General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

嫌気性菌とモキシフロキサシン

嫌気性菌とモキシフロキサシン

 

 

★まとめ

・モキシフロキサシンのきちんとした臨床dataは、腹腔内感染症のみ

Bacteroides属の耐性率は10-30%以上である

・そのため、嫌気性菌の関与する感染症での使用には不安がある

・腹腔内感染症では、ABPC/SBTやCPFX+Metronidazoleを優先する

・モキシフロキサシンの利点は、1錠/日であること(のみ)

 

(1)薬剤感受性の判定方法

・CLSI:MFLX MIC≦2でS、4でI、≧8でR

・EUCAST:breakpointは設定されていない

 

(2)J Infect Chemother 2016:22:1-13  26620376

・in vitroで良好な感受性だが、臨床dataは少ない

 

(3)Clinical Infectious Diseases 2006; 42:1598–607 PMID;16652318

キノロンと嫌気性菌の総説

・moxiは、Bacteroides属とClostridium属の一部の菌種に耐性多い

Fusobacterium, Peptostreptococcus, Porphyromonas, Prevotellaには感受性良好 

Fusobacterium canefelinumの感受性は悪い→猫・犬咬傷では不適切

・moxiは歯科領域の感染症○、動物咬傷△

・腹腔内感染症、皮膚軟部組織感染症で使用可能 FDA

Bacteroides属のフルオロキノロン耐性増加が問題となっている

 

(4)マンデル249章(第8版)

・嫌気性グラム陰性桿菌

・moxiはGNRには良好な薬剤感受性

 Bacteroides, Prevotella, Porphyromonas, Fusobacterium で感受性OK

 

(5)Clin Infect Dis. 2010 Jan 15;50(2):133-64 PMID:20034345

・腹腔内感染症ガイドライン

・moxiの登場箇所

 軽症から中等度の市中発症の腹腔内感染症 単剤

 経口スイッチの選択肢:Cipro/Levo+Metro, A/C、経口セフェム+Metro

 Bacteroides属の耐性の懸念がある場合は使用しない

  Ex:3か月以内にキノロン治療をしている場合

 

(6)Antimicrob Agents Chemother. 2006;50(1):148-55

・moxiのin vitroでのヒトの腹腔内感染症から検出された嫌気性菌への感受性

・全体的には感受性は良好 83%

Bacetroides属では、B. fragilisであればOK 88%

 菌種によって、感受性は70%以下

×:B. uniformis, B. vulgatus, Clostridium clostridioforme, C. symbiosum

○:Fusobacterium nucleatum, Porphyromonas spp, Prevotella

  C. perfringens、Peptostreptococcus spp

 

(7)Ann Surg 2006;244: 204–211  PMID:16858182 

・Moxi(IV→PO)vs P/T→A/C

・複雑性腹腔内感染症虫垂炎、腹腔内膿瘍、消化管穿孔

 

(8)Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 2005;53:221–223

・マンデル249章で引用されている文献 PMID;16243476

Bacteroides属のmoxi耐性化が進んでいる

B. fragilis 1.5%→12%

B. thetaiotaomicron 10.3%→25%

B. uniformis 15.4%→36.8%

 

(9)Antimicrob Agents Chemother 2002;46(10):3276-9 PMID:12234859

Bacteroides属のMFLXモキシフロキサシン感受性は悪い(30%以上が耐性)