General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

artemether-lumefantrine(リアメット)と非重症熱帯熱マラリア

【artemether-lumefantrineは、非流行地域からの旅行者の非重症熱帯熱マラリアでは治療失敗が多い可能性がある】

 

(1)効果

・流行地域での非重症熱帯熱マラリアに対する効果:98%以上(1, 2)

・再燃は1.9%だった

 

(2)非流行地域出身の旅行者におけるリアメットの治療失敗

1)日本人旅行者のcase seriesその1(3

・リアメットのみが使用された熱帯熱マラリア患者10名中2名で再燃を認めた

・推定された原因

 下痢・嘔吐などの消化器症状で吸収が低下

 同時に摂取すべき脂質量が不足していた

 原虫寄生率が高かった(再燃群4.05% vs 非再燃群 0.24%)

・再燃群では、原虫消失期間が長く、発熱期間も長い傾向にあった

2) 日本人旅行者のcase seriesその2(4

・28例中23例で治療成功→17.9%で治療失敗(非重症例での失敗率は16.7%)

・治療失敗の5例中1例は、食事摂取がなかったことが原因であった可能性がある

・治療失敗した日本人は体重が大きかった(72.6kg vs 61.8kg)

・non-immuneにおけるリアメットの効果は96%以上という報告がある

・その一方で、治療成功率が73.7%という報告もある(9)

3) スウェーデンからの後ろ向き研究(5

・非重症熱帯熱マラリアへのリアメットの治療効果は94.7%だった

・欧州人男性に限定すると、73.7%(14/19)であった

・lumefantrineの血中濃度は不十分であった症例は、測定された4例中2例だった

4) まとめ

・非流行地域出身の旅行者が非重症熱帯熱マラリアに罹患した場合治療失敗率が20%程度の可能性がある。食事摂取不良や高体重などに伴うlumefantrineの血中濃度が低いことが関与しているかもしれない。

 

 

 

参考文献

1. Efficacy of Artemether–Lumefantrine for Uncomplicated Plasmodium falciparum Malaria in Cruzeiro do Sul, Brazil, 2016
Am J Trop Med Hyg. 2018 Jan;98(1):88-94.
doi: 10.4269/ajtmh.17-0623
PMID: 29141762

2. Therapeutic efficacy of artemether-lumefantrine in the treatment of uncomplicated Plasmodium falciparum malaria in Ethiopia: a systematic review and meta-analysis.

Infect Dis Poverty. 2017 Nov 15;6(1):157.
doi: 10.1186/s40249-017-0372-5.
PMID: 29137664

3. アーテメター・ルメファントリン合剤の日本人における使用経験

感染症誌 2014;88:833-839

4. Retrospective observational study of the use of artemether-lumefantrine in the treatment of malaria in Japan.

Travel Med Infect Dis. 2018 Mar - Apr;22:40-45.

doi: 10.1016/j.tmaid.2018.02.003

PMID: 29454051

5. High Rate of Treatment Failures in Nonimmune Travelers Treated With Artemether-Lumefantrine for Uncomplicated Plasmodium falciparum Malaria in Sweden: Retrospective Comparative Analysis of Effectiveness and Case Series.

Clin Infect Dis. 2017 Jan 15;64(2):199-206.

doi: 10.1093/cid/ciw710

PMID: 27986683