General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

耐性菌

Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療はST合剤単剤でよい

【Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療は単剤が基本】 後ろ向き観察研究。 対象者:S. maltophilia pneumonia who received at least 48 h of effective therapy(血液培養陽性例はわずかのみ)。 効果のある抗菌薬投与開始後7日時点での臨床的反応率を…

ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討

【ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討】 ESBL産生腸内細菌科細菌による尿路由来の菌血症へのdefinitive therapyとしての、アミノグリコシド(ゲンタマイシンまたはアミカシンの1日1回投与)の効果を検討した後ろ向き研究…

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果を検討した観察研究。MIC 2を超えると治療成績が悪化。「感性」の基準はMIC≦4。MIC 2以下かつ高用量(3g 8時間おき:通常投与量の倍量)だと成績がよかった。 「S」 と判定…

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬 ・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる (2)スペクトラム ・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1) ・class Aと…

セフタジジム-アビバクタムのまとめ

【ceftazidime-avibactam(セフタジジム-アビバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎に適応がある (2)スペクトラム ・avibactam…

ザバクサ(セフトロザン-タゾバクタム)のまとめ

【ceftolozane-tazobactam(セフトロザン-タゾバクタム)】 (1)基本事項 ・多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・ceftolozaneは、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬 ・ESBL産生菌、AmpC産生菌にも通常効果はあるが、耐性のこともある ・カルバペネマーゼ産生菌に…

テビペネムの総説

テビペネム(Tebipenem pivoxil HBr)について 要点 ・テビペネム・ピボキシルに臭化水素酸塩を付加したもの(安定性などが改善) ※日本で販売されているものは、臭化水素酸塩なし ・カルバペネム系抗菌薬の内服薬 ・スペクトラムは、エルタペネムとほぼ同等…

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用

【MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用で治療成績が改善する可能性がある】 米国の2つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究。培養採取からダプトマイシンが5日以内に開始、かつ、72時間以上投与されたMRSA菌血症の成人を対象と…

ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる

【ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる】 概要:ESBL産生またはAmpCβラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(E. coliまたはK. pneumoniae)による菌血症の標的治療におけるカルバペネム以外の経口(または筋注)抗菌…

セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能

【セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能】 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌または緑膿菌による感染症に対する、セフタジジム/アビバクタム単剤、または、他剤との併用治療、の効果を比較した研究のメタ解析。11つの…

母親のキノロン使用と子供のキノロン耐性グラム陰性桿菌による細菌尿

【母親がキノロン内服が、子供のキノロン耐性GNRによる細菌尿と関連した】 inclusion criteriaをみたしたグラム陰性桿菌による細菌尿のあるすべての小児(0.5-17歳)を対象とした。除外されたのは、過去(尿培養採取前)30日以内に入院歴がある場合、過去6か…

便移植による多剤耐性菌の伝播

【便移植による多剤耐性菌の伝播に注意喚起】 便移植(Fecal Microbiota Transplantation)によって、多剤耐性菌による重篤な感染症が起こる潜在的リスクについて、FDAから注意喚起ありました。C. difficile感染症の治療のひとつで、標準的治療が無効の場合…

便移植で多剤耐性菌が減る?

便移植は、腸管内の耐性菌のcolonizationを減らす可能性がある。 ただし、これまでの報告は、すべて小規模な研究である。 先日、便移植によって多剤耐性菌が伝播し、重症感染症を発症した報告があったことから、FDAが注意喚起していましたが、それとは逆の内…

MRSA肺炎の治療:バンコマイシンとリネゾリド以外の選択肢は?

【MRSA肺炎の治療で、VCM/LZDが使用できない場合は、ST合剤→CLDM→Mino】 MRSA肺炎におけるST合剤、CLDM、Doxy、Minoの治療効果についての総説。 ST合剤は比較的研究されているが、2つのRCTでは、標準治療(VCM、LZD)より劣っている可能性が示されている。観…

新しいバンコマイシンのTDMガイドラインの概要(public comment募集前のdraft)

先日先輩に教えていただいたバンコマイシンの新しいTDMガイドラインのドラフトの推奨部分を、意訳して、まとめてみました。 まず重要な点です ・目標とする指標は、成人・小児ともにAUC/MIC 400-600(基本的にMIC=1) ・この目標値は、年齢、腎機能、肥満の…

E. coli、Klebsiella spp.、P. mirabilisにおけるCTRX非感性株は、ESBL産生株とは限らない

【E. coliなどのCTRX非感性は、必ずしもESBL産生を意味しない】 内容:E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca, P. mirabilisでCTRX MIC≧2 µg/mLの臨床株(カルバペネム非感株は除外)のβ-lactamase遺伝子を解析した。米国の1つの病院(Johns Hopkins Hospital…

Enterobacter肺炎に対するPIPC/TAZは、標的治療の選択肢のひとつとなるかもしれない

【導入】 Enterobacter spp.は院内肺炎の主要な原因菌のひとつである。カルバペネム系抗菌薬が第1選択薬であるが、薬剤耐性菌の増加に伴いカルバペネム温存が求められている。セフェピムは、カルバペネムと同等の効果が示されてきた。ピペラシリン/タゾバク…

緑膿菌菌血症の標的治療は、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムで治療成績に差はない

【緑膿菌菌血症の標的治療において、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムの治療成績は同等であった】 767名のβラクタム系抗菌薬単剤で治療された緑膿菌菌血症の患者を対象として、使用抗菌薬別の30日死亡率を検討した後ろ向きコホート研…

ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療(CMIのNarrative review)

【ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療についての総説】 Current options for the treatment of infections due to extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in different groups of patients(Clin Microbiol Infect. 2019;25…

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある。AUDやDOTが低いと耐性率は低くなる。適切な投与量で、必要なときだけ使用することが重要。日本からのdata。 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1341321X18302502?via%3D…

ICUでのカルバペネム系抗菌薬の処方が減ると、多剤耐性Acinetobacter感染症が減少する

ICUでカルバペネム系抗菌薬を制限して使用量を減らしたところ、多剤耐性アシネトバクターによる感染症が減少したことを示した後ろ向き研究。トルコから。 https://ann-clinmicrob.biomedcentral.com/articles/10.1186/1476-0711-13-7?fbclid=IwAR3zE9M9Vu8Xk…

カルバペネム系抗菌薬の使用量が増加すると、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌が増加する

カルバペネム系抗菌薬(ほとんどがメロペネム)の使用量(DOT:days of therapy)はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(MIC≧2mg/L)と関連があることが、シカゴにある3次施設で行われた観察研究で示された。 2006年から2010年に調査。この期間、カルバペネム使…

多剤耐性菌に対するミノサイクリン点滴静注について

重要な点 ・スペクトラム グラム陽性球菌(GPC): MSSA・MRSA(主に皮膚軟部組織感染症と肺炎で、RFPと併用されることが多い) CNS グラム陰性桿菌(GNR): Acinetobacter baumanii(VAP/HAP、血流感染、骨髄炎など) ただし、ほとんどの報告は、ABPC/SBT …

腸内細菌科細菌による尿路感染症におけるミノサイクリンの有用性について

ESBL産生E. coliによる腎盂腎炎や前立腺炎で、ST合剤とフルオロキノロン耐性で内服薬の選択肢がないが、ミノサイクリンだけ感受性あり、ということはありませんか??メロペネムまたはセフメタゾールで経過よく、外来治療に移行したい!そんな時どうしたらよ…