General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

2019-07-15から1日間の記事一覧

経口バンコマイシンの予防投与は、CDIの発症率を低下させなかった

【150日以内のCDI既往のある患者が入院して全身抗菌薬を投与された場合、経口バンコマイシンを同時に投与しても、90日以内のCDI発症は減少しなかった】 CDIと診断された後、150日内に入院して1回以上の抗菌薬投与が行われた患者を対象として、予防的経口バン…

“Double Tongue” Appearance in Ludwig’s Angina

NEJMのImages in Clinical Medicine Ludwig’s anginaのPicture。日本語では「口底蜂窩織炎」。 N Engl J Med. 2019;381(2):163 doi: 10.1056/NEJMicm1814117 PMID: 31291518 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1814117?url_ver=Z39.88-2003&rfr_…

HIV感染者の結核治療の総説

Management of active tuberculosis in adults with HIVLancet HIV. 2019;6(7):e463-e474doi: 10.1016/S2352-3018(19)30154-7.PMID: 31272663 重要な点 ・毎年約100万人のHIV患者が結核を発症している(全結核の9%を占める) ・結核は、HIV患者の主要な死因…

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある

カルバペネム系抗菌薬の使用量と緑膿菌の耐性率には関連がある。AUDやDOTが低いと耐性率は低くなる。適切な投与量で、必要なときだけ使用することが重要。日本からのdata。 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1341321X18302502?via%3D…

ICUでのカルバペネム系抗菌薬の処方が減ると、多剤耐性Acinetobacter感染症が減少する

ICUでカルバペネム系抗菌薬を制限して使用量を減らしたところ、多剤耐性アシネトバクターによる感染症が減少したことを示した後ろ向き研究。トルコから。 https://ann-clinmicrob.biomedcentral.com/articles/10.1186/1476-0711-13-7?fbclid=IwAR3zE9M9Vu8Xk…

formulary restrictionとpreauthorizationによって、ICUでのカルバペネム系抗菌薬の使用量が減少した

formulary restrictionと事前許可制(一定の条件を満たした場合のみカルバペネム系抗菌薬<メロペネム>が処方可能)によって、ICUにおけるカルバペネム系抗菌薬の使用量が減少したことを示した米国の観察研究。 この研究自体は、治療成績の変動や耐性菌の割…

ESCMIDによる新生児と小児における侵襲性アスペルギルス症診療ガイドライン

ガイドラインの紹介です。内容は、読んでからのお楽しみ。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1198743X19302824?fbclid=IwAR3mio51eDHNH5UalqX9QuAu6GaU7p6dDF4a1HfcqvgJJWdwZ6ztooaxDQU

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビュー

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビューです。 5つの最重要ポイント ・グラム陰性桿菌用の抗菌薬であるが、大腸菌などの耐性化が進んでいる。・唯一の抗緑膿菌活性のある経口抗菌薬であり、大切に使用する必要がある。・覚えるのは、シプロフロキサシン、レ…

感染症内科医の週1回の派遣でカルバペネム系抗菌薬の処方量が減少

週1回の感染症医の派遣によって、地域の病院のカルバペネム系抗菌薬処方量が減少し、血液培養採取や複数セット採取率の増加がみられた。患者予後はむしろ改善した。神戸大学と兵庫県立加古川医療センターでの観察研究。 この派遣されていた感染症内科医は、…

外来における不適切な抗菌薬処方とそれを減らす方策についてのレビュー

米国において、外来で処方される30-50%の抗菌薬は不適切な可能性がある。 医師が、不適切に抗菌薬を処方してしまうのは、知識の問題ではない(ほとんどの医師がウイルス感染症に抗菌薬が無効であることを知っている)。患者満足のため、「細菌感染症だったら…

MERSに対するリバビリンとインターフェロンの併用は効果なし

MERSへのribavirinとrecombinant interferonの治療効果を評価した後ろ向きコホート研究。ribavirin/rIFNで死亡率が高い結果となった。現在、ロピナビル-リトナビルとinterferon-β1bの併用治療の効果を評価するRCTが行われているのでその結果に期待(MIRACLE …

Nonbacterial Thrombotic Endocarditis

NEJMのIMAGES IN CLINICAL MEDICINE Nonbacterial Thrombotic Endocarditis非細菌性血栓性心内膜炎のclinical picture。原疾患は多発転移を伴う膵臓癌。NBTEの原因としては、進行した悪性腫瘍がTOP、SLEも有名。marantic endocarditis, Libman-Sacks endocar…

Colovesical Fistula

NEJMのIMAGES IN CLINICAL MEDICINE Colovesical Fistula(結腸膀胱廔) 動画が衝撃的(膀胱鏡の所見)。見なきゃ損! N Engl J Med 2019; 380:e51DOI: 10.1056/NEJMicm1900267 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1900267?fbclid=IwAR25ERfX1PWo…

Herpes Zoster Laryngitis with Disseminated Cutaneous Lesions

VZVによる急性喉頭炎と、その治療経過で出現した播種性帯状疱疹の症例 https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/advpub/0/advpub_2886-19/_article

蟯虫

NEJMのIMAGES IN CLINICAL MEDICINE 蟯虫のVideoを観ることができます。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1811156?fbclid=IwAR2J3DnLnt4HpcW2dRD2onXsd90AmWvr6d3ljHl1VuKs4TcArqu9XVoMAdE

セフェピムの神経毒性の頻度・血中濃度との関連・リスクについて

セフェピムのトラフ濃度と神経毒性の関連、セフェピムによる神経毒性のリスク因子を検討したスイスの後ろ向き研究。 セフェピムを投与されてトラフ濃度(投与前1時間以内)を測定された319名を対象とした。神経毒性(3回投与以降に出現したもの)は23.2%でみ…

カルバペネム系抗菌薬の使用量が増加すると、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌が増加する

カルバペネム系抗菌薬(ほとんどがメロペネム)の使用量(DOT:days of therapy)はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(MIC≧2mg/L)と関連があることが、シカゴにある3次施設で行われた観察研究で示された。 2006年から2010年に調査。この期間、カルバペネム使…

薬剤感受性試験結果の報告方法を変えただけでは、広域スペクトラムの抗菌薬の使用は減らない

微生物検査結果を報告する際に、薬剤感受性試験結果を限定して報告(selective antibiotic susceptibility reporting intervention:より狭域スペクトラムなβラクタム薬の効果があるグラム陰性桿菌に対して、広域スペクトラムのβラクタム系抗菌薬の感受性を…

E. faecalis IEの治療における、PCGとCTRXによる併用治療の可能性

Enterococcus faecalisによる感染性心内膜炎の治療として、アンピシリンとセフトリアキソンの併用治療がある。 しかし、アンピシリンは生理食塩水に溶解した場合、安定性に欠けるため、OPAT(外来での静注抗菌薬治療)では使用できない。ペニシリンGは、OPAT…

Enterococcus faecalis感染性心内膜炎の総説

要点です ・Enterococcus IEの97%は、E. faecalis・E. faecalisは、E. faeciumより高率にbiofilmを形成(90% vs 20%)・βラクタム系抗菌薬単剤は、E. faecalisに対して「殺菌的」効果がない・E. faecalis IEで、PCG or ABPC単剤治療を行うと、高率に治療失敗…

NEJM:Case 19-2019 数年にわたり発熱・腹部膨満・腹痛・下痢を繰り返してきた38歳女性

NEJM Case Records of the MGH 数年にわたり発熱・腹部膨満・腹痛・下痢を繰り返してきた38歳女性の症例。当初Crohn病と思われたが、ステロイド、インフリキシマブ、アダリムマブによる治療にも関わらず症状の再燃を繰り返した。果たして、診断は? 最終診断…

ミノサイクリンの薬物動態

前立腺の組織内濃度は、血清濃度の130%。膀胱での濃度は、血清濃度の78%。 よって、ミノサイクリンは前立腺炎を含めた尿路感染症で使用できる可能性が高い。 とても古い報告です(1973年発表)。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=4199710&fbclid=…

多剤耐性菌に対するミノサイクリン点滴静注について

重要な点 ・スペクトラム グラム陽性球菌(GPC): MSSA・MRSA(主に皮膚軟部組織感染症と肺炎で、RFPと併用されることが多い) CNS グラム陰性桿菌(GNR): Acinetobacter baumanii(VAP/HAP、血流感染、骨髄炎など) ただし、ほとんどの報告は、ABPC/SBT …

テトラサイクリン系抗菌薬のPK/PDの総説

重要な点 ・ミノサイクリンのbioavailabilityは95-100%・食事は吸収にほとんど影響しない・吸収は、鉄剤、CaやMgを含んだ制酸薬によって低下する・tissue/serum concentration ratio:膀胱・前立腺では2未満 https://academic.oup.com/jac/article/58/2/256/…

腸内細菌科細菌による尿路感染症におけるミノサイクリンの有用性について

ESBL産生E. coliによる腎盂腎炎や前立腺炎で、ST合剤とフルオロキノロン耐性で内服薬の選択肢がないが、ミノサイクリンだけ感受性あり、ということはありませんか??メロペネムまたはセフメタゾールで経過よく、外来治療に移行したい!そんな時どうしたらよ…

ceftarolineを長期使用する場合は、好中球減少に気をつける

ceftarolineの長期使用によってどの程度好中球減少が起こるか検討した観察研究。 7日以上のceftaroline(主に600mg 12時間おき)またはセフトリアキソン(CTRX、主に2g 24時間おき)を使用した感染症(血流感染症15%、骨・関節感染症64%、感染性心内膜炎9%、…

セフトリアキソンによるbiliary pseudolithiasisのリスク因子は、慢性腎臓病と女性

CTRXによる胆泥形成(biliary pseudolithiasis)のリスク因子を検討した後ろ向き観察研究。eGFR 60 mL/min未満と女性がリスク因子として同定された。虎の門病院からの報告。 CTRXは尿と胆汁から排泄される。胆のう内のCTRXは血中濃度の20-150倍となる。胆汁…