気道検体のSARS-CoV-2 PCR検査:診断のために複数回必要な症例がある
江蘇省におけるCOVID-19 80例の臨床的特徴
https://doi.org/10.1093/cid/ciaa199
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa199/5766408?searchresult=1
・確定COVID-19患者を対象
・呼吸器検体(鼻腔・咽頭スワブ)からのreal-time RT-PCR、陰性の場合は連日採取(3日目まで)
・COVID-19:症状、画像、曝露歴、PCRで確定診断
【結果】
・80名、41名が女性、年齢中央値46.1歳
・3名重症、77名軽症から中等症
・18歳未満12.5%
・9名は3回目のPCRでようやく陽性となった(11%)
30名は2回目で陽性(37.5%)
1回目で陽性はたったの51%
※発症までの期間の記載はない
・症状:発熱79%。咳64%、呼吸困難37.5%、筋肉痛22.5%、下痢1.3%、吐き気1.3%、血痰0
・肝障害3.75%、CT 69%で異常(31%は正常CT 25人)
・入院期間平均8日
【考察】
・江蘇省の症例は、特に他の地域と差はないと思われる。
・気道検体のPCR検査は、3回目でようやく陽性になった患者が11%もいた。PCR検査の正確な感度は不明であるが、おそらく低い(理由は不明:ウイルス排泄が少ない or 検体採取方法の問題がある?)。発症からの日数は記載されていないので、発症日との関連はわからない。
・限界:後ろ向き、患者数少ない、3つの施設だけ。
シンガポールでのCOVID-19の疫学的・臨床的特徴
シンガポールでのCOVID-19の疫学的・臨床的特徴
Young BE, Ong SWX, Kalimuddin S, et al. Epidemiologic Features and Clinical Course of Patients Infected With SARS-CoV-2 in Singapore. JAMA. Published online March 3, 2020. doi: 10.1001/jama.2020.3204.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762688
・記述的ケースシリーズ
・シンガポールでPCRによって確定診断された最初のCOVID-19 18例
・real-time reverse transcriptase–polymerase chain reaction(RT-PCR) 毎日気道検体採取
・4つの病院、2020.1.23-2.3に診断した全症例、2020.2.25までf/uした
・18名、年齢中央値47歳、女性50%
・症状は、軽度の気道感染症が多かった、酸素投与は33%、50%でCXRずっと正常
・1名人工呼吸器使用、死亡例なし
・ウイルス排泄は、7日以上(83%)の患者がほとんど(最初の陽性からカウント)
・発症から最初の数日のVLが高く、その後減少した
・ウイルス排泄が24日以上持続する症例もあった
・PCR陰性になってから、再度陽性になった症例が複数例存在した
・便PCRは、50%で陽性(下痢と関係なし)、血液PCR 8%、尿PCR 0%。
一度陰性化した咽頭スワブのSARS-CoV-2 PCRが再度陽性化した報告
一度陰性化した咽頭スワブのSARS-CoV-2 PCRが再度陽性化した報告
JAMA. 2020 Feb 27
doi: 10.1001/jama.2020.2783
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762452
・4人のCOVID-19患者(医療者、1名は入院、3名は在宅療養)を対象
・男性2名、女性2名、30-36歳
・臨床症状の改善、画像の改善、2回のPCR陰性(1日以上の間隔):退院・検疫終了
・検体:咽頭ぬぐい液を使用
・改善まで12-32日
・RT-PCRを5-13日後に再検したところ陽性になった
・全員3回、その後の4-5日間で検査したが、すべて陽性だった
・別の製造業者のキットを使用しても陽性だった
・全員PCRが再度陽性になった時点で
- 無症状
- CT画像の悪化なし
- 呼吸器症状のある人との接触なし
・PCRが再度陽性になった4名の家族への感染は認めなかった
・研究のLimitation:小規模、軽症から中等症の患者のみである(重症では不明)
・結論:一定数の患者は、いったん陰性化してから、陽性化する(検査の偽陰性、再燃?)。臨床的意義は不明(infectivityがあるかどうかは不明)。
唾液からのSARS-CoV-2の検出
Clin Infect Dis. 2020 Feb 12.
doi: 10.1093/cid/ciaa149
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa149/5734265
【方法】
・患者自身が採取した唾液のウイルス量(RT-PCR)を測定
・COVID-19の確定診断は、鼻咽頭または喀痰のウイルス同定
・香港でCOVID-19の確定診断がついた12名を対象とした
【結果・考察】
・年齢中央値62.5歳、37-75歳、5名女性、7名男性
・入院後からの日数で検討
・11名の唾液でPCR陽性、そのうち1名は入院日に検査し、陽性だった
・3名(5名中)で、ウイルス培養陽性
→伝播のリスクのあるウイルスを含む可能性がある
※検体に、鼻咽頭や下気道からの分泌物が混ざっているので、唾液のみとは限らない
・非侵襲的、採取が容易→院内伝播が減る可能性がある
・入院から7日程度陽性
・唾液の利点
空気予防策が不要で、外来や病院外で採取できる
患者自身が採取できるので、時間がかからない
COVID-19患者の上気道検体のウイルス量
COVID-19患者の上気道検体のウイルス量
N Engl J Med. 2020 Feb 19. doi: 10.1056/NEJMc2001737
【方法】
・広東省珠海市のSARS-CoV-2に感染した18名(男性9名、女性9名)を対象とした
・ポリエステルフロックスワブを使用して、鼻腔または咽頭から検体を採取
・PT-PCR(reverse transcriptase–polymerase chain reaction assay)を施行
・上気道検体におけるウイルス量をモニタリングした
【結果】
・年齢中央値59歳(26-76歳)、1名は無症状(濃厚接触者)
・14名は武漢滞在歴あり、4名はsecondary cases
・14名中13名は肺炎像あり(CT)、3名はICU入室
・症状のなかった1名の患者は、接触後7, 10, 11日目でPCR陽性
・症状のある17名の患者で、症状出現からの日数とウイルス量の関係を検討した
・症状出現後の7日間程度のウイルス量が高値だった
・咽頭より鼻腔でウイルス量が高値だった
【考察】
・ウイルス核酸の排泄のパターンは、インフルエンザと似ていて、SARS-CoV(発症からウイルス排泄は見られるが、ピークは発症から10日目頃)とは異なっていた
・1名ではあるが、無症状の患者のウイルス量は、有症状の患者と同等であった→無症状やわずかな症状をもった患者からの伝播する可能性を示唆する
・あくまでPCRでのウイルス量の評価であり、培養可能なウイルス量との関連は不明
・重症例と軽症から中等症例で、ウイルス量の差は認められなかった
【結論】
・発症から2週間程度はウイルス排泄あり、発症から3-5日までのウイルス量が高値
★この結果をうけて、国立感染症研究所の新型コロナウイルス感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアルの、推奨する検体の採取部位が、咽頭ぬぐい液から鼻咽頭ぬぐい液に変更された(2020.2.21)。
臨床検体のSARS-CoV-2のウイルス量
Lancet Infect Dis. 2020 Feb 24.
doi: 10.1016/S1473-3099(20)30113-4
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30113-4/fulltext
・北京の2名の患者のdataの詳細
※SARSは10日程度であり、異なる結果
尿、便からは検出されなかった
・80名を対象
- 発症から7日以内はウイルス量高値だった
- 発症1日前(接触者で2名調べていた)の陽性が確認された
- 13例(17例で測定、53%で陽性)で便PCR陽性
ウイルス量は呼吸器検体より少ない
便を扱う時も感染対策に注意する必要がある
※ただし、感染伝播するかは現時点では不明である
症状のあるSARS-CoV-2感染者による大気・環境表面・PPEの汚染
Air, Surface Environmental, and Personal Protective Equipment Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) From a Symptomatic Patient
JAMA. Published online March 4, 2020. doi:10.1001/jama.2020.3227
doi:10.1001/jama.2020.3227
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762692
【方法】
3人のSARS-CoV-2患者が入室中の空気感染隔離室(1時間あたり12回の換気が可能、前室と浴室付き)の26箇所で、環境表面の培養を提出した。診察医の個人防護具(PPE)も収集。湿らせた滅菌スワブを使用して、検体を採取した。また、病室と前室と病室外の空気も収集した。real-time reverse transcriptase–polymerase chain reaction (RT-PCR)を施行。1人の患者では、定期的な清掃の前に検体を採取し、2人の患者では、清掃の後に検体を採取した。高頻度接触面は1日2回、床は1日1回、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用して清掃した。
【結果】
・患者A:発症4日目、10日目に採取。患者の症状あり(肺炎あり、咳あり)、清掃後に採取。すべての検体でPCR陰性。
・患者B:発症8日目(症状あり:肺炎あり、咳あり)と11日目(症状なし)、定期的な清掃後に採取し、すべての検体でPCR陰性。
・患者C:発症5日目に検体採取。軽症患者(肺炎像なし)で、症状は咳のみ。清掃前の部屋で検体採取。部屋の13/15(87%)箇所とトイレの3/5(60%)箇所でPCR陽性となった。前室と部屋の外の通路で採取した検体はPCR陰性。
・ウイルスが検出された場所:病室内では、テーブル、ベッド柵、ロッカー、椅子、照明のスイッチ、聴診器、洗面台(外側・内側)、床、窓、ドア、換気扇、シンクの上のPPE置き場。トイレでは、ドアノブ、便器の表面、洗面台の内側。
・ガウン・マスクの表面はPCR陰性だったが、靴表面は1検体でPCR陽性となった。空気中のPCRは陰性だった。
【結論】
軽度の上気道病変を伴う1名の患者で、広範囲の環境汚染(特に、高頻度接触面)が認められた。清掃後に採取した検体のPCRは陰性であることから、現在の清掃方法で十分対応できている可能性が高い。この報告で、飛沫や排泄物による環境汚染が示された。環境表面に付着したウイルスに接触することによって、感染が伝播する可能性ある。そのため、環境清掃と手指衛生の厳格な遵守が重要である。
【限界】
ウイルス培養は行っていないため、viabilityは評価できない。そのため、環境面に存在するウイルスは証明できたが、そのウイルスに感染性があるかどうかは、この研究からは断定できない。サンプルサイズが小さい。