General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

Candidaによる膿胸 その4

【悪性腫瘍患者における真菌性膿胸のcase series】

 

・後ろ向き研究、2005-2013年

・対象:18歳以上で基礎疾患に悪性腫瘍、滲出性胸水から真菌が検出

・患者の特徴

 - 97名の患者の胸水から106株の真菌が検出された

 - 年齢中央値63歳、固形癌69%

 - 症状:呼吸困難78%、咳44%、発熱27%

   注:発熱を呈している患者の割合が少ない→contaminationが含まれている可能性

・proven or probable invasive fungal infection(EORT/MSG):全体で88%(86例)

・微生物

 - 全体(106株):酵母62%(66株)、糸状菌38%(40株)

   - Candida属58%(C. albicans、C. glabrata、C. tropicalisなど)

   - Aspergillus属12%

 - 細菌性膿胸の合併24例(24/97=24.7%):α-Streptococci, E. faecalis, CNS, E. coli

・CandidaとAspergillusの比較など

 - Candidaでproven IFI:45/54=83%(患者数で計算、Candida株数は61株のはず)

 - AspergillusでProven IFI:11/11=100%

 - Candida膿胸は、Aspergillus属と比較して、最近の腹部or胸部外科処置と関連した

 - Candida膿胸患者の37%は、発症前4週間以内に気道でのcolonizationが確認された

 - 死亡率は、Candida 31%、Aspergillus 45%で、統計学的な有意差はなかった

 - Candida群で、54名中12名は抗真菌薬投与されなかったが死亡例は1名のみ

  →12名のうち何名がproven IFIを満たしていたか記載なし

       →これらの患者は、contaminationだった可能性がある

・結論

 - 悪性腫瘍患者の真菌性膿胸の原因は、Candida属とAspergillus属が多い

 - 最近の腹部または胸部外科手術歴は、Candida膿胸のリスクである

 

・limitation:後ろ向き研究。sample sizeが小さい。感染を起こしているかどうかの基準が、これまでの研究と異なる。Proven IFIのみで検討していないため、おそらくcontaminationを含んだ解析になっている。これまでの研究よりCandida膿胸の死亡率が低いが、Candida血症合併率が低いこと(この報告では2例のみ)、細菌感染症合併率が低いことや、contamination率が高いことが影響している可能性がある。

 

 

 

Fungal Empyema Thoracis in Cancer Patients
J Infect. 2016 May;72(5):615-21
doi: 10.1016/j.jinf.2016.02.014
PMID: 26945845

https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(16)00077-3/fulltext