General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する

【感染性心内膜炎の治療成績は、endocarditis teamによる診療支援で治療成績が向上する

 

感染性心内膜炎サポートチーム(endocarditis team:ET)の効果を評価したフランスで実施された単施設の後ろ向き観察研究。ETは、毎週集合し、その施設のすべてのIE症例の診断と管理について検討した。構成メンバーは、心臓血管外科医、循環器内科医、心エコー技師、感染症科医。この施設では、毎年約70例のIE症例がある。ETは2016年12月から始動した。

 

IEの診断基準は、修正Duke基準を使用し、18歳以上のIE全例を対象とした(もともとdatabaseがあるため、全例を対象とすることが可能)。

 

primary outcomeは、病院内死亡率で、ET導入前後(2017年1月から12月 vs 2012年から2016年の5年間)で比較した。secondary outcomeは、各管理(手術施行率、手術までの期間、抗菌薬治療期間、入院期間)への影響と長期成績(6か月死亡率、1年死亡率)など。

 

【結果】

対象は391例で、ET導入前群316例、ET導入後群75例。ET導入前群は、心臓手術歴が多く(39.2% vs 26.7%)、septic shockが少なかった(14.9% vs26.7%)。その他のbaselineは、ET導入前群とET導入後で明らかな差はなかった。両群とも約45%で心臓手術が行われた。

 

ETによって、病院内死亡率は有意な低下を認めなかったが、低下傾向は認められた(20.3% vs 14.7%)。6か月生存率と1年死亡率も、ET導入後で低い傾向であったが、統計学的有意差はなかった。手術までの期間(16.3日 vs 10.3日)、抗菌薬投与期間、入院期間(40.6日 vs 31.9日)は有意に短縮した。多変量解析では、ET導入と外科的手術の施行は、院内死亡率の低下と関連を認めた(OR 0.45:0.20-0.96)。septic shockは院内死亡と関連を認めた。

 

【解釈】

ET導入によって、治療成績を悪化させずに、IE患者の入院期間と抗菌薬投与期間が短縮されているので、一般的管理が最適化された可能性が高い。また、有意な死亡率の低下を示すことはできなかったが、多変量解析では、ET導入は、院内死亡率の低下と関連する可能性が示された。後ろ向き観察研究であること、単一施設であること、両群のbaselineに違いがあることなどのlimitationはあるが、ETの導入は有用である可能性は高く、ET導入の効果を前向き無作為比較試験で検討することが望まれる。

 

【結論】

endocarditis teamを導入すると、院内のIE診療が適正化され、院内死亡率が低下する可能性がある。

 

 

Impact of Setting up an 'Endocarditis Team' on the Management of Infective Endocarditis
Open Forum Infectious Diseases, ofz308
doi: https://doi.org/10.1093/ofid/ofz308

https://academic.oup.com/ofid/advance-article/doi/10.1093/ofid/ofz308/5532524