General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

妊婦の梅毒と先天梅毒

【妊婦の梅毒と先天梅毒】

 

(1)妊婦の梅毒における垂直感染(UpToDate

T. pallidumは、胎盤に感染する。胎盤経由の胎児への感染は、妊娠第9-10週から起こりうる(それ以降であれば、どのタイミングでも感染は起こる)。先天的な感染は、妊娠週数、母体の梅毒の状態、母体の治療、胎児における免疫反応に影響される。胎児の異常は、T. pallidumに対する炎症反応からくる。そのため、免疫反応が出てくる妊娠20週以降で、胎児の異常が目立つ。胎盤感染→胎児循環にスピロヘータが入り、肝臓に感染する。その後、羊水に感染、貧血や血小板減少の血液学的異常、腹水、胎児水腫、が出現する。肝腫大は、炎症、髄外性造血、肝うっ血によるものと考えられている。新生児は、出産時に、母体からの分泌物や血液から感染しうる。母乳からは感染しない。乳房に皮膚病変がある場合は、そこから感染する可能性がある。

 

(2)母体の梅毒を治療していない場合の胎児への感染率

・1期・2期梅毒:50%

・早期潜伏梅毒:40%

・後期潜伏梅毒:10%未満

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM195207102470203?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=1091383

 

(3)妊婦の梅毒スクリーニング+抗菌薬で、先天梅毒はほとんど予防可能

・妊婦の最初の受診

・high risk患者:妊娠28-32週と出産時(CDCの推奨)

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2724373

・妊婦の梅毒をペニシリンで治療すると先天梅毒は97%減少する

・胎児時死亡+死産 82%減少、早産・低出生体重児 65%減少、新生児死亡 80%減少

https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2458-11-S3-S9

 

(4)妊婦の梅毒に対する治療後に新生児に先天梅毒が発症するリスク

・症例対照研究では、以下がリスクとされた

治療開始時点または出産時点でのnontreponemal test高値

36週以内の出産

早期梅毒(1期、2期、早期潜伏期:感染から1年以内)

治療と出産までの期間が30日以内

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0002937802397710?via%3Dihub

 

(5)妊婦と胎児の梅毒の治療(UpToDate

・母体へのペニシリン治療で、ほとんどの胎児の感染は治療可能である

・通常の治療と同様:ベンザチンペニシリンG筋注 1-3回

・おそらくアモキシシリンの研究はないと思われる

・神経梅毒の場合は、PCG 2400万単位/日 10-14日