General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

セフトリアキソンによるbiliary pseudolithiasisのリスク因子は、慢性腎臓病と女性

CTRXによる胆泥形成(biliary pseudolithiasis)のリスク因子を検討した後ろ向き観察研究。eGFR 60 mL/min未満と女性がリスク因子として同定された。虎の門病院からの報告。


CTRXは尿と胆汁から排泄される。胆のう内のCTRXは血中濃度の20-150倍となる。胆汁中にCTRXが排泄されると、胆汁酸の排泄が阻害される(CTRXと競合するため)。それによって、Caイオンの濃度が上昇し、calcium-CTRX complexを形成するようになる。これがbiliary pseudolithiasisである。CTRXを終了すると、自然に改善する。


もともと小児で報告が多く(17-58%で出現するが、ほとんど無症候性と報告されている)、高用量での投与、長期間の使用、急速静注がリスク因子とされている。成人でも、報告によって20%以上でbiliary pseudolithiasis がみられる、というものもある(多くは無症候性である)。CTRXの排泄は、尿と胆汁(40%)の両方で行われる。そのため、腎障害によって尿中排泄が減少し、胆汁排泄が増加するため、CKDはbiliary pseudolithiasisのリスク因子と予想され、この報告で検証された。


CTRX使用した患者のうち、胆石・胆のう摘出術の既往のある患者を除外した478名で検討。biliary pseudolithiasisは全体の2.5%(12名)で指摘された。12名中11名は、eGFR 60未満であった(罹患率はCKD群と正常腎機能群で4.1% vs 0.6%)。4名は症状がなかった。CTRX投与開始からbiliary pseudolithiasis発見されるまでの中央値は12日。腹部の画像検査は、routineに施行されたわけではなく、腹痛や嘔吐などの腹部症状がでた場合や肝酵素の上昇がみられた場合に施行された。ほぼすべての症例でCTRX終了によって症状、血液検査異常は数日以内に正常化した。


解釈:後ろ向き研究、かつ、なんらかの適応があった時のみに画像検査を施行しているので。実際の発症率は不明(もっと高い可能性がある)。症候性は検出できている可能性が高いため、症候性のbiliary pseudolithiasisの発症は、慢性腎臓病(eGFR 60 mL/min未満)女性がリスク因子である可能性が高い。

 

https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10157-017-1493-7?fbclid=IwAR3ByuWj58GVCHAC1ptB3QZUYdUBUznP1H7pIfOWXjeUNHsbhNIacNbI61Y