General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

市中発症の緑膿菌菌血症は死亡率30%程度で、来院時の重症度と不適切な経験的治療が死亡率の上昇と関連する

【市中発症の緑膿菌菌血症は死亡率30%程度で、来院時の重症度と不適切な経験的治療が、死亡率の上昇と関連する】

 

内容:市中発症の緑膿菌による血流感染症のpredisposing factorと不適切な経験的抗菌薬治療の死亡率への影響を検討したsystematic reviewとメタ解析。対象となった研究は、12の観察研究(ほとんどが後ろ向きコホート研究)。市中感染と市中発症の医療施設関連感染を含んでいる。

 

結果:12の観察研究、1120名を対象とした。固形腫瘍(33.1%)、血液悪性腫瘍(26.4%)、好中球減少症(31.7%)、抗菌薬使用歴(44.8%)、ステロイド使用(23.8%)がよくみられるpredisposing factorであった。Septic shockは31.7%でみられた。感染focusは、尿路感染症18.9%、気道感染症18.9%、不明13.1%、腹腔内6.25%、血管カテーテル7.1%であった。全体の死亡率は33.8%(院内発症の緑膿菌菌血症と同等程度の死亡率である)。死亡率は、来院時のseptic shockと不適切な経験的治療と関連した。耐性菌、アンチバイオグラム、投与された抗菌薬などの上昇はない。

 

解釈:観察研究のSRとメタ解析、かつ、十分なdataが提供されていないが、市中発症の緑膿菌による菌血症は、悪性腫瘍または免疫不全者で考慮する必要があり、その場合不適切な経験的抗菌薬を選択すると予後が悪化する可能性が高い、ということは言えそう。そのため、緑膿菌が関与する可能性がある感染症は、緑膿菌カバーが必要となる。とはいえ、過剰な緑膿菌カバーは、耐性菌の増加につながってしまう。経験的治療における緑膿菌カバーが必要な状況を予測するスコアやdecision treeなどの開発が期待される。

 

 

Rates, predictors and mortality of community-onset bloodstream infections due to Pseudomonas aeruginosa: systematic review and meta-analysis
Clin Microbiol Infect. 2019;25(8):964-970
doi: 10.1016/j.cmi.2019.04.005
PMID: 30995530

https://www.clinicalmicrobiologyandinfection.com/article/S1198-743X(19)30157-0/fulltext