General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

COVID-19へのヒドロキシクロロキンの効果を検討した研究

COVID-19へのヒドロキシクロロキンの効果を検討した研究

 

重要な点

・各研究のlimitationは多いが、効果は期待できない可能性が高い

・アジスロマイシンと併用すると、QT延長・心停止が増加する可能性がある

 

1. Hydroxychloroquine in patients with mainly mild to moderate coronavirus disease 2019: open label, randomised controlled trial. BMJ 2020;369:m1849. http://dx.doi.org/10.1136/bmj.m1849.

https://www.bmj.com/content/369/bmj.m1849

中国で行われたCOVID-19患者(軽症または中等症)に対するヒドロキシクロロキン(HCQ:1200mg/日を3日間、その後800mg/日、合計2週間)の効果を検討した多施設オープンラベル無作為比較試験。標準治療 vs 標準治療+HCQ。治治療成績(無作為化から28日以内のPCR陰性化率、PCR陰性化するまでの期間など)に差はなかった。ただし、発症から16.6日目から治療が開始されている、無作為化の前に60%の患者が別の治療を受けている。HCQ群で下痢が10%で認められた。重症例はほとんど含まれなかったので検討されていない。

 

2. Clinical efficacy of hydroxychloroquine in patients with covid-19 pneumonia who require oxygen: observational comparative study using routine care data. BMJ 2020;369:m1844. doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m1844.

https://www.bmj.com/content/369/bmj.m1844

酸素投与(経鼻カニュラorマスク)が必要なCOVID-19入院患者(致命率約10%)に対するヒロドキシクロロキン(入院48時間以内に600mg/日を開始)の効果を検討したフランスの観察研究。ヒロドロキシクロロキンの効果(入院後21日までのICU入室なしの生存率の改善)は認められなかった。投与は発症から10日以内が大半を占めていた。

 

3. Observational Study of Hydroxychloroquine in Hospitalized Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2020 May 7. doi: 10.1056/NEJMoa2012410.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2012410

入院しているCOVID-19患者へのヒドロキシクロロキン(初日600mg×2/日、その後400mg/日 合計5日程度)の効果を検討した米国の大規模観察研究(N=1376)。来院から48時間以内に85.9%の患者で投与開始された。Primary endpointは、挿管+死亡で、ヒドロキシクロロキンに有意な効果は認められなかった。

 

4. Association of Treatment With Hydroxychloroquine or Azithromycin With In-Hospital Mortality in Patients With COVID-19 in NewYork State. JAMA. 2020 May 11. doi: 10.1001/jama.2020.8630.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766117

入院しているCOVID-19患者(全体の致命率20%の患者群)に対するヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用の効果(院内死亡の減少)を検討した米国の多施設観察研究。全院内死亡はHCQ+AZM、HCQのみ、AZMのみ、どちらもなし、の4群で同等だった。心停止とQT延長増加は、併用群で有意に多かった。ただし、併用群は重症例が多かった。