経口バンコマイシンの予防投与は、CDIの発症率を低下させなかった
【150日以内のCDI既往のある患者が入院して全身抗菌薬を投与された場合、経口バンコマイシンを同時に投与しても、90日以内のCDI発症は減少しなかった】
CDIと診断された後、150日内に入院して1回以上の抗菌薬投与が行われた患者を対象として、予防的経口バンコマイシン投与群と非投与群の効果を後ろ向きに検討した観察研究。米国東海岸(Boston)で行われた。
VCM投与群(N=193、非投与群N=567で、合計760名)は、全身抗菌薬投与の前後1日以内にVCM内服が開始された。主要評価項目は、全身抗菌薬投与開始から90日以内に発症したCDI(トキシンまたはNAATで診断)。12か月以内のCDI罹患数は65-70%が1回のみ、30-35%が2回以上であった。全身抗菌薬投与期間(おそらく入院中の抗菌薬投与期間のこと)は、VCM投与群で5.99日、非投与群で5.41日、VCM投与期間の中央値は2.29日で、全身抗菌薬の全投与期間にVCMを投与したのは61%であった。
90日以内のCDI発症率は、両群とも10%弱で同等であった。CDIの既往が1回の場合は、90日以内のCDI発症率がわずかに低かった(8.47% vs 10.48%:P<0.05)。
【解釈】
後ろ向き研究であり交絡因子が取り除けていない可能性が高いこと、VCM予防内服期間が全身抗菌薬投与期間よりも短い患者が多かったこと、外来での経口抗菌薬投与期間が調査されていないこと、などのlimitationが多い研究である。
また、バンコマイシンの投与量の記載がなく、投与期間にもばらつきがある。CDIの既往が1回だけの場合は、経口バンコマイシンによる予防内服は多少効果がある可能性があるが、2回以上の既往がある場合は、その効果があまり期待できないと思われる。前向き無作為比較試験が望まれる。
【結論】
現段階では、予防的経口バンコマイシン投与は推奨されない。
Oral vancomycin prophylaxis during systemic antibiotic exposure to prevent Clostridiodes difficile infection relapses
Infect Control Hosp Epidemiol. 2019;40(6):662-667
doi: 10.1017/ice.2019.88
PMID: 31030679