General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

COVID-19時代の気管支鏡検査についてのガイダンス

COVID-19時代の気管支鏡検査についてのガイダンス

The Use of Bronchoscopy During the COVID-19 Pandemic. CHEST/AABIP Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2020 May 1. pii: S0012-3692(20)30850-3. doi: 10.1016/j.chest.2020.04.036.

https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(20)30850-3/fulltext

 

(1)COVID-19疑い患者or確定患者ではN95マスク使用する(N95マスクは検査後破棄する)。

 

(2)COVID-19診断のための気道検体は、まず鼻咽頭検体の採取を優先する。重症または進行性で気管挿管が必要な状況では、COVID-19の診断または他の疾患の診断のために必要な場合、下気道検体(気道吸引物、BALF)を採取する。

 

(3)COVID-19が流行している地域では、無症状の患者に気管支鏡検査を施行時、サージカルマスクではなく、N95マスクを使用する(asymptomatic and pre-symptomatic transmissionが危惧されるから)。フェイスシールド・ガウン・手袋も着用する。

 

(4)無症状の患者の検査前にCOVID-19のための診断的検査を行う(あくまで"suggest":community transmissionのある場合→定義の記載なし)。この推奨についてのevidenceは存在しない。また、検査するかどうかは、その施設・地域での検査のavailability次第である。PCR検査陰性の場合、推奨3に従う。陽性の場合は、すべての非緊急の検査は延期する。

 

(5)COVID-19の流行地域であったとしても、肺癌の診断のための検査はtimelyかつ安全に行うべきである。

 

(6)COVID-19から回復した患者で気管支鏡検査が必要な場合、検査のタイミングは、検査の適応・COVID-19の重症度・症状改善からの期間に基づいて決定する。安全で最適な検査施行のタイミングはわかっていないが、目安として症状改善かつPCR 2回陰性確認から30日以上経過した状態での施行は理にかなっていると思われる(base-by-case)。

COVID-19へのヒドロキシクロロキンの効果を検討した研究

COVID-19へのヒドロキシクロロキンの効果を検討した研究

 

重要な点

・各研究のlimitationは多いが、効果は期待できない可能性が高い

・アジスロマイシンと併用すると、QT延長・心停止が増加する可能性がある

 

1. Hydroxychloroquine in patients with mainly mild to moderate coronavirus disease 2019: open label, randomised controlled trial. BMJ 2020;369:m1849. http://dx.doi.org/10.1136/bmj.m1849.

https://www.bmj.com/content/369/bmj.m1849

中国で行われたCOVID-19患者(軽症または中等症)に対するヒドロキシクロロキン(HCQ:1200mg/日を3日間、その後800mg/日、合計2週間)の効果を検討した多施設オープンラベル無作為比較試験。標準治療 vs 標準治療+HCQ。治治療成績(無作為化から28日以内のPCR陰性化率、PCR陰性化するまでの期間など)に差はなかった。ただし、発症から16.6日目から治療が開始されている、無作為化の前に60%の患者が別の治療を受けている。HCQ群で下痢が10%で認められた。重症例はほとんど含まれなかったので検討されていない。

 

2. Clinical efficacy of hydroxychloroquine in patients with covid-19 pneumonia who require oxygen: observational comparative study using routine care data. BMJ 2020;369:m1844. doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m1844.

https://www.bmj.com/content/369/bmj.m1844

酸素投与(経鼻カニュラorマスク)が必要なCOVID-19入院患者(致命率約10%)に対するヒロドキシクロロキン(入院48時間以内に600mg/日を開始)の効果を検討したフランスの観察研究。ヒロドロキシクロロキンの効果(入院後21日までのICU入室なしの生存率の改善)は認められなかった。投与は発症から10日以内が大半を占めていた。

 

3. Observational Study of Hydroxychloroquine in Hospitalized Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2020 May 7. doi: 10.1056/NEJMoa2012410.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2012410

入院しているCOVID-19患者へのヒドロキシクロロキン(初日600mg×2/日、その後400mg/日 合計5日程度)の効果を検討した米国の大規模観察研究(N=1376)。来院から48時間以内に85.9%の患者で投与開始された。Primary endpointは、挿管+死亡で、ヒドロキシクロロキンに有意な効果は認められなかった。

 

4. Association of Treatment With Hydroxychloroquine or Azithromycin With In-Hospital Mortality in Patients With COVID-19 in NewYork State. JAMA. 2020 May 11. doi: 10.1001/jama.2020.8630.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766117

入院しているCOVID-19患者(全体の致命率20%の患者群)に対するヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用の効果(院内死亡の減少)を検討した米国の多施設観察研究。全院内死亡はHCQ+AZM、HCQのみ、AZMのみ、どちらもなし、の4群で同等だった。心停止とQT延長増加は、併用群で有意に多かった。ただし、併用群は重症例が多かった。

SARS-CoV-2の感染性について検討した報告のまとめ

SARS-CoV-2の感染性について検討した報告のまとめ

2020.5.12作成

 

まとめ

 COVID-19の感染性のある期間を検討した6つの重要文献。感染伝播は、発症2-4日前(気道検体のウイルス培養が発症6日前に陽性となった報告もある)から発症後5-10日目までの曝露者に起こる。それ以降に感染伝播が起こる可能性は非常に低い。小規模な研究が多いため、現時点で、かなりの安全域を持たせた現在の感染対策の終了基準(PCR 2回陰性確認)が変わることはないと思われるが、今後の大規模な研究結果によって、変更されるかもしれない。

 

1. Clinical and virologic characteristics of the first 12 patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19) in the United States. Nat Med. 2020 Apr 23. doi: 10.1038/s41591-020-0877-5

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0877-5

重症COVID-19(気管挿管例なし)12例の検討。9例でウイルス培養施行し、全例で陽性。発症から9日目で培養陽性だった症例があった。それ以降については検討されていない。

 

2. Presymptomatic SARS-CoV-2 Infections and Transmission in a Skilled Nursing Facility. N Engl J Med. 2020 Apr 24. doi: 10.1056/NEJMoa2008457.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2008457

典型的な症状のCOVID-19患者において、SARS-CoV-2は、発症6日前から発症9日目で培養陽性となりえる(サンプル数は少ない)。典型的な症状、非典型的な症状、発症前、無症状病原体保有者、すべてでウイルス培養陽性患者が指摘されている。

 

3. Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019. Nature. 2020 Apr 1. doi: 10.1038/s41586-020-2196-x.

https://www.nature.com/articles/s41586-020-2196-x

発症8日目以降のCOVID-19患者(軽症)で、ウイルス培養(検体:喀痰、鼻咽頭スワブ咽頭スワブ)は陽性にならなかった。

 

4. Contact Tracing Assessment of COVID-19 Transmission Dynamics in Taiwan and Risk at Different Exposure Periods Before and After Symptom Onset. JAMA Intern Med. 2020 May 1. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.2020.

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2765641

台湾からの必読文献。100名の患者からの感染伝播を調査した報告。感染性があったのは、発症4日前から発症5日後まで。感染率が高いのは、発症前曝露(pre-symptomatic transmission)、家庭内曝露、重症例。無症状感染者からの感染(asymptomatic transmission)はなかった。

 

5. Quantifying SARS-CoV-2 transmission suggests epidemic control with digital contact tracing. Science. 2020 May 8;368(6491). doi: 10.1126/science.abb6936.

https://science.sciencemag.org/content/368/6491/eabb6936

pre-symptomatic transmission 45%, symptomatic 40%, enviromental 10%, asymptomatic 5%. 感染伝播の危険性は、感染(発症ではない)から10-12日程度。

 

6. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med. 2020 Apr 15. doi: 10.1038/s41591-020-0869-5.

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0869-5

非重症COVID-19 94名の解析。感染性は、発症2.3日前から出現し、発症前後でpeakとなり、その後発症7日目までに急速に減少する。感染伝播の44%は発症前に起こる。

SARS-CoV-2抗原検査

SARS-CoV-2抗原検査について調べてみました

 

まとめ

SARS-CoV-2抗原検査のdataはまだ非常に少ない(まだ文献化されていない)

・検査材料は、鼻咽頭ぬぐい液で、検査時間は30分以内である

・ウイルス量が多ければ感度は高くなるが、PCR検査より感度が劣る

SARS-CoV以外との交差反応はなく、特異度は高いと思われる

・診断目的に使用(現時点では、症状がある患者のみを対象としている)

・結果が「陽性」の場合、確定診断として、最寄りの保健所に届け出る

 

1. SARS-CoV-2抗原検査:エスプライン® SARS-CoV-2(富士レビオ)

(1)基本事項

咽頭ぬぐい液中のSARS-CoV-2抗原の検出

・使用目的:SARS-CoV-2感染の診断補助

酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法

・判定時間:30分以内

(2)交差反応性

・インフルエンザウイルス(H1N1, H3N2, B)との反応なし

・下記のリコンビナント人コロナウイルス抗原との反応なし

 MERS-CoV, HCoV-299E, HCoV-OC43, HCoV-NL63, HCoV-HKU1

(3)使用目的

SARS-CoV-2感染の確定診断のため

・対象は、新型コロナウイルス感染症を疑う症状がある患者

・欠点:核酸増幅法と比較して検出に一定以上のウイルス量が必要である

以下の状況では、適切な検出性能を発揮できず、使用してはいけない

- 無症状者への使用

- 無症状者に対するスクリーニング検査目的

- 陰性確認(治療効果判定)

 

(4)結果の解釈

・陽性:確定診断

・陰性:除外診断には適さない(感度が不十分)なため、さらにPCR検査を行う

f:id:General-ID:20200514190626p:plain

 

(5)これまでのdata

1) 国内臨床検体を用いた相関性(文献化されていない)

・RT-PCRと比較(n=72):陰性一致率98%(44/45例)、陽性一致率37%(10/27例)

・換算RNAコピー数 100 copy/test以上の検体:陽性一致率83%(5/6例)

・換算RNAコピー数 30 copy/test以上の検体:陽性一致率50%(6/12例)

  ※換算RNAコピー数は、Ct値から換算した推定値(換算式などは記載なし)

2) 行政検査検体を用いた試験(文献化されていない)

・RT-PCRと比較(n=124):陽性一致率66.7%(16/24例)、陰性一致率100%(100/100例)

・換算RNAコピー数 1600 copy/test以上の検体:陽性一致率100%(12/12例)

・換算RNAコピー数 400 copy/test以上の検体:陽性一致率93%(14/15例)

・換算RNAコピー数 100 copy/test以上の検体:陽性一致率83%(15/18例)

 

3. 保険適用について

・2020年5月13日から保険適用

・600点

・COVID-19が疑われる患者に対しCOVID-19の診断を目的として行う

原則1回に限り算定(初回陰性で、他疾患の診断がつかない場合は、2回目も算定可)

 

4. 指定感染症の届け出基準(2020.5.13)

・迅速診断キットによる病原体の抗原の検出(検査材料:鼻咽頭ぬぐい液)が追加された

・抗原検査陽性で、診断確定として、最寄りの保健所に届け出る必要がある

 

5. 参考資料

1) SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン(2020.5.13)

2) エスプライン®SARS-CoV-2の添付文書(2020.5)

3) 医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準 新旧対照表(2020.5.13)

COVID-19の診断ガイドライン(IDSA 2020)

COVID-19の診断ガイドライン(IDSA 2020)

https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-diagnostics/

 

推奨1:COVID-19の臨床的疑いが低い場合であっても、COVID-19が発生している疑いのあるcommunityの症状のある患者に対して、SARS-CoV-2の核酸増幅検査を行うことを推奨する(strong recommendation, very low certainty of evidence)。

・症状のある患者=COVID-19に一致する最も一般的な症状のうち少なくとも1つ有する患者(咳、呼吸困難、発熱、悪寒、悪寒戦慄、筋肉痛、頭痛、咽頭痛、味覚・嗅覚低下)

・臨床評価のみでCOVID-19の診断を正確に行うことはできない

・外来での核酸増幅検査の結果は、48時間以内であることが望ましい

 

→COVID-19流行地域で、COVID-19を疑う症状が1つでもあれば、PCR施行

 

推奨2:COVID-19疑いの上気道感染症またはインフルエンザ様疾患の症状を持つ患者において、SARS-CoV-2 RNA検査を行うために、咽頭スワブまたは唾液のみを採取するより、鼻咽頭スワブ・中鼻甲介スワブ・鼻腔スワブを採取することを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・この推奨は、複数の検体を組み合わせて検査を行うことについては触れていない

 

→上気道感染症の症状のあるCOVID-19では、鼻咽頭スワブPCR検査のために提出

 

推奨3:COVID-19の疑いがある上気道感染症またはインフルエンザ様疾患の症状を持つ患者に対して、患者または医療従事者がSARS-CoV-2 RNA検査のために鼻腔または中鼻甲介スワブ検体を採取することを提案する(conditional recommendation, low certainty of evidence)。

・自己採取の研究の大部分は、医療従事者の立会いのもとで実施されている

・無症状の患者における自己採取に関するデータはない

 

→現在日本では行われていない(鼻咽頭ぬぐい液を医療従事者が採取する)

 

推奨4:COVID-19(下気道感染症=肺炎)が疑われる入院患者において、SARS-CoV-2 RNA検査のために下気道サンプルではなく上気道サンプル(鼻咽頭スワブなど)を最初に採取する戦略を提案する。最初の上気道サンプルの結果が陰性であり、疾患の疑いが依然として高い場合、別の上気道サンプルを採取するのではなく、下気道サンプル(例:喀痰、気管支肺胞洗浄液、気管吸引液)を採取することを提案する(conditional recommendations, very low certainty of evidence)。

・入院患者の核酸増幅検査の結果は、24時間以内であることが望ましい

 

→COVID-19(肺炎)診断のためのPCR検査の検体は、1回目は鼻咽頭スワブ、1回目陰性でまだCOVID-19の可能性が想定される場合は、下気道検体を提案している

 

推奨5:COIVD-19の可能性が臨床的に低いと判断される症状のある患者において、ウイルスRNA検査は1回行うこと、繰り返さないことを提案する(conditional recommendation, low certainty of evidence)。

・臨床的に可能性が低いかどうかは、その地域の疫学と臨床判断に基づいて判断する

 

→気道症状や発熱はあるが、COVID-19の疑いが低い患者のPCR検査は1回でよい

 

推奨6:COVID-19の臨床的疑いが中程度または高度にある症状のある患者において、初回検査が陰性の場合、1回だけ検査を行うのではなく、ウイルスRNA検査を繰り返すことを提案する(conditional recommendation, low certainty of evidence)。

・中等度または高度の臨床的疑いとは、入院settingの状況で適応され、COVID-19に一致する症状と徴候の重症度・数・タイミングに基づいて判断される

・2回目の検査(NAAT)は、初回検査から24-48時間後に行う

・2回目の検査の場合、別の検体、下気道感染症の症状・徴候がある患者の場合は、下気道検体を採取することを考慮すべきである

 

→COVID-19を疑う場合、初回PCRが陰性の場合、2回目を24-48時間後に行う

 

推奨7:COVID-19が疑われる症状のある患者において、迅速検査(検査時間1時間以下)と標準的なRNA検査、どちらに賛成・反対か、について推奨を出さない(knowledge gap)。

 

推奨8:COVID-19の患者に曝露がある、または、曝露疑いがある無症候性の患者に対して、SARS-CoV-2 RNA検査を行うことを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・既知の曝露=NAATでの確定診断されたCOVID-19患者と直接接触がある

・曝露の疑い=COVID-19のoutbreakが起こった集団環境(例:長期療養施設、矯正施設、クルーズ船、工場など)で働いている、または、居住していること

・この推奨は、曝露者が適切なPPEを着用していなかったことが前提となっている

・無症状の患者を検査するかどうかは、検査資源のavailabilityに依存する

 

→濃厚曝露者(疑いを含む、ただし適切にPPEを使用していなかった状況に限定)は、症状がなくてもPCRを行う

 

推奨9:COVID-19の有病率が低い地域(2%未満)に入院しているCOVID-19との接触がない無症候性の患者を対象としたSARS-CoV-2 RNA検査を行わないことを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・無症候性=COVID-19を示唆する症状・徴候がない

・この推奨は、免疫不全者、時間的制約のある大手術やエアロゾル発生処置を受ける患者には適用しない

 

→COVID-19が有病率2%未満の地域で、明らかな曝露歴がなければ、入院の際にPCR検査を行う必要はない(ただし、免疫不全者、大手術・エアロゾル発生手技を行う患者は除く)

 

推奨10:COVID-19の有病率が高い地域(有病率10%以上=ホットスポット)に入院しているCOVID-19との接触がない無症候性の患者を対象に、SARS-CoV-2 RNA検査を行うことを推奨する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・無症候性患者(有病率が2-9%の場合を含む)を検査するかどうかの決定は、検査資源のavailabilityに依存する。

 

→有病率が10%を超える地域では、COVID-19の症状と曝露歴がない患者が入院した場合、PCR検査を行うことを推奨する

 

推奨11:COVID-19患者への曝露にかかわらず、入院する免疫不全の無症候性患者を対象にSARS-CoV-2 RNA検査を行うことを推奨する(strong recommendation, very low certainty of evidence)。

・この推奨では、免疫抑制的処置(immunosuppressive procedures)を、細胞傷害性化学療法、固形臓器または幹細胞移植、長時間作用型生物学的製剤、細胞性免疫療法、または高用量コルチコステロイドと定義している。

 

無症状の免疫不全者が入院する場合、曝露歴がなくてもPCR検査を施行する

 

推奨12:COVID-19患者への曝露歴にかかわらず、免疫抑制療法の前に、無症状の患者を対象にSARS-CoV-2 RNA検査を行うことを推奨する(strong recommendation, very low certainty of evidence)。

・検査は、理想的には予定されている治療にできるだけ近づけて行うべきである(例:48~72時間以内)

 

免疫抑制療法前の無症状の患者に対して、曝露歴がなくてもPCR検査を行う

 

推奨13:時間的制約のある大手術を受けるCOVID-19患者への既知の曝露がない無症候性の患者にSARS-COV-2 RNA検査を行うことを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・time-sensitive surgery(時間的制約のある手術):3ヶ月以内に行う必要がある医学的に必要な手術と定義した

・検査は、理想的には、予定されている手術にできるだけ近づけて行うべきである(例:48~72時間以内)

予後不良の可能性があるため、SARS-CoV-2陽性の患者において、緊急手術以外の手術を延期することを検討すべきである

・これらの処置のエアロゾル発生する部分でのPPEの使用の判断は、PPEのavailabilityが限られている場合、検査結果に依存することがある(例:陰性の場合、N95を使用しない)。しかし、検査結果が偽陰性となるリスクがあるため、上気道と密接に接触・露出する人(例:麻酔担当者、耳鼻咽喉科手術)は注意を払う必要がある

・この推奨は、患者が長期にわたって複数の手術を受ける必要がある場合の再検査の必要性については対応していない

 

大手術前の無症状の患者に対して、曝露歴がなくてもPCR検査を行う

 

推奨14:PPEが使用可能な場合に、time-sensitiveエアロゾル発生手技(例:気管支鏡検査)を受けるCOVID-19患者への曝露歴が明らかでない無症候性の患者を対象に、SARS-CoV-2 RNA検査を行わないことを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・time-sensitive手技:3ヶ月以内に行う必要がある医学的に必要な手技と定義した

エアロゾル発生手技:気道吸引、喀痰誘発、胸骨圧迫、気管挿管、NIV、気管支鏡、用手換気

 

エアロゾル発生手技を受ける無症状の曝露歴のない患者に対して、PCR検査は行わない

 

推奨15:使用可能なPPEが限られており、検査が可能な場合、COVID-19への曝露が明らかでない無症候性の患者が、time-sensitiveエアロゾル発生手技(例:気管支鏡検査)を受ける場合にSARS-CoV-2 RNA検査を行うことを提案する(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。

・検査は、予定されている手技にできるだけ近い時期(例:48~72時間以内)に実施されるべきである

・PPEのavailabilityが限られているため、PPEについての決定は検査結果に依存する(PCR陰性なら、COVID-19はないものとして対応する)。しかし、検査結果が偽陰性となるリスクがあるため、患者の気道と密接に接触・曝露する場合は、注意が必要である

・この推奨は、患者が長期にわたって複数の処置を受ける必要がある場合の再検査の必要性には対応していない

 

→PPEが供給不足の場合、エアロゾル発生手技を受ける無症状の曝露歴のない患者に対して、PCR検査を行う(陰性の場合、N95は不要かもしれない)

 

重症COVID-19

Clinical course and outcomes of critically ill patients with SARS-CoV-2 pneumonia in Wuhan, China: a single-centered, retrospective, observational study. Lancet Respir Med. Published online February 21, 2020. doi:10.1016/S2213-2600(20)30079-5.

https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)30079-5/fulltext

 

【目的】

ICU入室を必要とする重篤SARS-CoV-2肺炎の臨床経過と予後を明らかにする。

 

【方法】

Design:単施設の後ろ向き観察研究。

Patients:集中治療室に入室したCOVID-19肺炎確定診断された患者を対象とした(2019.12.24から2020.1.26に入院)。条件:人工呼吸器が必要、または、FiO2 60%以上の酸素投与されているICU入室患者。

Data collection:患者背景、症状、バイタルサイン、検査データ、併発した感染症、治療、治療成績を収集した。

Outcome:Primary outcomeは、28日死亡、secondaryはARDS、人工呼吸器が必要な患者。データは、生存者と死亡者で比較した

 

【結果】

2020年1月26日までに710例のSARS-CoV-2肺炎が診断され、そのうち52名(7%)が本研究の対象となった。年齢中央値59.7歳、男性67%、基礎疾患(糖尿病、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患、脳血管疾患など)は40%で認められた。症状は、発熱98%。咳77%、呼吸困難63.5%、倦怠感35%、嘔吐4%。発症からICU入室までの期間の中央値9.5日。ほとんどの患者が臓器障害を呈しており、ARDS 67%、AKI 29%、心筋傷害 23%、気胸2%。院内感染症は13.5%で起こった。high-flow nasal cannula(HFNC)は63.5%、人工呼吸器は71%(非侵襲的56%、侵襲的42%)、体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)は11.5%(使用された6名中5名死亡)、血管収縮薬は35%で使用された。ステロイド全体の58%で使用された。

主要評価項目の28日死亡は、32名(61.5%)だった。ICU入室から死亡までの中央値は7日。死亡した患者は、生存者と比較して、以下の特徴をみとめた:高齢(64.6歳 vs 51.9歳)、慢性疾患の既往が多い(53% vs 20%)、ARDS発症率高い(81% vs 45%)、非侵襲的換気療法(noninvasive ventilation:NIV)も含めた人工呼吸器使用率が高い(94% vs 35%)、ICU入室時のSOFAとAPACHE IIが高い。

f:id:General-ID:20200312200811p:plain

 

【Limitation】

単施設研究。52例で規模が小さい。人工呼吸器設定は不明。

 

【結論】

ICUに入室が必要な重篤なCOVID-19の致命率は非常に高い。ICU入室後1-2週間で死亡することが多い。高齢、基礎疾患あり、ARDSの場合は、死亡のリスクが高い。

がん患者におけるCOVID-19

Cancer patients in SARS-CoV-2 infection: a nationwide analysis in China

Lancet Oncol. 2020 Feb 14. pii: S1470-2045(20)30096-6. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30096-6

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204520300966?via%3Dihub

 

悪性腫瘍の既往のある患者のCOVID-19の臨床的特徴を検討した観察研究。2020.1.31までに575病院で診断された2007例のCOVID-19を対象とした。417例はdataが不十分であったため、除外された。1590例のうち、18例(1%)が悪性腫瘍の既往があった。中国全体の悪性腫瘍罹患率(incidenceと記載、prevalence?)は0.29%であり、それより高い値であった。18名のうち、2名は治療状況不明、4名は過去1か月に化学療法または手術を受けていた。14名は、術後f/u中の患者であった。悪性腫瘍の既往のある患者は、悪性腫瘍の既往のない患者と比較して、高齢、頻呼吸、進行した肺陰影(CT画像)がみられた。

重症event(ICU入室、人工呼吸器使用、死亡)が、39% vs 8%で、悪性腫瘍あり群で有意に高かった。Activeな治療を受けていた患者は50%(2/4)、それ以外の悪性腫瘍の既往のある患者は、5/14=35.7%。臨床的に重症と判断された割合は、active治療群75%(3/4)、それ以外の悪性腫瘍患者群6/14=43%。また、発症から重症化するまでの期間は、悪性腫瘍患者で有意に短かった。

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著者の結論:悪性腫瘍の既往のある患者は、COVID-19が重症化のリスクが高く、重症化のスピードも速い可能性が高い。流行地域では、安定している悪性腫瘍であれば、待機的手術や術後化学療法の延期を検討したほうがよい。感染予防策を徹底する。より徹底したサーベイランスを行うべき。