General-IDのブログ

神戸で感染症内科医をやっています。日々勉強したことを共有しています。基本的に、感染症に関連した内容です。所属施設の公式見解ではありませんので、その点はご了承ください。

症状のあるSARS-CoV-2感染者による大気・環境表面・PPEの汚染

Air, Surface Environmental, and Personal Protective Equipment Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) From a Symptomatic Patient

 

JAMA. Published online March 4, 2020. doi:10.1001/jama.2020.3227

doi:10.1001/jama.2020.3227

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762692

 

【方法】

3人のSARS-CoV-2患者が入室中の空気感染隔離室(1時間あたり12回の換気が可能、前室と浴室付き)の26箇所で、環境表面の培養を提出した。診察医の個人防護具(PPE)も収集。湿らせた滅菌スワブを使用して、検体を採取した。また、病室と前室と病室外の空気も収集した。real-time reverse transcriptase–polymerase chain reaction (RT-PCR)を施行。1人の患者では、定期的な清掃の前に検体を採取し、2人の患者では、清掃の後に検体を採取した。高頻度接触面は1日2回、床は1日1回、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用して清掃した。

 

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【結果】

・鼻咽頭または喀痰中のPCRは3患者とも陽性。

・患者A:発症4日目、10日目に採取。患者の症状あり(肺炎あり、咳あり)、清掃後に採取。すべての検体でPCR陰性。

・患者B:発症8日目(症状あり:肺炎あり、咳あり)と11日目(症状なし)、定期的な清掃後に採取し、すべての検体でPCR陰性。

・患者C:発症5日目に検体採取。軽症患者(肺炎像なし)で、症状は咳のみ。清掃前の部屋で検体採取。部屋の13/15(87%)箇所とトイレの3/5(60%)箇所でPCR陽性となった。前室と部屋の外の通路で採取した検体はPCR陰性。

・ウイルスが検出された場所:病室内では、テーブル、ベッド柵、ロッカー、椅子、照明のスイッチ、聴診器、洗面台(外側・内側)、床、窓、ドア、換気扇、シンクの上のPPE置き場。トイレでは、ドアノブ、便器の表面、洗面台の内側。

・ガウン・マスクの表面はPCR陰性だったが、靴表面は1検体でPCR陽性となった。空気中のPCRは陰性だった。

 

【結論】

軽度の上気道病変を伴う1名の患者で、広範囲の環境汚染(特に、高頻度接触面)が認められた。清掃後に採取した検体のPCRは陰性であることから、現在の清掃方法で十分対応できている可能性が高い。この報告で、飛沫や排泄物による環境汚染が示された。環境表面に付着したウイルスに接触することによって、感染が伝播する可能性ある。そのため、環境清掃と手指衛生の厳格な遵守が重要である。

 

【限界】

ウイルス培養は行っていないため、viabilityは評価できない。そのため、環境面に存在するウイルスは証明できたが、そのウイルスに感染性があるかどうかは、この研究からは断定できない。サンプルサイズが小さい。