General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-01-01から1年間の記事一覧

腸内細菌科細菌菌血症における早期経口抗菌薬スイッチ

【腸内細菌科細菌菌血症の治療は、経過良好であれば5日目までに内服スイッチ可能かもしれない】 腸内細菌科細菌菌血症早期経口スイッチ。多施設共同研究。後ろ向き観察研究。腸内細菌科細菌菌血症(Source control良好、day 1から効果ある抗菌薬、day 5まで…

不活化VZVワクチン(Shingrix)の血液腫瘍患者への効果

【不活化VZVワクチンの血液腫瘍患者への効果:液性免疫指標の反応良好】 ・Shingrixの効果を検討したRCT ・対象は、血液悪性腫瘍患者 ・placeboと比較、1-2か月間隔で2回接種 ・液性免疫の指標は良好に反応:80% ※リツキシマブを使用しているCLLとNHLを除く …

インフルエンザワクチンのよい適応は15歳未満!!

日本で研究。 15歳未満にインフルエンザワクチンを接種することは、現在の高齢者を主にtargetとした接種戦略より、罹患率の減少・費用対効果において、優れていることが示された。 Modelling the optimal target age group for seasonal influenza vaccinati…

HPV DNAワクチンの効果(CIN3の患者を対象)

【HPV DNAワクチン】 ガーダシルやサーバリックスと異なり、感染・CIN発症後の接種(治療?)です。 ・第2相試験 ・HPV16/18によるCIN3を対象 ・RCT、1mg vs 4mgを比較 ・ワクチン接種:0, 4w, 12w(筋注) ・Primary endpoint:CIN1以下へのregression ・1…

免疫正常な高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの方針変更(ACIP 2019)

【免疫正常な高齢者へのPCV13(プレベナー)の接種の推奨取りやめ】 小児へのPCV13接種によって、小児・成人におけるPCV13カバー率の低下が著明となった。2014年以降、PCV13カバーのIPDは減少しなかった。 免疫不全者・人工内耳・髄液漏を除く65歳以上の高齢…

Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療はST合剤単剤でよい

【Stenotrophomonas maltophilia肺炎の治療は単剤が基本】 後ろ向き観察研究。 対象者:S. maltophilia pneumonia who received at least 48 h of effective therapy(血液培養陽性例はわずかのみ)。 効果のある抗菌薬投与開始後7日時点での臨床的反応率を…

腸チフス結合型ワクチンの効果は81.6%

【腸チフス結合型ワクチンの効果を検討】 RCT、第3相試験。ネパール。 TCV vs MenA(Conctrol)。1回接種(筋注)。 6か月から16歳。 Primary outcome:血液培養で確定診断した腸チフス:81.6%↓ 副反応少ない、約1年のf/u期間。 Phase 3 Efficacy Analysis o…

shorter is better

「shorter is better」 抗菌薬の投与期間は、1週間が7日(ローマ帝国のConstantineが決めた)のため、7日または14日と歴史的に設定されてきた。過去25年に行われてきた抗菌薬投与期間のRCTでは、7の倍数は採用されず、より短い期間で、同等の効果が得られる…

女性の直腸クラミジア感染症の治療はドキシサイクリンがアジスロマイシンより優れる

直腸のクラミジア感染症の治療は、アジスロマイシン1g単回投与より、ドキシサイクリン1回100mg 1日2回 7日間のほうが効果が高い(95.5% vs 78.5%)ことを示した前向きコホート研究。 試験デザインはややわかりにくいがFigure 1とFigure 2を参照。性器クラミ…

新規AML診断患者のスクリーニング胸部CTによって、10%でIPAがみつかる

新規にAMLと診断された患者全員に胸部CT(baseline CT:スクリーニングとして施行)を撮影すると、侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)が10%の可能性で見つかった、という報告。 単施設の研究、mortalityなどへのbaseline CTの影響は検討していない、などの問題…

肝硬変患者の重症血流感染症に対するβラクタム系抗菌薬の長時間/持続投与は予後を改善する

肝硬変患者の血流感染症に対するβラクタム系抗菌薬(PIPC/TAZとカルバペネム)の長時間/持続投与の検討。多施設前向き観察研究。経験的治療を対象としている。 PIPC/TAZは持続投与、カルバペネムは1回3-4時間投与された。通常投与群は1回30分で投与。長時間/…

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症は初期治療が外れていても予後は悪化しない

重症ではない菌血症を伴った尿路感染症(30日mortality rateは10%程度)の治療において、初期治療が不適切であったとしても、治癒までの期間や死亡の増加はみられなかった、という後ろ向き観察研究。適切な経験的治療群と不適切な経験的治療群を比較。 複雑…

Streptococcus-like bacteriaによる菌血症の解析

Streptococcus-like bacteria(Abiotrophia, Aerococcus, Gemella, Granulicatella)による菌血症の疫学とIEのリスクを検討した後ろ向き観察研究。568例の菌血症のうち、32例(5.6%)がIEであった。各属別の菌血症のうちIEの割合は、Abiotrophia 21%、Granul…

重症sepsisまたはseptic shock患者の感染症科コンサルテーションの効果

severe sepsisまたはseptic shockを呈する救急外来(ED)の患者における、早期感染症科コンサルテーション(early ID)の効果を評価した後ろ向き観察研究。 対象は、3-hour bundleを達成後の248名のsevere sepsisまたはseptic shockの成人ED患者。early ID群…

ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討

【ESBL産生菌による尿路由来の菌血症の治療におけるアミノグリコシドの検討】 ESBL産生腸内細菌科細菌による尿路由来の菌血症へのdefinitive therapyとしての、アミノグリコシド(ゲンタマイシンまたはアミカシンの1日1回投与)の効果を検討した後ろ向き研究…

入院を必要とする蜂窩織炎の治療期間

【入院を必要とする蜂窩織炎の治療 6日間 vs 12日間:前者で再燃が多い】 蜂窩織炎の抗菌薬投与期間を、6日 vs 12日で比較。オランダで行われた、多施設、非劣勢、無作為比較試験。対象は、入院を必要とした成人の蜂窩織炎患者(血液培養陰性、85%程度が下肢…

インフルエンザUpDate

【インフルエンザUpDate 2019/2020シーズン】 外部のサイトですが、スライドをアップしました。興味ある方はぜひ。 https://slide.antaa.jp/article/view/c8d88383a5e34201

ATS/IDSAの成人の市中肺炎(CAP)の診断と治療ガイドライン 2019

【ATS/IDSAの成人の市中肺炎(CAP)の診断と治療ガイドライン 2019】 16の臨床的疑問に回答する形式です。以下、その回答(recommendation)を意訳したものを記載しています。 重症市中肺炎の定義は、2007年のガイドラインと同様で、major criteria(血管収…

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果

セフトロザン-タゾバクタムの多剤耐性緑膿菌による下気道感染症(主に肺炎)への効果を検討した観察研究。MIC 2を超えると治療成績が悪化。「感性」の基準はMIC≦4。MIC 2以下かつ高用量(3g 8時間おき:通常投与量の倍量)だと成績がよかった。 「S」 と判定…

メロペネム-バボルバクタムについて

【meropenem-vaborbactam(メロペネム-バボルバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌用の抗菌薬 ・一部のCRE(CPE)への効果が期待できる (2)スペクトラム ・vaborbactamは、non-beta-lactam、cyclic boronic acid(1) ・class Aと…

セフタジジム-アビバクタムのまとめ

【ceftazidime-avibactam(セフタジジム-アビバクタム)】 (1)基本事項 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・複雑性尿路感染症と複雑性腹腔内感染症と院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎に適応がある (2)スペクトラム ・avibactam…

ザバクサ(セフトロザン-タゾバクタム)のまとめ

【ceftolozane-tazobactam(セフトロザン-タゾバクタム)】 (1)基本事項 ・多剤耐性緑膿菌用の抗菌薬 ・ceftolozaneは、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬 ・ESBL産生菌、AmpC産生菌にも通常効果はあるが、耐性のこともある ・カルバペネマーゼ産生菌に…

妊婦の梅毒と先天梅毒

【妊婦の梅毒と先天梅毒】 (1)妊婦の梅毒における垂直感染(UpToDate) T. pallidumは、胎盤に感染する。胎盤経由の胎児への感染は、妊娠第9-10週から起こりうる(それ以降であれば、どのタイミングでも感染は起こる)。先天的な感染は、妊娠週数、母体の…

ロタウイルスワクチンの定期接種化

ロタウイルスワクチンの定期接種化 ・2020年10月から開始予定 ・標準的には、生後2か月から接種開始 ・ロタテック3回、ロタリックス2回(どちらも4週間以上の間隔) ・原則同じ製剤を使用する(ただし互換性はあると考えられている) ・腸重積が増加する可能…

テビペネムの総説

テビペネム(Tebipenem pivoxil HBr)について 要点 ・テビペネム・ピボキシルに臭化水素酸塩を付加したもの(安定性などが改善) ※日本で販売されているものは、臭化水素酸塩なし ・カルバペネム系抗菌薬の内服薬 ・スペクトラムは、エルタペネムとほぼ同等…

MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用

【MRSA菌血症におけるダプトマイシンとβラクタム系抗菌薬の併用で治療成績が改善する可能性がある】 米国の2つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究。培養採取からダプトマイシンが5日以内に開始、かつ、72時間以上投与されたMRSA菌血症の成人を対象と…

インフルエンザワクチン株 2019-2020

インフルエンザワクチン株 2019-2020 (1)WHOの推奨 21 February 2019 (updated on 21 March 2019) It is recommended that egg based quadrivalent vaccines for use in the 2019-2020 northern hemisphere influenza season contain the following: A/Bri…

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について -

ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について - ★要点 ・VRCZの副作用: 肝障害、視野障害、光毒性、皮膚悪性腫瘍のリスク上昇、不整脈(QT延長) 骨膜炎、幻覚、脳症、末梢神経障害、脱毛、爪の変形、低Na血症 ・トラフ濃度が5-6 µg/mLを超えると増える…

嫌気性菌とモキシフロキサシン

嫌気性菌とモキシフロキサシン ★まとめ ・モキシフロキサシンのきちんとした臨床dataは、腹腔内感染症のみ ・Bacteroides属の耐性率は10-30%以上である ・そのため、嫌気性菌の関与する感染症での使用には不安がある ・腹腔内感染症では、ABPC/SBTやCPFX+Met…

テビペネム・ピボキシル(オラペネム)

テビペネム・ピボキシル(商品名:オラペネム) PMID:26751436 - 緑膿菌とAcinetobacterには効果がない PMID:30014729 - 最初の経口カルバペネム系抗菌薬 - 緑膿菌に効果なし Jpn J Chemother 2009;57 (S-1): 1-14 - 緑膿菌のMICは高く効果なし - ブドウ糖…