General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

zone edge testについてのメモ

S. aureusのペニシリン感受性を調べるための検査であるzone edge testについてのメモ(なぐり書き)です。興味ある人は、原著にあたってください。blaZ、PSSA、CLSI、EUCASTなど感染症領域の人以外には見慣れない用語が多くなっていますが、ご了承ください。

 

 

1. zone edge testの感度、方法はCLSI
Clin Microbiol Infect 2008;14:614–616
10.1111/j.1469-0691.2008.01997.x
PMID: 18397333
・ドイツの報告
・S. aureusで、PCG MIC 0.12 µg/mL以下(阻止円直径≧29 mm)の株を対象
・blaZ遺伝子(ペニシリナーゼをencodeしている) PCRがreference standard
・Vitek 2 systemを使用
・197株中28株(14.2%)がblaZ陽性
・MIC=0.03の株はすべてblaZ陰性、MIC=0.06の株はblaZ 6.2%、MIC=0.12は23.2%
・zone edge test(10-U penicillin diskを使用)の感度71.4%
・nitrocefin assayの感度は39.3%
・cloverleaf assayの感度67.8%
・結論:重症感染症の場合はblaZ遺伝子のPCRを施行したほうがよいかもしれない


2. zone edge testの感度は検者間のばらつきが多い
Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 2012;74:388–393
・米国の報告
・PCG MICが低いかつnigrocefin test陰性105株
・blaZ遺伝子は10株(9.5%)で陽性
・阻止円の直径は、blaZ陽性・陰性で34mmと38mmで有意差はある
 →35mmをcutoffとすると、精度が上がるかもしれない:感度70%、特異度93%
・ただしどちらも≧29mm
・zone edge testはobserver-dependent 感度計算していない
 blaZ陰性をsharpと(念のため?)とらえる傾向がある
・cloverleaf assayは6/10で陽性:感度60%、特異度100%
PCRもassayによって結果が変わる

 

 3. zone edge testの感度は、CLSIよりEUCASTの方法のほうが感度が高い
J Clin Microbiol. 2014 Apr;52(4):1136-8
doi: 10.1128/JCM.03068-13.
PMID: 24452169
・CLSI 10U discとEUCAST 1U discの精度の違いを検討
・MIC≦0.12でnitrocefin test陰性、を対象
・reference standardは、blaZ遺伝子
・cefinase試験の感度63%
・P10(CLSI)の感度89%(34/38) 11%で解釈の違いで出た
・P1(EUCAST)の感度100%(38/38)
・blaZ陰性→全株でβLactamase試験陰性→特異度100%
・rule inには使えるが、rule outにはやや不安が残る
→まちがって感性と判断するリスク
・熟練した技師でも解釈の差が生まれうる
・EUCAST推奨のP1を使用してdiameterとedge評価を行うのが最適


4. CLSI法zone edge testの感度64.5%(N=31)
J Clin Microbiol. 2016 Mar;54(3):812-4
doi: 10.1128/JCM.03109-15
PMID: 26763960
・blaZ遺伝子の検出をgold standardとすると
CLSIのzone edge testの感度64.5%、特異度99.8%
・PSSAの検査:zone edge testの感度60-70%
・2013年の米国のS. aureusの13.5%はPSSA
・448例のMIC≦0.12のMSSAのうち、blaZ陽性31例、6.9%
 MIC 0.12の場合、blaZ陽性17例、32.1% zone edge 16例で陽性→94.1%
 MIC 0.06の場合、blaZ陽性14例、3.8% zone edge 4例で陽性→28.6%
 MIC 0.03以下では、blaZ陽性0例
 →感度20/31=64.5%
・結論:感度が低いので。blaZで陰性を確認してから変更を推奨

 

 5. zone edge testは、評価者間の解釈の差が大きい
J Antimicrob Chemother. 2017 Apr 1;72(4):1089-1093. doi: 10.1093/jac/dkw521
PMID: 28069883
・PCG disk 15-40mmのMSSAを調査
・215株中88株 40.9%がblaZ遺伝子陽性
・zone edge testの感度89.8%
・training levelによって感度にばらつきがあった 68.2%-96.6%
 5年目以内の技師のみ感度は68.2%で、5年以上の場合は感度95%以上
 特異度のばらつきは少なかった 89.8-100%
・EUCASTの基準


6. 日本のMSSA(MIC≦012)はblaZ保有率低い zone edge 100%?
Ann Lab Med. 2018 Mar;38(2):155-159
doi: 10.3343/alm.2018.38.2.155
PMID: 29214760
・日本のdata、東京
・MSSA 200株(MIC≦0.12)、2株のみblaZ陽性、実際はすべてMIC≦0.03
・P10、P2を使用、ともに感度100%(ただしN=2)
 P10 特異度95.5%、PPV 18.2%
・blaZ PCRをstandard


7. 日本のMIC≦0.06はすべてPSSAだった
J Infect Chemother. 2018 Feb;24(2):153-155
doi: 10.1016/j.jiac.2017.10.014
PMID: 29132926
・日本のdata、東京
・MIC≦0.12のMSSA
・すべて微量液体希釈法でMIC≦0.06であった
・108株すべてblaZ陰性
→zone edge testの感度不明、特異度は100%
・結論:日本では追加検査不要かもしれない
・zone edge testは2人以上で判断している


8. J Antimicrob Chemother 2013; 68: 1894–1900
doi:10.1093/jac/dkt10
・PSSA菌血症
デンマークの観察研究、SABの20%はPSSA
・PCG vs dicloxacillin vs cefuroxime
・disc diffusion(EUCASTのzone edge test 1U) and cloverleaf test
・PCGとdiclxacillinは同等、cefuroximeは予後不良 30日死亡率
・PCGでmeningitisとIEの割合が多かった


9. Benzylpenicillin versus ßucloxacillin for penicillin susceptible Staphylococcus aureus bloodstream infections from a large retrospective cohort study
https://doi.org/10.1016/j.ijantimicag.2019.05.020
・PSSA菌血症の治療:フルクロキサシリンvsペニシリンGで後者が30日死亡率低い
・Vitek 2、nitrocefin test or penicillin disc (zone edge) test
 EUCASTとCLSIの記載はない
・オーストラリアとニュージーランドの観察研究