General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】

 

(1)基本事項

・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬

・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる

 

(2スペクトラム

・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1)

・class Aとclass C beta-lactamaseに高い親和性をもつ(1)

・class B(MBL)とclass D(OXA-48 beta-lactamase)の阻害作用はない

・合剤にすることによって、ESBL産生菌とKPC産生菌のMICが低下する

・KPC産生菌への効果は高いが、MBL(NDM-1、IMP-64、VIM)とOXA-48には効果が期待できない(2)

・耐性機序(1)

KPC overproduction

外膜porin(OmpK36, OmpK35)をencodeする遺伝子の変異による外膜透過性低下

 

(3)臨床データ

・複雑性尿路感染症で、PIPC/TAZに非劣勢(原因微生物は、耐性菌に限っていない)(3)

・CRE(主にKPC産生K. pneumoniae)による感染症への効果は、既存の治療(新規のβラクタマーゼ配合βラクタム系抗菌薬は含まれていない)より成績がよい(4)

緑膿菌、Acinetobacterに対する効果は、MEPM単剤と同等(5)

 

(4)投与量

・投与方法:4g(meropenem 2g+vaborbactam 2g)8時間おき、1回3時間点滴

 

(5)コスト

・2g 198ドル→12g:1188ドル/日→13万円/日(1ドル110円換算)

 

(6)参考文献

  1. Curr Infect Dis Rep. 2019 Sep 9;21(10):39. doi: 10.1007/s11908-019-0690-9
  2. Int J Antimicrob Agents. 2018;52(2):144-150
  3. JAMA. 2018;319(8):788-799
  4. Infect Dis Ther. 2018;7(4):439-455
  5. Antimicrob Agents Chemother. 2017;61(9).