細菌による血流感染症の患者を対象とした。E. coliが56%、Klebsiella属が21%, Proteus mirabilisが7%、Enterobacter属7%、Serratia属4%。感染focusは、尿路56%、腹腔内13%、CRBSI 8%、呼吸器4%。不明13%。48時間以上群は、やや若年の傾向があり、女性が少ない、抗菌薬投与歴が多かった。また、血流感染症後の入院期間が長く(7日 vs 11日)、抗菌薬投与期間(13.2日 vs 13.7日:わずかな差)も長かった。詳細な抗菌薬の選択は、supplementary table 1に記載あり(手に入らなかったので詳細は不明)。48時間以内群の標的治療は、CTRXまたはフルオロキノロンが74%占めていた。CTRX耐性菌は両群5-7%、ESBL産生菌は両群3-5%で差はなかった。CDI発症率は、48時間以上群7.0%、48時間以内群1.8%で、後者で有意に少なかった。CDI発症のリスクは、48時間以上の抗緑膿菌活性のある抗菌薬使用、末期腎不全であった。

 

Limitation:後ろ向き観察研究であり、交絡因子が十分に排除できていない可能性が高い。経験的治療で選択された抗緑膿菌活性のある抗菌薬によって差がある可能性があるので、それについては検討できていない(各群の割合は、supplementalに記載があるはずが、入手できなかったため確認していない)。

 

結論:腸内細菌科細菌血流感染症に対する抗緑膿菌活性のある抗菌薬による経験的治療を、48時間以内にde-escalationをすると、CDI発症を減らすことができる可能性がある。De-escalation後の抗菌薬選択の多くがCTRXまたフルオロキノロン(内服?)であり、一般的にCDIのリスクが高いとされる薬剤であった(ので、ちょっとびっくり)。

 

 

 

Role of Early De-escalation of Antimicrobial Therapy on Risk of Clostridioides difficile
Infection following Enterobacteriaceae Bloodstream Infections
Cln Infect Dis 2019;69(3):414–420
doi: https://doi.org/10.1093/cid/ciy863

https://academic.oup.com/cid/article-abstract/69/3/414/5127158?redirectedFrom=fulltext