General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

熊本県における経口抗菌薬処方の実態 2012-2013

熊本県国民健康保険または後期高齢者医療制度の受給者の2012-2013年のデータベースを使用して、経口抗菌薬の処方パターンを調査し、抗菌薬処方に関連した因子を同定するための後ろ向きコホート研究。

 

処方された経口抗菌薬は、第3世代セファロスポリン35%、マクロライド32%、フルオロキノロン21%で、この3種類で約90%を占めていた。処方対象は、ウイルス性気道感染症(おそらく≒感冒)22%、急性咽頭炎18%、急性気管支炎11%、急性副鼻腔炎10%で、急性気道感染症が約60%を占めていた。急性胃腸炎9%、尿路感染症8%、皮膚・粘膜の感染症5%。各疾患で抗菌薬が処方された割合は、感冒35%、急性咽頭炎54%、急性気管支炎53%、急性副鼻腔炎57%、急性胃腸炎30%であった。急性気道感染症、急性胃腸炎、年齢(特に10-19歳、高齢者と比較して)、男性、小規模な医療機関、が抗菌薬処方増加と関連があった。

 

【結論】

日本の外来診療(特に小さい医療機関)では、第3世代セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロンなどの広域スペクトラム抗菌薬が、抗菌薬適応のないウイルス感染症に多く処方されている現状がある。また、抗菌薬が必要な病態に対して、アモキシシリンなどの狭域スペクトラムで治療可能である疾患に対して、広域スペクトラム抗菌薬が使用されている現状もある。

そのため、急性気道感染症における抗菌薬の適応適応となった場合の抗菌薬の選択、について周知していくことが、今後AMR対策を進めていくにあたって、非常に重要である。

 

 

Antibiotic prescription among outpatients in a prefecture of Japan, 2012–2013: a retrospective claims database study
BMJ Open. 2019 Apr 3;9(4):e026251.
doi: 10.1136/bmjopen-2018-026251
PMID: 30948598

https://bmjopen.bmj.com/content/9/4/e026251.long