General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

抗菌薬

S. aureus菌血症に対するPIPC/TAZは治療効果が低い可能性がある

【S. aureus菌血症に対するPIPC/TAZは治療効果が低い可能性がある】 【内容】 MSSA菌血症の治療を、全「入院」期間piperacillin/tazobactam(PIPC/TAZ)で行うと、ナフシリン/オキサシリン/セファゾリンで治療した場合に比べて、30日死亡率が高いことを示し…

非重症市中肺炎をセフトリアキソンで治療する場合、1g 24時間おきでよい

【非重症市中肺炎をセフトリアキソンで治療する場合、1g 24時間おきでよい】 内容:市中肺炎におけるセフトリアキソンの投与量の検討。1g 24時間おきでよい可能性が高いという結論。市中肺炎の治療のRCT(CTRXとその他の薬剤の治療効果を比較したもの)を集…

ペニシリン感受性S. aureus菌血症の治療は、ペニシリンGを選択する

【ペニシリン感受性S. aureus菌血症は、flucloxacillinよりペニシリンGのほうが治療成績がよい可能性がある】 【内容】オーストラリアとニュージーランドで行われた観察研究。ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌(PSSA)による血流感染症(915例)の標的治療(d…

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖

ピボキシル基含有抗菌薬の服用に関連した低カルニチン血症と低血糖 ピボキシル基含有抗菌薬 ・セフカペン・ピボキシル(フロモックス) ・セフジトレン・ピボキシル(メイアクト) ・セフテラム・ピボキシル(トミロン) ・テビペネム・ピボキシル(オラペネ…

メトロニダゾールmetronidazoleによる末梢神経障害のリスク因子

メトロニダゾールによる末梢神経障害を調査した研究。 42g以上の使用と4週間以上の使用が、末梢神経障害発症に関連した。多くの場合、治療終了後に(2週間以上から数年の経過で)改善するが、不可逆的なケースもある。 Clinical relevance of metronidazole …

MRSA肺炎の治療:バンコマイシンとリネゾリド以外の選択肢は?

【MRSA肺炎の治療で、VCM/LZDが使用できない場合は、ST合剤→CLDM→Mino】 MRSA肺炎におけるST合剤、CLDM、Doxy、Minoの治療効果についての総説。 ST合剤は比較的研究されているが、2つのRCTでは、標準治療(VCM、LZD)より劣っている可能性が示されている。観…

新しいバンコマイシンのTDMガイドラインの概要(public comment募集前のdraft)

先日先輩に教えていただいたバンコマイシンの新しいTDMガイドラインのドラフトの推奨部分を、意訳して、まとめてみました。 まず重要な点です ・目標とする指標は、成人・小児ともにAUC/MIC 400-600(基本的にMIC=1) ・この目標値は、年齢、腎機能、肥満の…

血液培養陽性例における原因菌同定と薬剤感受性試験結果が早く出ることによってどのような効果が得られるか?

【前提条件として、MALDI TOF MSの導入と充実したASPが存在する場合、血液培養陽性例でADXより早期に同定・薬剤感受性結果が出ても予後は改善しない】 血液培養陽性例におけるAccelerate Pheno system(ADX)の導入の効果を検討した観察研究。ADXによって、9…

S. aureus菌血症の治療における経口リネゾリドの役割

【非複雑性S. aureus菌血症の治療において、1週間の静注抗菌薬治療後に、経口リネゾリドに変更して治療すると、治療効果は低下せず、入院期間が短縮する可能性がある】 概要:合併症low riskのS. aureus菌血症の治療において、治療開始3-9日から治療終了まで…

MSSA菌血症におけるセファゾリンvs黄色ブドウ球菌用ペニシリンのmeta 解析

【MSSA菌血症の治療で、セファゾリンは黄色ブドウ球菌用ペニシリンより優れている可能性がある】 方法:MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)感染症(主にMSSA菌血症)におけるセファゾリンと黄色ブドウ球菌用ペニシリンの効果を比較したmeta解析。primar…

腸内細菌科細菌による血流感染症で早期にde-escalationするとCDIが減少する

【腸内細菌科細菌による血流感染症の治療において、抗緑膿菌活性のある抗菌薬を早期de-escalationすることによってCDIのリスクが減少する】 要旨:腸内細菌科細菌菌血症に対して48時間以上抗緑膿菌活性のあるβラクタム系抗菌薬を投与された入院患者は、48時…

PIPC/TAZとVCMの併用によるAKIは、肥満患者でリスクが高い可能性がある

【体重91kg以上の場合、PIPC/TAZ+VCMによるAKI発症リスクが高い可能性がある】 後ろ向きコホート研究。単施設。PIPC/TAZ+VCMを48時間以上投与された患者を対象とした。baselineのCCr<30は除外した。肥満(91kg以上)と非肥満(91kg未満)で比較した場合、肥…

バンコマイシンによる血小板減少の既往がある場合、再投与時は高度の血小板減少に注意する

【バンコマイシンによる血小板減少の既往がある場合、再投与時は高度の血小板減少に注意する】 内容:バンコマイシンの投与によって血小板減少の既往のある患者に対するバンコマイシンの再投与で、1日で血小板が3000 /µLまで低下、輸血を必要とする消化管出…

体格によってバンコマイシンの投与量を調整する必要がある

【日本人の肥満患者に対するバンコマイシンの1回投与量は、15mg/kgでは多い可能性がある】 方法:バンコマイシンの至適投与量と体格の関連を検討した観察研究。やせ型(BMI<18.5)、標準型、肥満型(BMI≧25)に分類して、バンコマイシンの至適投与量を後ろ…

肥満患者におけるダプトマイシン投与量

【肥満患者におけるダプトマイシン投与量は、実体重が基本だが、「調整体重」を使用してもよいかもしれない】 背景:FDAの推奨しているダプトマイシンの投与量は、実体重を使用したものであるが、肥満患者におけるdataは限られている。調整体重(adjusted bo…

緑膿菌菌血症の標的治療は、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムで治療成績に差はない

【緑膿菌菌血症の標的治療において、セフタジジム、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタムの治療成績は同等であった】 767名のβラクタム系抗菌薬単剤で治療された緑膿菌菌血症の患者を対象として、使用抗菌薬別の30日死亡率を検討した後ろ向きコホート研…

フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない

【フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」の改訂だけでは、処方行動に影響はあまり与えない】 FDAが2016年にすべてのフルオロキノロン系抗菌薬の添付文書の「警告」に不可逆的な副作用について追記した。米国の家庭医への影響を調査した観察研究。 「…

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切!?

外来診療で処方されるフルオロキノロンの約90%が不適切であったという観察研究。特に尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)、気管支炎・副鼻腔炎・肺炎で多かった。 Inappropriate Fluoroquinolone Use in Academic and Non-academic Primary Care Clinics.J Gen I…

ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療(CMIのNarrative review)

【ESBL産生腸内細菌科細菌による感染症の治療についての総説】 Current options for the treatment of infections due to extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in different groups of patients(Clin Microbiol Infect. 2019;25…

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビュー

フルオロキノロン系抗菌薬のミニレビューです。 5つの最重要ポイント ・グラム陰性桿菌用の抗菌薬であるが、大腸菌などの耐性化が進んでいる。・唯一の抗緑膿菌活性のある経口抗菌薬であり、大切に使用する必要がある。・覚えるのは、シプロフロキサシン、レ…

セフェピムの神経毒性の頻度・血中濃度との関連・リスクについて

セフェピムのトラフ濃度と神経毒性の関連、セフェピムによる神経毒性のリスク因子を検討したスイスの後ろ向き研究。 セフェピムを投与されてトラフ濃度(投与前1時間以内)を測定された319名を対象とした。神経毒性(3回投与以降に出現したもの)は23.2%でみ…

E. faecalis IEの治療における、PCGとCTRXによる併用治療の可能性

Enterococcus faecalisによる感染性心内膜炎の治療として、アンピシリンとセフトリアキソンの併用治療がある。 しかし、アンピシリンは生理食塩水に溶解した場合、安定性に欠けるため、OPAT(外来での静注抗菌薬治療)では使用できない。ペニシリンGは、OPAT…

ミノサイクリンの薬物動態

前立腺の組織内濃度は、血清濃度の130%。膀胱での濃度は、血清濃度の78%。 よって、ミノサイクリンは前立腺炎を含めた尿路感染症で使用できる可能性が高い。 とても古い報告です(1973年発表)。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=4199710&fbclid=…

多剤耐性菌に対するミノサイクリン点滴静注について

重要な点 ・スペクトラム グラム陽性球菌(GPC): MSSA・MRSA(主に皮膚軟部組織感染症と肺炎で、RFPと併用されることが多い) CNS グラム陰性桿菌(GNR): Acinetobacter baumanii(VAP/HAP、血流感染、骨髄炎など) ただし、ほとんどの報告は、ABPC/SBT …

テトラサイクリン系抗菌薬のPK/PDの総説

重要な点 ・ミノサイクリンのbioavailabilityは95-100%・食事は吸収にほとんど影響しない・吸収は、鉄剤、CaやMgを含んだ制酸薬によって低下する・tissue/serum concentration ratio:膀胱・前立腺では2未満 https://academic.oup.com/jac/article/58/2/256/…

腸内細菌科細菌による尿路感染症におけるミノサイクリンの有用性について

ESBL産生E. coliによる腎盂腎炎や前立腺炎で、ST合剤とフルオロキノロン耐性で内服薬の選択肢がないが、ミノサイクリンだけ感受性あり、ということはありませんか??メロペネムまたはセフメタゾールで経過よく、外来治療に移行したい!そんな時どうしたらよ…

ceftarolineを長期使用する場合は、好中球減少に気をつける

ceftarolineの長期使用によってどの程度好中球減少が起こるか検討した観察研究。 7日以上のceftaroline(主に600mg 12時間おき)またはセフトリアキソン(CTRX、主に2g 24時間おき)を使用した感染症(血流感染症15%、骨・関節感染症64%、感染性心内膜炎9%、…

セフトリアキソンによるbiliary pseudolithiasisのリスク因子は、慢性腎臓病と女性

CTRXによる胆泥形成(biliary pseudolithiasis)のリスク因子を検討した後ろ向き観察研究。eGFR 60 mL/min未満と女性がリスク因子として同定された。虎の門病院からの報告。 CTRXは尿と胆汁から排泄される。胆のう内のCTRXは血中濃度の20-150倍となる。胆汁…