General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

薬剤感受性試験結果の報告方法を変えただけでは、広域スペクトラムの抗菌薬の使用は減らない

微生物検査結果を報告する際に、薬剤感受性試験結果を限定して報告(selective antibiotic susceptibility reporting intervention:より狭域スペクトラムなβラクタム薬の効果があるグラム陰性桿菌に対して、広域スペクトラムのβラクタム系抗菌薬の感受性を報告しない、感受性のよいグラム陽性球菌に対して、グリコペプチド以外の抗MRSA薬の感受性を報告しない、など)したとしても、広域スペクトラムの抗菌薬の使用量(days of therapy per 1000 patient days)は減らなかった、という米国からの観察研究。

 

6つの病院で行われた多施設共同研究(241-665床の中規模の病院)。感受性試験結果の報告方法を変える前の8か月間と、後の8か月間で比較した。Primary outcomeは、院内発症または多剤耐性菌による感染症に対する広域スペクトラムの抗菌薬(抗緑膿菌活性のあるβラクタム薬・アミノグリコシドポリミキシン・チゲサイクリン)の使用量。Secondary outcomeは、各classの抗菌薬使用量。Primary outcomeとsecondary outcomeともに変化はなかった。


解釈:もともと広域スペクトラムの抗菌薬が適正に使用されているような病院であれば、差は出にくい。また、primary endpointは、もともと差がでにくい(院内発症の感染症で広域スペクトラムの抗菌薬が不要なケースは少ないと思われる)。Secondary outcomeである、カルバペネム系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬の使用量も変化がなかったことも踏まえると、感受性試験結果の方法を変える介入のみでは、抗菌薬適正使用を推進するのに不十分である可能性が高い。ASTによる前向き監査とフィードバック(Prospective Audit and Feedback: PAF)や、抗菌薬選択についての教育などと、組み合わせ行うことが重要と思われる。

 

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0924857919301645?via%3Dihub