General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ピペラシリン/タゾバクタムとバンコマイシン併用による急性腎障害について

【PIPC/TAZとVCMを併用するとAKIが増加する】 ・ほぼすべての研究が、後ろ向き観察研究である ・RCTはない、前向き観察研究もほとんどない ・PIPC-TAZ+VCM vs VCM+その他の薬剤でmeta解析(CID2018) AKI発症率22% vs 13%→Number needed to harm:11 critica…

artemether-lumefantrine(リアメット)の吸収

【artemether-lumefantrineのbioavailabilityと食事の関係】 吸収 ・lumefantrineのbioavailabilityが問題となる ・脂質とともに摂取するとbioavailabilityが上昇する ・UpToDateには、食事摂取によって、血中濃度は、artemetherは2-3倍、 lumefantrineは16…

artemether-lumefantrine(リアメット)と非重症熱帯熱マラリア

【artemether-lumefantrineは、非流行地域からの旅行者の非重症熱帯熱マラリアでは治療失敗が多い可能性がある】 (1)効果 ・流行地域での非重症熱帯熱マラリアに対する効果:98%以上(1, 2) ・再燃は1.9%だった (2)非流行地域出身の旅行者におけるリア…

自家造血幹細胞移植後のrecombinant zoster vaccineの効果(シングリックス)

【自家造血幹細胞移植後の帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)の効果は68%】 【背景】 自家造血幹細胞移植後のVZV再活性化は多く、6-12か月程度抗ウイルス薬の予防内服が行われている(多くの国では、アシクロビル1回800mg 1日2回、日本では1回200mg 1日1回…

ソフトドリンクは危険!?

【ソフトドリンクと死亡率の関連を示した大規模な観察研究】 欧州で行われた観察研究。砂糖含有、または、人工甘味料含有のソフトドリンクを1日500ml以上飲んでいる群は、ソフトドリンクをほぼ飲まない群比較して、全死亡率が高かった。平均follow-up期間は1…

電子タバコによる肺疾患

【電子タバコに関連した肺疾患】 米国のイリノイ州とウィスコンシン州で発生した53例の報告です。32%が人工呼吸器管理を要したようです。死亡は1例のみ。原因(どの成分が原因か?)ははっきりしないようですが、電子タバコ関連肺疾患の動向は、注意深くフォ…

肝膿瘍の治療:経口抗菌薬へのスイッチは1週間では早すぎる

【肝膿瘍の静注抗菌薬治療は、1週間では短すぎる】 概要:肝膿瘍(ドレナージあり)の治療を退院時点から、内服に変更した群と、点滴治療を続けた群での、再入院率(治療失敗率などの複合outcome)を比較した後ろ向き観察研究。結論は、内服治療群で再入院が…

MSSA菌血症とセファゾリンのinoculum effect

MSSAによる菌血症でCefazolin Inoculum Effectがある場合は、ない場合と比較して予後が悪いことを示した研究。その他の薬剤と比較したわけではない。観察研究。多変量解析で、Cefazolin Inoculum Effectのみが30日死亡率と関連していた。両群統計学的な有意…

歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は不適切使用が多い(米国)

米国で行われた歯科処置前のIE予防のための抗菌薬投与は、80.9%が不適切であった。2007年のAHAのガイドライン(Circulation. 2007;116:1736–1754)をstandardとした。 ASP(抗菌薬適正使用支援)のよい対象である可能性があります。 Assessment of the Appro…

ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる

【ESBL産生菌による菌血症の標的治療で、ST合剤とフルオロキノロンは選択肢となりうる】 概要:ESBL産生またはAmpCβラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(E. coliまたはK. pneumoniae)による菌血症の標的治療におけるカルバペネム以外の経口(または筋注)抗菌…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性気管支炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第3弾】 原因微生物は、基礎疾患や合併症の有無で分けて考える必要がある、というところはよいと思います。 基礎疾患がない場合または軽微である場合、基本的に急性気管支炎に対する抗菌薬は不要であり…

セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能

【セフタジジム/アビバクタムは、カルバペネム耐性GNR感染症に対して単剤使用可能】 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌または緑膿菌による感染症に対する、セフタジジム/アビバクタム単剤、または、他剤との併用治療、の効果を比較した研究のメタ解析。11つの…

母親のキノロン使用と子供のキノロン耐性グラム陰性桿菌による細菌尿

【母親がキノロン内服が、子供のキノロン耐性GNRによる細菌尿と関連した】 inclusion criteriaをみたしたグラム陰性桿菌による細菌尿のあるすべての小児(0.5-17歳)を対象とした。除外されたのは、過去(尿培養採取前)30日以内に入院歴がある場合、過去6か…

HIV:ドルテグラビル耐性ウイルスの恐怖

【HIV:ドルテグラビル耐性ウイルスの恐怖】 初発HIV/AIDSの患者(viral load高く、CD4リンパ球数は22)を、ツルバダとドルテグラビルで治療開始。同時に播種性結核をリファブチンを含めたレジメンで治療。最初の3週間の治療でviral loadは良好に低下したが…

感染症専門医試験

【感染症専門医試験(2019年9月)で問われた内容】 問題の形式は、学会HPの通りです http://www.kansensho.or.jp/modules/senmoni/index.php?content_id=11 記憶力のある同僚が再現していました ここでは、大まかな内容について記載します だいたい、以下の…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性咽頭炎・扁桃炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」への感想第2弾】 (1)急性咽頭炎・扁桃炎 疫学、診断は、「手引き」を踏襲しています。しかし、治療の項目において、根拠のない記載が目立ちます。「初回治療失敗例,重症例(とりわけ成人重症例)などいわゆ…

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言について:急性鼻副鼻腔炎編

【「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」(日本感染症学会 2019.8)に対する感想】 3回に分けて感想(意見)を述べます。1回目は、主に急性鼻副鼻腔炎についてです。2回目は、急性咽頭炎・扁桃炎、3回目は、急性気管支炎の項目についてです。 注意:こ…

Oligella urethralis

稀な細菌に出会ったので、調べてみました。 (1)基本情報 ・Oligella uretralisは、ヒトの泌尿生殖器の常在菌である ・上気道の常在菌の可能性が指摘されている ・好気性グラム陰性球桿菌 ・もともとMoraxella属であったが、1987年にOligella属に分類された…

βラクタムアレルギーの総説

【βラクタムアレルギーの総説の重要な図】 交差反応の有無を下図で判断します Cross-reactivity in β-Lactam Allergy.J Allergy Clin Immunol Pract. 2018 Jan-Feb;6(1):72-81.e1. doi: 10.1016/j.jaip.2017.08.027PMID: 29017833 https://www.sciencedirect…

バリキサ錠は原則粉砕してはいけない

【バリキサ錠は原則粉砕してはいけない】 バルガンシクロビル(商品名:バリキサ、1錠450mg)は、錠剤とドライシロップがあり、経管投与や透析患者で使用する場合(透析患者へのバリキサの使用は一般的には推奨されていませんが、透析後200mg投与 週3回、で…

S. aureus菌血症に対するPIPC/TAZは治療効果が低い可能性がある

【S. aureus菌血症に対するPIPC/TAZは治療効果が低い可能性がある】 【内容】 MSSA菌血症の治療を、全「入院」期間piperacillin/tazobactam(PIPC/TAZ)で行うと、ナフシリン/オキサシリン/セファゾリンで治療した場合に比べて、30日死亡率が高いことを示し…

造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirのCMV感染症に対する予防効果

【造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirの効果の検討】 CMV-seropositiveの造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirの死亡率への影響を検討した研究についてです。全死亡率を改善する可能性が示されたとしているが、実際には48週時点での死亡…

便移植による多剤耐性菌の伝播

【便移植による多剤耐性菌の伝播に注意喚起】 便移植(Fecal Microbiota Transplantation)によって、多剤耐性菌による重篤な感染症が起こる潜在的リスクについて、FDAから注意喚起ありました。C. difficile感染症の治療のひとつで、標準的治療が無効の場合…

HIV感染症の曝露前予防:USPSTFの推奨

USPSTFは、HIV感染へのhigh risk者に対して、TDF/FTCによる曝露前予防(preexposure prophylaxis:PrEP)を推奨した。2017年にはCDCがすでに同様の推奨を発表している。 米国は現在約110万人のHIV患者が存在している。また、2017年の新規発症者は38281人であ…

非重症市中肺炎をセフトリアキソンで治療する場合、1g 24時間おきでよい

【非重症市中肺炎をセフトリアキソンで治療する場合、1g 24時間おきでよい】 内容:市中肺炎におけるセフトリアキソンの投与量の検討。1g 24時間おきでよい可能性が高いという結論。市中肺炎の治療のRCT(CTRXとその他の薬剤の治療効果を比較したもの)を集…

ASTと感染症コンサルテーションを組み合わせるとS. aureus菌血症の予後が改善する

【S. aureus菌血症は、感染症科医とASTの関与によって死亡率が低下する】 【内容】S. aureus菌血症の患者に対して、感染症科コンサルテーションまたは(and/or)AST(antimicrobial stewardship team)が関わると、30日死亡率が低下(11% vs 24%)したことを…

ペニシリン感受性S. aureus菌血症の治療は、ペニシリンGを選択する

【ペニシリン感受性S. aureus菌血症は、flucloxacillinよりペニシリンGのほうが治療成績がよい可能性がある】 【内容】オーストラリアとニュージーランドで行われた観察研究。ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌(PSSA)による血流感染症(915例)の標的治療(d…

小児のグラム陰性桿菌菌血症における血液培養再検の必要性

【小児のグラム陰性桿菌菌血症では、血液培養のフォローが必要な可能性が高い】 ※成人ではroutineの再検は不要と考えられている 【内容】 小児(中央値2歳)のグラム陰性桿菌(GNR)菌血症における血液培養再検(24時間以上の間隔で提出)の有用性を後ろ向き…

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖 ピボキシル基含有抗菌薬 ・セフカペン・ピボキシル(フロモックス) ・セフジトレン・ピボキシル(メイアクト) ・セフテラム・ピボキシル(トミロン) ・テビペネム・ピボキシル(オラペネ…

血液悪性腫瘍患者(主に造血幹細胞移植後)におけるCMV感染症の診療ガイドライン

【血液悪性腫瘍患者におけるCMV感染症診療ガイドライン2019】 (1)重要な点 ・HSCT後のCMV diseaseは臨床研究では2-3%だが、real-worldでは5-10% ・臍帯血移植の場合、CMV再活性化のriskは高く、腫瘍の再発以外での死亡率が上昇 ・HSCT後100日以内のCMV dis…