General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirのCMV感染症に対する予防効果

【造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirの効果の検討】

 

CMV-seropositiveの造血幹細胞移植レシピエントにおけるletermovirの死亡率への影響を検討した研究についてです。全死亡率を改善する可能性が示されたとしているが、実際には48週時点での死亡率はletermovir群でよい傾向にはあるが、有意差をもってよいことは示すことはできなかったというもの。

 

letermovir群では、CMV infectionを発症した場合としなかった場合では死亡率に差はなかったが、letermovirを使用しなかった群では、CMV infectionを起こした場合、予後が悪くなった。また、CMV infectionを起こした患者では、letermovirを使用していたほうが予後がよかった。hazard ratioは0.45 (95% CI, 0.21–1.00; P = .05)。  

 

ClinicalTrials.gov, NCT02137772(N Engl J Med 2017;377:2433-44)で、letermovir(移植後28日以内に開始して移植後100日目まで投与)は、移植後24週までの臨床的に有意なCMV infection(CMV diseaseとpreemptive therapyを必要としたCMV viremia)を減らすことが示された。ただし、CMV diseaseを減らしたわけではなく、preemptive therapyが必要なviremiaを減らした。primary endpointではないが、24週までの全死亡率も有意差をもって減らした。今回の報告は、この研究を解析したものである。

 

全体的な流れとしては、letermovirを使用したほうがよいような気もしますが、長期的なall-cause mortalityへの効果は示せなかったわけであるので、全例で使用すべきかどうかはやや疑問が残ります。CMV infectionを高率に発症すると予想されるhigh risk者では、使用したほうがよいのかもしれません。

 

 

※レテモルビル(商品名:プレバイミス) 480mg/日=内服29291円/日

 

 

 

A Mortality Analysis of Letermovir Prophylaxis for Cytomegalovirus (CMV) in CMV-Seropositive Recipients of Allogeneic Hematopoietic-Cell Transplantation
Clin Infect Dis. 2019 Jun 8.
DOI:10.1093/cid/ciz490
PMID:31179485

https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciz490/5513132