General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

PIPC/TAZとVCMの併用によるAKIは、肥満患者でリスクが高い可能性がある

【体重91kg以上の場合、PIPC/TAZ+VCMによるAKI発症リスクが高い可能性がある】

 

後ろ向きコホート研究。単施設。PIPC/TAZ+VCMを48時間以上投与された患者を対象とした。baselineのCCr<30は除外した。肥満(91kg以上)と非肥満(91kg未満)で比較した場合、肥満群で、糖尿病、高血圧、心不全が多かった。腎機能は両群とも同等。VCMの投与量は、肥満群で有意に多かったが、体重当たりの投与量は肥満群で有意に少なかった。trough濃度についての記載はない。肥満群で、AKIが少なかった(24% vs 18%)。AKI発症の関連した因子は、体重91kg以上、併用治療期間、80歳以上、その他の腎毒性のある薬剤の使用。

 

解釈:観察研究であり、biasは排除できない。肥満が原因というより、肥満患者の基礎疾患が多いことが影響している可能性がある。また、肥満患者では、trough濃度が適切のcontrolできていなかった可能性もある。また、日本人で体重が91kg以上ある患者は少ないため、この研究を当てはめることができるsettingは限られている。

 

結論:質が低く、日本で適応できる状況は少ないが、肥満患者にPIPC/TAZ+VCMを行う場合は、特に注意して経過をみる(肥満者でなくても注意して経過をみる必要がある)。

 

 

Impact of total body weight on rate of acute kidney injury in patients treated with piperacillin–tazobactam and vancomycin
Am J Health Syst Pharm. 2019 Aug 1;76(16):1211-1217.
doi: 10.1093/ajhp/zxz120
PMID: 31369116

https://academic.oup.com/ajhp/article-abstract/76/16/1211/5542364?redirectedFrom=fulltext