General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

肝膿瘍の治療:経口抗菌薬へのスイッチは1週間では早すぎる

【肝膿瘍の静注抗菌薬治療は、1週間では短すぎる】

 

概要:肝膿瘍(ドレナージあり)の治療を退院時点から、内服に変更した群と、点滴治療を続けた群での、再入院率(治療失敗率などの複合outcome)を比較した後ろ向き観察研究。結論は、内服治療群で再入院が多かった(39.6% vs 17.6%)、という残念な結果でしたが、かなりデザインに問題のある研究でした。

 

内服治療群の入院期間が6日(つまりたったの6日間しか点滴抗菌薬治療が行われていない)、点滴治療群は9日間で、実際の臨床現場との乖離が大きいように感じました(通常、2-3週間程度は点滴抗菌薬を使用すると思います)。経験的治療は両群とも同等。外来治療は、内服群はLVFX+Metronidazoleが最多、点滴治療群はertapenemまたはCTRX+metronidazoleが多かったようです。また、合計の治療期間が、内服治療群で20日、点滴治療群で31日と、一般的に行われている4-6週間の治療よりも内服治療群の治療期間が明らかに短かった点も、今回の結果に影響している可能性が高いと思われます。また、内服治療群のアドヒアランスも治療成績に影響するかもしれません(アドヒアランスについての記載はないため、その調査はしていないと思われます)。

 

この研究から言えることは、点滴抗菌薬1週間では、治療失敗する可能性が高いので、それ以上の点滴治療(2週間なのか3週間なのか4週間なのかは不明)が必要である、ということだと思います。

 

 

 

Transition to oral versus continued intravenous antibiotics for patients with pyogenic liver abscesses: a retrospective analysis
Pharmacotherapy. 2019 Jul;39(7):734-740.
doi: 10.1002/phar.2296
PMID: 31148192

https://accpjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/phar.2296