General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間 その1

【複雑性SABの治療期間は、4週間以上がよい】

 

方法:「長期治療が必要な因子の存在」と「実際の治療期間」によってS. aureus bacteremia(SAB)の治療成績がどのように影響を受けるか前向きに検討した韓国の研究。長期間治療に関連する要素である持続菌血症(適切な治療にも関わらず7日以上血液培養が持続陽性)、遠隔病変、人工物、IEが存在する群をlonger antibiotic treatment warranted group(LW)して、これらの要素がない群をshorter antibiotic treatment sufficient group(SS)とした。Poor outcomeの定義は、90日以内の死亡、または、治療終了から30日以内の再燃。抗菌薬投与期間は、LWでは28日以上と28日未満、SSでは14日以上と14日未満に分類して検討した。持続菌血症における抗菌薬投与期間は、血液培養陰性確認日からカウントした。

 

結果:2098名のSAB患者のうち、1866名でoutcomeが検討された(7日以内の死亡例と再発例を除外)。90日死亡率は、LW群とSS群で差はなかった。LW群で再燃率とpoor outcome率(21.7% vs17.7%)は、SS群と比べて高かった。多変量解析(SAB全体、LW群のみ、SS群のみ)で、65歳以上、肺炎、SOFA score高値、慢性肝疾患が、poor outcomeと関連した。メチシリン耐性は予後と関連はなかった。LW群では、28日未満の治療がpoor outcomeに関連したが、SSでは治療期間とpoor outcomeの関連は見られなかった。持続菌血症の期間を7日から4日間に変更した場合でも、結果は変わらなかった。

 

Limitation:観察研究である。抗菌薬の種類、投与経路が検討されていない。14または28日未満の群、14または28日以上の群の、実際の治療期間の中央値または平均値が記載されていない。治療期間の差によって検討しているのは、poor outcome(死亡率+再燃率)であり、死亡率のみの比較をしていない。

 

結論:複雑性SABの治療期間は4週間以上のほうが予後がよい(今までの標準的なpracticeと同様)。非複雑性SABの治療期間は、2週間でよいが、どこまで短縮できるかは、はっきりしない。

 

 

 

Impact of antimicrobial treatment duration on outcome of Staphylococcus aureus bacteraemia: a cohort study
Clin Microbiol Infect. 2019 Jun;25(6):723-732.
doi: 10.1016/j.cmi.2018.09.018
PMID: 30287412

https://www.clinicalmicrobiologyandinfection.com/article/S1198-743X(18)30640-2/fulltext