ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について -
ボリコナゾールによる副作用 - 特に脳症について -
★要点
・VRCZの副作用:
肝障害、視野障害、光毒性、皮膚悪性腫瘍のリスク上昇、不整脈(QT延長)
骨膜炎、幻覚、脳症、末梢神経障害、脱毛、爪の変形、低Na血症
・トラフ濃度が5-6 µg/mLを超えると増える副作用:肝障害、脳症、幻覚(主に幻視)
・脳症:トラフ濃度が5.5 µg/mL以上の場合に起こるとされる(31%)
・脳症の症状:
混乱、不穏、錐体外路症状、ミオクローヌス、幻覚・幻聴、緊張低下、不安
不眠、眼振、無力症、興奮性、集中力低下、構音障害などを呈する
※UpToDateの薬品説明には、coma 2%未満と記載あり
①ボリコナゾールの濃度と臨床効果や副作用についての後ろ向きの検討
:Am J Health-Syst Pharm. 2016; 73:(suppl 1):S14-21
・治療における適切な濃度:1-2 µg/mL以上、5-6 µg/mL 以下(この研究では1-5.5)
・予防における適切な濃度:data少ないが、1.5 µg/mL以上がよいかもしれない
・患者は88名、基礎疾患は血液悪性腫瘍40%、固形臓器移植23%
・ボリコナゾールの使用理由:肺炎60%、FN 14%、予防14%
・最初の血中濃度測定に適切な濃度であったのはわずか53%
・副作用
- 全体の41%で副作用あり:21%は脳症、8%は幻覚、視野関連7%、肝障害7%
- 適切な血中濃度を超えた場合、副作用は67%で認められた
→46%が脳症(ただしすべてがVRCZによるものとは限らない)、17%が幻覚
②ボリコナゾールの副作用についての総説
:Clin Transplant 2016;30:1377-1386
・commonなもの:肝障害、visual disturbance、phototoxicity(光毒性)
・肝障害 12.4-20%、リスクは既存の肝疾患、血中濃度高値
・visual disturbance(changes in color discrimination, blurred vision, bright spots. wavy lines, photophobia):19-30%、使用していると軽減・消失することが一般的
・光毒性は、1-2%という報告もあるし、10-20%というものもある
→日光を避けるように指導する
※注意点:治療を中止しても数か月持続することがある
・皮膚悪性腫瘍のリスクがある可能性
・不整脈、QT延長、アミオダロンとの併用は禁忌(日本では禁忌になっていない)
・骨膜炎(ボリコナゾールに含まれるフッ化物が原因と考えられている)
- 神経系の副作用は、全体の14%でみられる
- 視野障害:13.3%
- 16.6%が幻覚(ほとんどが幻視、幻聴もあり得る)
ほとんどが濃度5-6 µg/mL以上
濃度5 µg/mL以上:31%で幻覚、濃度5 µg/mL未満:1.2%、発症までの中央値4日間
- 脳症
濃度5.5 µg/mL以上で、31%で脳症発症、5.5 µg/mL未満だと脳症なし
症状:混乱、不穏、錐体外路症状、ミオクローヌス、幻覚・幻聴
緊張低下、不安、不眠、眼振、無力症、興奮性、集中力低下、構音障害
→脳症予防のため血中濃度は、2-5 µg/mLを推奨
・長期使用した場合に、末梢神経障害がみられることがある、中止によって回復する
:血中濃度は関係ない可能性がある
・脱毛:血中濃度と関連なし、中止することによって改善する
・爪の変化
・低Na血症(アジア人での報告のみ)
・血中濃度と関連する重要な副作用:肝障害、幻覚、脳症
③侵襲性真菌感染症の治療におけるVRCZの血中濃度測定は、効果と安全性を改善する
:Clinical Infectious Diseases 2008;46:201–11
・全体でN=52の観察研究
・主に血液悪性腫瘍患者を対象としている、全体の50%が侵襲性アスペルギルス症
・血中濃度が5.5 µg/mLを超えると、脳症が31%(5/16)で起こった
この5例では、昏睡やNCSEの報告はない
全例、休薬から2-5日後にcomplete resolutionとなった
3例でオメプラゾールと併用(おたがい血中濃度を上昇させうる:UpToDate)
4例は静注、1例だけ内服
・5.5 µg/mL以下では、神経系への副作用はみとめなかった