General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する

【抗菌薬適正使用支援チームの介入によって、治療成績への悪影響なしで、市中肺炎の治療期間が短縮する】

 

市中肺炎の診療に対するmultifaceted CAP-focused stewardship施行前後の市中肺炎の治療期間を比較した多施設観察研究。米国からの報告。

 

対象は18歳以上の市中肺炎で入院となった患者で、膿胸・壊死性肺炎・菌血症・ICU入室例・嚢胞性線維症緑膿菌性肺炎・黄色ブドウ球菌性肺炎は除外された。主要評価項目は、市中肺炎の治療期間(入院治療+外来治療)。副次評価項目は、退院後30日以内の死亡率・再入院率・CDI発症率。

 

Stewardship intervention:院内の市中肺炎ガイドラインの改訂(治療期間についての記載を追加)し、ポケットガイドとして配布、イントラネットでいつでも閲覧可能とした。介入期間に入る前に、職員向けに講義を複数回実施した。また、介入期間に、前向き監査とfeedbackを実施した。AST(抗菌薬適正使用チーム)の薬剤師は、担当チームに対して、患者を個々に評価した上で直接口頭で治療期間を推奨した。

 

結果:600名が研究に参加し307名がhistorical control、293名が介入群。両群はほぼ同等。介入群で慢性肺疾患と心筋梗塞が多く、介入群でステロイド使用患者が多かった。有意な差はなかったが、介入群のほうがCharlson comorbidity indexは高い傾向であった。治療期間は、介入群で6日、control群で9日で、有意に介入群で短かった。退院後30日以内の死亡率は介入群で1%、control群で2.3%であった。その他の副次評価項目も同等の結果であった。

 

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解釈:各患者への前向き監査とfeedbackに、ガイドラインの整備と教育(講義)を組み合わせることによって、市中肺炎の治療期間は適正化され、抗菌薬投与期間が短縮される。また、その介入によって、死亡率や再入院率は増加しなかった。

 

Limitation:ICU入室患者や肺炎合併症患者を除外しているため、中等症までの市中肺炎のみに、上記結果は当てはめることができる。

 

【結論】

ASTによる診療支援(前向き監査とfeedback≒併診、ガイドラインの整備、教育)によって、市中肺炎の治療期間が適正化され、抗菌薬投与期間が短縮する。短縮したことによって、死亡率や再入院率は上昇しない。

 

 

A multicentre stewardship initiative to decrease excessive duration of antibiotic therapy for the treatment of community-acquired pneumonia
Antimicrob Chemother 2018; 73: 1402–1407
doi:10.1093/jac/dky021
PMID: 29462306

https://academic.oup.com/jac/article/73/5/1402/4866116