General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

腸内細菌科細菌による尿路感染症におけるミノサイクリンの有用性について

ESBL産生E. coliによる腎盂腎炎や前立腺炎で、ST合剤とフルオロキノロン耐性で内服薬の選択肢がないが、ミノサイクリンだけ感受性あり、ということはありませんか??メロペネムまたはセフメタゾールで経過よく、外来治療に移行したい!そんな時どうしたらよいのでしょうか?

 

回答:移行性やスペクトラムから検討した場合、ミノサイクリンの内服へのスイッチは可能な可能性が高い。ただし、ミノサイクリンの臨床dataはかなり少ないので、慎重に経過をみる。そして、きっちりとdataをとる(将来のため)。


以下、重要な点です

・腸内細菌科細菌(主にE. coli)へのスペクトラムはある
・ただし、臨床dataが限定的であり、実際に使用されることは稀である
緑膿菌には効果がないが、Acinetobacter baumaniiに抗菌活性を持つ
・ミノサイクリンの有用性を検討した研究は、観察研究・case seriesである
・それらの報告は、主に、肺炎、血流感染症、皮膚軟部組織感染症を対象としている
・尿路感染症や骨髄炎の報告は少ない(しかし、存在はする)
・ESBL産生菌やKPC産生菌への効果を示したcase seriesがある
・尿路移行性を記載した報告は少ないが、血清濃度の約80%という報告があった
・ミノサイクリンは、尿中に約10%排泄される
・ミノサイクリンの前立腺移行性は良好である(血清濃度より高い)
・臨床dataには乏しいが、フルオロキノロンやST合剤に耐性の場合、急性腎盂腎炎・急性膀胱炎・急性前立腺炎の治療の選択肢となりうる

 

 

★文献
1. Clin Pharmacol Ther 1973;14(5):852-61
2. Am J Health-Syst Pharm 2016;73:279-85
3. J Antimicrob Chemother. 2006;58(2):256
4. Int J Urol 1998;5(3):243-6.
5. Clin Infect Dis 2010;50(12):1641-1652
6. Infect Dis Clin Pract 2014;22:26-31
7. Clin Infect Dis 2014;59(S6):S388–93
8. Minocycline: Drug information. UpToDate 2019.5 DL
9. Tetracyclines. UpToDate 2019.5 DL